ラリーファン必見!「三菱オートギャラリー」で名マシンを間近に観る

2017年5月22日(月)にリニューアルオープンした三菱オートギャラリー。その見所は何と言っても、1台1台をじっくり観ることができるその展示方法だ。特にラリーファンには懐かしいクルマ、憧れのクルマを間近に見ることができる垂涎の展示が行われている。

あえて絞り込んだ車種、スペースをふんだんに使った展示でこだわりを見せる

まずは、三菱オートギャラリーのリニューアルについて紹介しておこう。同施設は、三菱自動車技術センター内に1989年にオープンしたもの。もともとオフィスとして使っていた建物を改装し、同社の歴史的車種を保存・展示することを目的として、ユーザーやファンの協力を得て多くの車両が集められた。

案内してくれた三菱自動車工業株式会社 開発マネージメント本部の酒井誠氏によれば、リニューアル前には50台以上もの車両が所狭しと並べられていたという。車両と車両の間隔も狭く、離れて撮影することも難しかったそうだ。複数台がまとめて展示されている場所では、車両に近づいてインテリアを観ることもできない。

「とにかくできるだけ多くの車両を見てもらうことだけを考えた結果、1台1台をしっかり見てもらえない状況になっていました」(酒井氏)

リニューアルでは大きく方向転換し、展示車両を8台にまで絞り込んだ。そのうえで戦後から1960年台までを振り返る「三菱自動車の始まり」、1970年代の名車を展示する「時代を駆け抜けた車たち」、そして長年続けたラリーを中心としたレース参戦の歴史で魅せる「極限に挑戦した車たち」の3つのゾーンに分割。展示を楽しんだ後は、クルマ好き同士が会話を楽しめるよう、カフェスペースも設けた。

サービスドリンクも用意されるカフェスペースで自動車談義に花を咲かせる時間も楽しい
サービスドリンクも用意されるカフェスペースで自動車談義に花を咲かせる時間も楽しい

三菱自動車の黎明期を振り返る「三菱の自動車の始まり」については別記事で紹介しているのでそちらを参照してもらうことにして、ここでは「時代を駆け抜けた車たち」、「極限に挑戦した車たち」の2つのゾーンの見所を紹介したい。

象徴的な2台から、三菱自動車の隆盛期を感じる

「時代を駆け抜けた車たち」ゾーンに足を踏み入れた筆者を出迎えたのは、当時の最高級車「デボネア デラックス」だ。かつては5ナンバー車と3ナンバー車の維持費に大きな開きがあった。そこで三菱が目指したのが、5ナンバー枠で最高の品質を提供するクルマ。それがデボネアだ。1964年の誕生から22年間も生産された超長寿命車でもある。

三菱の高級車ラインを22年間も支え続けた名車デボネア
三菱の高級車ラインを22年間も支え続けた名車デボネア
決して大きいボディではないが、アメリカ車を彷彿とさせるデザインがサイズ以上の存在感を示す
決して大きいボディではないが、アメリカ車を彷彿とさせるデザインがサイズ以上の存在感を示す

デボネアのリアビューに名残を惜しみながら歩みを進めると、今度は一転してスポーティな車体が姿を現す。「ギャランGTO MR」だ。三菱初のDOHCエンジンを搭載して、1970年にデビューしたスポーツクーペ。国産車としては初めて50インチカーブガラスをサイドウィンドウに採用し、コックピットタイプの計器盤を備えるなど、内外装に航空機のイメージを取り入れたデザインが斬新だった。

周囲に十分スペースを空けて展示されているので、さまざまな角度から展示車両を眺めて楽しめる
周囲に十分スペースを空けて展示されているので、さまざまな角度から展示車両を眺めて楽しめる

このエリアに展示されているのは、デボネアとこのGTOの2台のみ。空間を贅沢に使い、スペースに余裕を持たせてあるので、好きな角度から車両をじっくり眺めることができる。展示車両に手を触れるのはもちろんご法度だが、囲いが低く車両の近くまで寄れるので、インテリアもしっかりチェックできるのがうれしい。

多数のメーターが並ぶコックピットは精悍なイメージを与える(取材のため許可を得てドアを開け撮影)
多数のメーターが並ぶコックピットは精悍なイメージを与える(取材のため許可を得てドアを開け撮影)

実車の展示台数こそ少ないものの、壁際のショーケースには同年代の車種がスケールモデルでずらりと並んでおり、こちらも来訪者の目を楽しませてくれる。

ショーケースには1960年代から1980年代までの懐かしい車種がスケールモデルでずらりと並んでいる
ショーケースには1960年代から1980年代までの懐かしい車種がスケールモデルでずらりと並んでいる

数々の功績を挙げたレース、ラリーへの挑戦の軌跡

「極限に挑戦した車たち」のゾーンに足を踏み入れると、そこには三菱が続けてきたチャレンジの歴史が詰まっていた。こちらも展示車種は2台のみ。最初に目に入るのは、1983年の第5回パリ・ダカールラリー市販車無改造部門に初参戦した「パジェロ」だ。初参戦ながら、市販車無改造部門の1位、2位を獲得した上、総合順位でも11位、14位に入り、世界の注目を集めた。このときのドライバーだったアンドリュー・コーワンは、のちにラリーアート・ヨーロッパの責任者となり、監督としてWRCの三菱チームを率いることになる。

のちに監督してWRCで三菱に数々の勝利をもたらしたアンドリュー・コーワンがドライバーだった
のちに監督してWRCで三菱に数々の勝利をもたらしたアンドリュー・コーワンがドライバーだった

もう1台の展示車両は、第7回サザンクロスラリーを制した「コルトギャラン16LGS」。こちらもアンドリュー・コーワンがドライブし、国際ラリーで三菱に初めての総合優勝をもたらした。その後の数々のラリーでの活躍の第一歩を記した、貴重なクルマだ。

1600ccで160psと、1972年当時としてはかなりパワフルなマシンに仕上げられたコルトギャラン16LGS
1600ccで160psと、1972年当時としてはかなりパワフルなマシンに仕上げられたコルトギャラン16LGS

壁際のショーケースに多くのスケールモデルが並べられているのは、このエリアも同じ。ラリーカーのスケールモデルと並んで、普段は間近で目にすることのないトロフィーの数々も飾られている。さらに、壁面に備え付けられたモニターでは1970年代から2000年代までのラリーの映像が流されており、これを見ているだけでもついつい時間を過ごしてしまう。

これらのトロフィーは、まさに三菱が挑戦し続け、獲得してきた栄光の証といえるだろう
これらのトロフィーは、まさに三菱が挑戦し続け、獲得してきた栄光の証といえるだろう

ギャラリー散策の最後は自動車談義をしながら、コーヒーブレイクを

順路通りに進むと最後に、カフェスペースにたどり着く。ドリンクのサービスも用意されているので、ゆったりコーヒーを楽しみながら、今見てきたクルマの思い出を語り合うのもいいだろう。なおこのカフェスペースにもスケールモデルの展示があり、これらを見ながら楽しむのも一興だ。

展示車両を少なく抑えてリニューアルした三菱オートギャラリーだが、今回紹介した展示はあくまでも2017年7月現在のもの。バックヤードには数十台のストックが出番を待っており、展示車両はある程度の期間ごとに入れ替えられる予定になっている。また現在では電話でのみ受け付けている来館予約のオンライン化を含め、展示車両の案内などを気軽に見てもらえるWebサイトの開設も検討中とのこと。三菱ファン、ラリーファンは、三菱オートギャラリーからの今後の情報発信に期待しよう。

(重森大+ノオト)

[ガズー編集部]