2016パリで見えた仏/独/日のそれぞれの狙い

2016年9月29日、フランスのパリで「モンディアル・ド・ロトモビル」が開幕しました。いわゆるパリ・モーターショーです。当然、主役は地元のフランスのメーカーであり、準主役は隣国であるドイツと言っていいでしょう。

フランス勢はヒット濃厚の新型モデルとスーパーカールックのコンセプト

地元であるフランス・メーカーが今回のショーに用意したのは、魅力的な新型モデルとスーパーカーのようなコンセプトカーでした。

プジョーは3008と5008という2台のSUVの新型モデルをデビューさせます。3008は市場の中心的なCセグメントのSUV。そして5008は3列シート7人乗りのSUV。SUVは世界的なトレンドということもあり、この2台のヒットの可能性は相当に高そうです。また、シトロエンからは、あっと驚くクロスオーバールックになった新型C3が登場。あわせてWRC(世界ラリー選手権)バージョンのC3 WRCも発表されました。兄貴分のクロスオーバーであるC4カクタスと同テイストのデザインをまとった新型C3も、ヒットの可能性が濃厚。日本へのデリバリーも期待したい1台です。

そしてシトロエンからは、もう1台、コンセプトカーの「CXPERIENCE(シーエックスペリエンス)」が発表されました。低くワイドなボディの中に、シトロエンらしい優雅で快適な室内空間が用意されています。ルノーの出品で目玉となったのもスーパーなコンセプトカーでした。EVレーシングカーであるフォーミュラーEの技術をフィードバックした「TREZOR(トレゾア)」という流麗な電気自動車です。

プジョーからは3列シートのSUVである5008がデビュー
シトロエンの新型C3はクロスオーバールックになり、同時にWRCカーも発表された
シトロエンのコンセプトカー「CXPERIENCE(シーエックスペリエンス)」
シトロエンのコンセプトカー「CXPERIENCE(シーエックスペリエンス)」
ルノーのコンセプトカー「TREZOR(トレゾア)」

ドイツメーカーはEVコンセプトを揃って出品!

ドイツのメルセデスベンツとフォルクスワーゲンは、それぞれEVのコンセプト・モデルを発表しました。メルセデスベンツがジェネレーションEQでフォルクスワーゲンがI.D.です。驚いたのは、どちらも量産化を本気で考えているところ。メルセデスベンツは、EQというサブブランドをスタートさせ、そのトップバッターがSUVであるジェネレーションEQとなるとか。また、フォルクスワーゲンのI.D.も量産化が予定されており、現在のゴルフ同等の価格で2020年ごろに発売したいと言います。

ちなみにBMWは、すでにiブランドを立ち上げ、i3という電気自動車をリリースしています。つまり、BMWに続いて、メルセデスベンツもフォルクスワーゲンもEVに参入するという宣言がなされたのです。

メルセデスベンツのコンセプトカー、ジェネレーションEQ
フォルクスワーゲンが発表したコンセプトカーのI.D.

日本ブランドはスポーツ色の強い出品に

これまで欧州でのモーターショーで日本ブランドは、ハイブリッドやEVなど、環境対応車を強くアピールしてきました。ところが、今年はスポーツ色の強い展示となっていました。

トヨタは、初日のプレスカンファレンスで豊田章男社長がWRC(世界ラリー選手権)への2017年からのカムバックをアピール。ヤリスWRCテストカーから登場した、元WRC世界チャンピオンであるトミ・マキネン氏に章男氏は「その赤は、トヨタの赤? それとも三菱の赤?」と声をかけて会場を沸かせました。

実際のトヨタのブースは、新型SUVのC-HRが展示の中心。クルマをチェックする人が引きも切らず、注目度の高さをうかがうことができました。

また、ホンダは、2017年にデリバリーを開始するシビック・タイプRを発表。量産モデルとしては、シビック・ハッチバックを欧州デビューさせています。そして日産からは、新型マイクラ(日本名・マーチ)がデビューします。欧州市場のニーズにあわせてサイズアップされ、先進運転支援システムなど装備が充実しています。

ヤリスWRCテストカーの前で豊田章男社長とトミ・マキネン氏
ホンダのシビック・タイプR
日産のマイクラ

フランス・ブランドは、新型モデルと夢のあるコンセプトカー。ドイツは近い将来を見すえたEV。そして日本は、スポーツと新型モデル。今年のパリは、三者三様の狙いを見ることができました。

(鈴木ケンイチ+ノオト)

[ガズー編集部]