パンダがあると笑顔になれる! パンダリーノ2016レポート

皆さんはフィアット・パンダというとどんな印象をお持ちでしょうか? もしかするとあまりピンとこないという方もいらっしゃるかもしれません。少しクルマに興味のある方は、名前くらいは聞いたことがあるでしょうか。

イタリア生まれの実用車。シトロエン・2CVのようなクルマをフィアットでも。
そんな発案から、イタリアを代表する工業デザイナー・ジウジアーロがデザイン。機能的でありながら飽きがこないデザインは、イタリアの国民車。完全に普段のアシグルマであり、決して自動車趣味を楽しむために生まれてきたわけでもなく、自動車の楽しさを追求するために生まれてきたわけはないパンダ。
このクルマを愛する人たちが集うイベントが「パンダリーノ」です。5月29日(日)、静岡県浜松市の渚園キャンプ場で今年も開催されたので、お邪魔してきました。その様子をご紹介しようと思います。

受付を済ますと今回のプログラムと一緒に付箋が渡される。いいね! と思ったクルマのウィンドウに貼っていくのだ。リアル版「いいねボタン」。毎回少しずつ新しい企画を取り入れているのだという

渚園はもともと浜名湖に面したオートキャンプができる施設。芝生の上に並べてのんびり過ごせるイベントを。そんな思いで始まったイベントも、今回で9回目の開催となります。回を追うごとに会は大きくなり、今回は287台のものクルマが集合。パンダを愛する人、パンダが大好きな人が多数集まりました。

パンダリーノだけに、パンダグッズの専門店も。こういうイメージの広げ方も確かに日本人の得意とするところかもしれない
パンダのお饅頭。会場でほおばる人の姿を多数見かけた

地元はもとより関東関西、遠くは熊本から陸路で「聖地巡礼」と駆けつけた人も。どれだけパンダが人々の心を惹きつけているのがよくわかります。また、あんなに小さなボディなのに、パンダは長距離も苦ではないのです。

「パンダリーノなんで」とパンダも入っている動物柄リュックサックを背負ってきた女性。参加者が皆思い思いに楽しむ姿。こういうことが浸透していることこそ「自動車文化」なのではないだろうか
フリーマーケットで販売されていたパンダのがま口。表裏で前後のデザインが忠実に再現されている

フィアットにはチンクエチェント、すなわち500というクルマがあります。街で見かける可愛らしいフォルムのイタリア車をご存知の方もいるかもしれません。
初代500誕生は1936年。ルパン3世に出てきた有名な500は2代目になります。車名の500は排気量を示し、丸みを帯びたボディが特徴。当時はイタリア国民のアシとして愛されていました。その愛くるしさをオマージュし、フィアットの歴史的アイコンという意味で現代に甦ったのが、今も販売されているフィアット・500になります。

現行500で参加されているこちらの方。パンダリーノはもうすっかりご常連のご様子。継続して、ファンができること。浸透することはイベントとしても大切だ
初代パンダのかなり初期のモデル45もチラホラ散見された。すっきりとしたフォルムは古さを感じさせない

ではかつての500が担っていた庶民のアシとなるクルマはどれだろうと考えると、現在3代目となるパンダなのではないでしょうか。
イベントの中でモータージャーナリスト嶋田智之さんがトークショーでも話されていたのですが、イタリア人がクルマに求めるエッセンスが凝縮された、しっかりと使えるクルマであることは当然。その上で楽しく乗るために、必要な要素が盛り込まれています。

「もともと趣味のためではないこうしたクルマを思い思い自分のセンスで、自分の生活に合わせて楽しんで使っていくことができる術を持っているのは日本人とイタリア人」と語る嶋田さん。現在の輸入元であるFCA伊藤さんとのトークショーは1時間以上にも及んだ。取材の足が止まり、つい最後まで聴きいってしまったことは言うまでもない

「心にパンダを持つ人たち」が集うミーティングでは、特に何をするという決まりはありません。到着するや否や、クルマの背後にテントを張る人、フリーマーケットをする人、家族とパンダを見て回る人。みなさん、自由気ままに過ごしているのです。
パンダに乗っているなら、初夏の週末にちょっと浜名湖までドライブしてみたくなるでしょ? ではみんなで集まりませんか? そんな「出かける口実」がイベントの趣旨の大きい部分を占めていると思うのです。

現行モデルはシリーズの中では最大のサイズを誇る。腰高で見晴らしがいいのに、なぜか素晴らしいハンドリング。懐の深いエンジンは少し踏み込んであげると、なかなか勇ましくスポーティ。クルマ好きの普段のアシから、自動車エントリー層まで多くのファンの心をつかんで離さない

パンダリーノの中でも、イベントらしい企画といえば「玉入れ」でしょうか。カゴは使わず、真ん中に置かれたパンダのルーフをパタパタと開き、チームごとに色の違う球を入れていきます。こういう単純なルールのゲームこそ盛り上がります。

パンダのルーフを開ければたちまち玉入れのカゴに早変わり。子どもは夢中、大人も童心に帰って。パンダを囲むとはこういうことなのだろう
優勝チームの参加者にはオリジナルマグネットが贈呈された

最後の記念撮影は撮影の脚立代わりにパンダが登場。参加者の輪の中にももちろんパンダ。イベントの中心にも、運営スタッフの右腕にもなる。この記念撮影の光景を見ているだけでも、パンダの懐の深さを実感した次第です。

撮影の脚立代わりにも活躍するパンダ。パンダ好きの参加者と一緒に映るのもパンダ

イベントの運営の方も今回で9回目とあって、誘導など手馴れたもの。来年は5月28日開催予定。次回は10回目ということで、実行委員の方は今からアイデアをいろいろ練られている様子。ぜひパンダが好きな人。パンダを買おうとしている人。イタリア車やコンパクトカーが好きな方もぜひ出かけてみましょう。

こちらの皆さんは静岡大学の研究室の方で、商品の魅力について研究しているのだとか。スペックが良ければ売れるのか? 精度が高ければ優秀な商品なのか? それ以外のモノの魅力について研究するために、イタリアの量産車パンダを愛する人たちへ、直接アンケートを実施。確かにクルマの可能性の重要なヒントが隠れているのかもしれない
「浜松でイベントをするのに準備撤収をしていると運営スタッフがお土産を買えないので来てくれませんか?」と誘ったら快く出店してくれたという、うなぎパイで有名な春華堂の移動販売車うなくん号。うなぎパイやお菓子の他かき氷も販売しており大人気だった
イタリアの雑貨ブランドアレッシとのコラボレーション限定車。指名買いのファンもいるようだ
東京・江戸川区のコンパクトカー専門店「ピッコロカーズ」はパンダも得意とする車種の一台だ。やはり最近あちこちのイベントで目撃情報の多いクルマ好きな「元国王」も登場。場を盛り上げていた
駐車か展示か。コーディネートも腕の見せ所
日本未導入の500L。日本では現在パンダ、500とそのオープントップモデル500C、さらに少し大きい500Xがありますが、このクルマの前で「あればこれにした」という声も度々聞かれた。今後の導入計画に期待した

(中込健太郎+ノオト)

 

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road