レコジャケに多い車種は○○! 「カージャケ本」ができたワケ
クルマがフィーチャーされた古今東西のレコードジャケットを網羅した書籍「カージャケ/CAR JACKET GRAPHIC」が5月に発売されました。国産車、アメ車、欧州車など、多種多様なクルマが登場する約500枚のジャケットが掲載されています。
誌面では音楽作品のデータに加えて、ジャケットに登場するクルマのデータも収録。音楽界の中でもクルマ好きとして有名な、クレイジーケンバンド・横山剣さんのインタビューも掲載されています。音楽もクルマも大好きという方にはピッタリの本と言えるでしょう。
そこで今回は、発売元である(株)三栄書房 第3制作局・局長の高橋浩司さんに、発売の経緯や苦労話などお伺いしてきました。
――まず、本書を出そうと思ったきっかけは?
自動車関係を得意とする三栄書房の私と、友人の音楽系ライター(竹部吉晃さん)が久々に会ったことが始まりでした。竹部は音楽ジャケットの印刷で有名な金羊社の編集プロダクション「金羊社クリエイティブ」に在籍しています。お互いの得意ジャンルを生かして一緒に仕事ができるとすればコレだろうということで、話が盛り上がりました。彼は以前からこの企画の構想を持っていたようです。
――掲載するジャケットはどのようにセレクトされたのでしょうか?
まずレコードジャケットのアーカイブから、クルマの映るものをピックアップしてリスト化しました。とにかく膨大な数でしたね。その中から話題性のあるもの、有名なもの、思い入れのあるもの、クルマが特徴的なものなど、いくつかの観点で絞り込みました。最終的には500点近い数になりましたが、もう1冊作れるくらいの量はまだありますね。
――ジャケットの分類は「年代別」になっていますね。
「音楽ジャンル別」「車種別」という選択肢もあったのですが、最終的には「年代別」にしました。読者それぞれが音楽にハマった青春時代があり、クルマにも時代の個性がありますよね。40代の場合は1970年代のスーパーカーブームがあり、バブル景気の頃に免許を取得して乗ったクルマの思い出があるでしょう。50代ではビートルズに強い影響を受けたり、ハコスカに憧れたりと、世代によって少しずつ音楽とクルマに対する思いが違うはず。時代ごとにまとまっていた方が、思い入れの強いページにたどり着きやすいのでは? と思いました。
――各クルマの解説も掲載されていますが、車種の特定に苦労されたのでは?
クルマ全体が映っていれば簡単ですが、ごく一部しか映っていないジャケットは苦労しましたね。結局特定できず、断念したものも一部あります。(紙面ではunknownと掲載) 架空のクルマをイラストやCGにしたもの、少量生産のレーシングカーで特定しきれないものなど、我々の知識でも解きほぐせないものがいくつか残ってしまいました。
――「コレはこの車種だな」と特定するポイントはどのあたりでしょうか?
クルマにはそれぞれ特徴的なデザインが表れるポイントがあります。一番わかりやすいのはヘッドランプやフロントグリルの形状ですが、そこが映っていない場合には、前後フェンダーやピラーの角度・ラインが参考になります。
――「このクルマが多かった」など、傾向はありましたか?
キャデラック、ジャガー・Eタイプが際立って多かったですね。キャデラックはアメ車・高級車の代表格で、ラグジュアリーな雰囲気や60〜70年代らしさ、ハリウッド映画を連想させるイメージを持つからではないでしょうか。ジャガーは欧州(イギリス)の高級車ブランドではありますが、中でもEタイプはデザインに特徴があり、よく映えますね。
――クルマと音楽の解説文はどのように?
このプロジェクトに関わった人間で、クルマと音楽の両方に精通しているものはいませんでした。なので、音楽については竹部を中心として、レコードジャケットのアーカイバーや音楽ライターさんで手分けして書きました。クルマ関係の解説は、年代やジャンル(欧州車・アメ車・国産)を問わず豊富な知識をお持ちの自動車ライターさんにお願いしました。
- 巻頭インタビューは横山剣さん。クレイジーケンバンドのジャケットに使われたクルマについても詳しく解説されています。イイネ!
――その他、苦労した点などがあればお聞かせください。
まず社内で出版の企画書を通すことが最初の苦労でした。自動車ファン向けなのか、音楽ファン向けなのか、という問いかけは必ずついて回ります。両方だと言ってもなかなか理解してもらえませんからね。次にコスト面。最終的に250ページ以上のオールカラーとしましたが、2,222円(税別)というなかなかのお値段になってしまいました。でも、その価値は必ずあると思っています。
――最後に。高橋さんが個人的に一番好きなジャケはどれですか?
私はクルマ側の人間で、音楽は人並みの知識しかないのですが(苦笑)。むかし持っていたアルバムが、高中正義の「T-Wave」。中学生の頃にすごく流行りました。あと、横浜銀蝿の「ツッパリ High School Rock’n Roll」には、当時人気だったトヨタ・セリカが使われていたんですね。懐かしいです。
「家で聴くよりクルマの中で音楽を聴いたほうが、テンションがあがる」なんて人も多いのではないでしょうか。まさに“クルマと音楽の密接な関係”ですね。
本書の帯には「クルマがあるとジャケットの画が締まるんだよね」という横山剣さんの言葉が。中身を見れば、その意味が十分すぎるほど理解できるでしょう。カーマニアはぜひ、「unknown」とされた車種の特定にチャレンジしてみてください。
(村中貴士+ノオト)
[ガズー編集部]
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