バイクがもう少しでクルマに? ベトナム交通事情

2016年10月末にベトナムのホーチミンで開催された「ベトナム・インターナショナル・モーターショー2016(VIMS)」を取材してきました。ショーの内容もさることながら、ホーチミンで見た交通事情をレポートしたいと思います。

ホーチミンを走るクルマたち

ホーチミン市にはまだ地下鉄はありません。そのため人々が仕事場や学校に行くためには、バスかオートバイ、タクシー、自家用車を使うしかありません。しかしベトナム人の年間の平均的な収入は日本円にして20万円ほど。年々5%以上の経済成長を続けていますが、それでも普通の人にとって自家用車は高嶺の華で、オートバイが身近な移動手段です。そのため、道を走るクルマは、バスとタクシーが過半数で、それ以外は高級車が中心。タクシーは、トヨタのミニバンであるイノーバと、コンパクトセダンのビオス、コンパクトカーのヒュンダイ・i20。高級車は、メルセデスベンツやアウディ、BMWといったドイツブランドです。それと、日本車のフォーチュナーやカムリが高級車然として走​っています。また、トヨタやホンダ、マツダはノックダウンでの現地生産車が存在します。アセアン地域では珍しく、マツダ車が目立っていました。

タクシーは大多数がトヨタ車で、セダンのビオスとミニバンのイノーバであった
アセアン地域ではカムリはトヨタの高級車という扱いになる

ただし、そうしたクルマの数は、それほど多くなく、圧倒的多数のオートバイが、クルマの間の空間を埋めています。朝や夕方の通勤時間のラッシュは、それは見物です。大きなクルマと一緒に、小さな無数のオートバイが流れるように走ります。まるで水族館の大水槽の中を、魚の大群が泳いでいるかのよう。オートバイが中心のためか、渋滞はそれほどひどくありません。そして、郊外の高速道路はオートバイがいないこともあり、ガラガラでした。

オートバイ事情

オートバイはホンダとヤマハがほとんどで、他のスズキやベスパ、韓国や中国ブランドはごく少数しか走っていません。また、オートバイの大多数は、ホンダのカブと同じ遠心クラッチ方式。最近は、スクーターも増えてきているとか。ギヤのないスクーターは、アセアン地域では「ATバイク」とも呼ばれています。クラッチとギヤのあるスポーツタイプのオートバイは、さらに少数派。あれほど数多くのオートバイが走っているのに、スポーツタイプのオートバイは、ほとんど見ることはありません。

街中の歩道にある有料のオートバイ駐車場。管理人がいてオートバイをきれいに並べる
排気ガス対策だろう、マスクをしてオートバイに乗る人を数多く見かけた

ちなみにベトナムでオートバイは、日本でいう自家用車。小さな子供のいる家族では3人乗りも普通のようです。運転席の前に子供を乗せる、いわゆるチャイルドシートを見ることもできました! また、ベトナムでは何度も強烈なスコールを体験しましたが、その滝のような雨の中、カッパを着て走る人の多いことにも驚かされます。なんとガッツのある国民性ではないでしょうか。

シートの前に置かれた小さなシートは、子供が座るためのものだ
南国特有のスコールの中でも、カッパを着込んでオートバイで走り回る

モータリゼーション到来は目前?

現在のところはオートバイが庶民の足となっているベトナム。ただし、年収30万円を越えると、モータリゼーションが到来すると言われていますから、ベトナムの方がマイカーを持つようになるのは、それほど遠くないことでしょう。そうなったときに人口8000万人を越えるベトナムでの自動車マーケットを勝ち得るのは、どのブランドとなるのか? あとわずかに始まるシェア争いというバトルに注目したいと思います。

ガソリンはリッター当たり80円程度。所得が低いために燃費性能が重視される
タクシーなどのリヤバンパーについているガードは、バイクの追突を想定したもの
郊外の主要道路にはバイク使用車向けにハンモックを備えたカフェが数多くある​

(鈴木ケンイチ+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road