パリでクルマを運転したいなら……パリの交通事情

初めてパリを訪れた人であれば、ぎっしりと路上に駐車されたクルマの列に驚くことだろう。パリは日本と違って、数百年前の建造物も残る石造りの街。日本のようにスクラップ&ビルドのあいまの空き地を駐車場に使うなんてことがないため、駐車場といえば地下から建物の中、もしくは路上という3択となる。そして古い街ゆえに日本のような大規模な地下設備は少なく、地下と建物の中の駐車場の数は限られる。その結果、押し出されたクルマは路上にぎっしりと並ぶことになったのだ。

駐車方法は、いわゆる縦列駐車だ。ただし、日本と違うのは、本当にすきまなくぎっしりと駐めること。当然、出入りは難しくなるが、そこはバンパーがあるから大丈夫! というのがパリの流儀のようだ。つまり、バンパーはこすったり押したときに、車体本体を痛めないためのもの。つまり、“バンパーは消耗品だから、気にせずにゴリゴリ”とばかりに駐める。パリでは傷だらけのバンパーを修理もせずに走るクルマを驚くほどたくさん見ることができるのだ。

しかも、それが安いクルマだけでなく、いわゆる高級車でも同じ扱い。きっとパリジャンにしてみれば、“クルマは道具だから傷つくのが当然”くらいの考えがあるのだろう。根本的に、クルマに対する考えが、日本とは違うのだ。

高級車であろうともぎゅうぎゅうに縦列駐車するのがパリ流
バンパーが傷つかないようにとプラスチックを使っている車両を発見
縦列駐車の傷跡そのままというクルマが数多い

そんなパリの街に日本人がレンタカーで乗り入れると、駐車場で苦労する。レンタカーでもバンパーを傷つけられれば修理料金を請求される。傷をつけた相手を捕まえて、修理料金を請求するというのも非常な労力がかかる。

駐車場の看板の「P」は日本と同じ

ということで、一番、簡単で確実な方法はパリ市内の移動は、公共交通を使うのがおすすめだ。メトロと路上を走るトラムは、パリ市内を縦横に走るので、路線図さえ手に入れれば便利に使える。しかも料金はゾーン制。パリの観光スポットが集中する23区内は、ほとんどが同じゾーン1。大人1枚1.9ユーロで、乗り換え1回ありで目的地まで行くことができる。切符は乗る前に購入して、メトロは駅の入口の自動改札で使用し、トラムは乗った車内で刻印機に差し込むだけ。1回やってしまえば、誰もが簡単にできるだろう。

ゾーン制となっていて市内中心部のメトロはほとんど1.9ユーロ

また、市中にはレンタルサイクル「Velib(ヴェリブ)」の無人貸し出し&返却ステーションがいたるところにある。旅行者の場合、ICチップ付きのクレジットカードを使って登録・利用・支払いが可能だ。ステーションにある無人の機械相手に英語で操作しなくてはならないということと、保証金として150ユーロを預ける必要がある。この2つのハードルをクリアできれば、パリ市内を自転車で巡ることもできるのだ。

レンタルサイクル「Velib(ヴェリブ)」

どうしてもクルマを使い方という人には、カーシェアという手もある。パリ市内では、2011年からオートリブ(https://www.autolib.eu/en/)というカーシェア・サービスが始まっている。車両は、ピリンファリーナがデザインしたコンパクトな電気自動車。英語での登録と市内の運転という両方をクリアできる自信があれば、レンタカー以外の選択肢のひとつとして考えてもいいだろう。

カーシェアのオートリブ。EVでピニンファリーナのデザイン

タクシーは屋根の上に日本同様のランプを掲げ、メーターによって料金が定まる。もちろん無許可の白タクも存在するので、注意が必要だ。チップは基本的に必要ないけれど、感謝を表したいときは5~10%を目安に渡すといいだろう。タクシー車両はコンパクトセダン。韓国のキアなどもあるが、トヨタのプリウスが意外とたくさん走っているのだ。

シャンゼリゼ大通りを走るプリウスのタクシー

パリの街はそれなりに大きい。公共交通やシェアリングを上手に利用すれば、観光はさらに楽しいものになるに違いない。

(鈴木ケンイチ+ノオト)

[ガズー編集部]