20年にわたるハイブリッドマシン挑戦の記録!MEGA WEB「ハイブリッド・モータースポーツ展」

東京・お台場にあるトヨタ自動車の“クルマのテーマパーク”「MEGA WEB(メガウェブ)」で、2018年1月14日(日)までトヨタ・ハイブリッド車誕生20周年を記念した特別企画「ハイブリッド・モータースポーツ展」が開かれています。

現在ハイブリッドは、F1を始めとしたモータースポーツのトップカテゴリーで、「速さの技術」として取り入れられ、もはや主流となっています。トヨタはそれ以前から、速さとドライビングの愉しさを追求できる技術としてハイブリッドをレーシングカーに搭載。1995年の「TOYOTA RAV4 EV」から、現在WEC(世界耐久選手権)で活躍している「TS050 HYBRID」まで、さまざまなハイブリッド・レーシングカーを製作してきました。

「ハイブリッド・モータースポーツ展」は、その軌跡を間近で見て感じることができる内容となっています。今回は、その展示車の数々をご紹介しましょう。

TOYOTA PRIUS apr GT

日本最高峰のモータースポーツカテゴリー「SUPER GT」のGT300クラスで、2015年に実際に走行していたトヨタ・プリウスのハイブリッド・レーシングカーです。2012年に流れた「あのプリウスがSUPER GTに挑戦」というニュースは、なかなか衝撃的でした。スーパーフォーミュラ搭載実績を持つ3.4L V8エンジンにハイブリッドシステムを合わせたマシンです。

プリウス本来のボディデザインが素晴らしい空力性能を発揮。展示されている31号車は2015年シーズンを戦い、2勝を飾っています。市販モデルとその目的は異なりますが、基本的なハイブリッドシステムは同じ。トヨタのハイブリッドシステムの完成度をアピールした1台です。

TOYOTA TS040 HYBRID

トヨタは、2012年にル・マン24時間耐久レースを含めたWECに復帰参戦。このTS040 HYBRIDは、復帰から3シーズン目となる2014年に投入されたプロトタイプレーシングカーです。特徴として、前後に充放電が可能な「スーパーキャパシタシステム」を搭載。市販ハイブリッド車と同じくアクセルオフ、もしくはブレーキを踏むことで運動エネルギーを回収(回生)します。そのエネルギーを一気に放出すると、520馬力のV8エンジンにさらに最大で480馬力がプラスされ、システム合計出力はなんと1000馬力! WEC2014シーズンは未勝利ながらもドライバーズ、マニュファクチャラーの両タイトルを獲得しています。

ここからは、この2台が誕生するまでに作られた、EV(電気自動車)やハイブリッドのレーシングカーたちを紹介していきます。SUPER GTやWECでハイブリッドマシンが活躍するまでには、さまざまな試行錯誤がありました。

TOYOTA RAV4 EV

トヨタの小型SUV「RAV4」がデビューした1年後の1995年、世界初の電気自動車(EV)だけのラリー「第1回スカンジナビア・エレクトリック・カー・レース」に出場するため、ニッケル水素電池と20kWのモーターでEVコンバートされた車両です。結果として見事総合優勝を飾り、このレースで得たデータが、のちのプリウスなどのハイブリッド車の開発に活かされました。

RAV4 EVはその後、1996年から2003年まで生産された実績も持っています。1998年に「第10回ラリー・モンテカルロ・エレクトリック・ビークル」、2015年にアメリカのヒルクライムレース「パイクスピーク・ヒルクライム」にも挑戦。

LEXUS GS450h

ル・マン24時間レースに再挑戦する前に、トヨタは日本で唯一の24時間耐久レース「十勝24時間レース」に二度、ハイブリッド車で挑戦しています。マシンは、2006年に同社の高級車ブランド「レクサス」のミドルサルーン「GS」のハイブリッドモデル「GS450h」をベースしたこのレーシングカーで、市販モデルへのフィードバックと同時に、モータースポーツでの可能性を調査するための参戦でした。

GS450hレース車両は「スーパー耐久シリーズ」のST-1特認車両としてエントリー。レースに必要な安全装備、足回り・駆動系を変更した以外は市販モデルのままですが、長時間走行するにあたってバッテリーの発熱を抑えるため、トランクにドライアイスを入れる工夫がされていました。

2006年の「十勝24時間レース」では、SUPER GTでお馴染み「SARD(サード)」の指揮のもとで、予選5位スタート。平中克幸/アンドレ・クート/嵯峨宏紀の3選手は大きなトラブルに遭遇することなく、24時間で865周回し、総合17位(ST-1クラス4位)で完走しました。

DENSO TOYOTA SUPRA HV-R

2007年の「十勝24時間レース」では、前年に得たデータをもとに、のちのTS030以降のプロトタイプレーシングカーの雛形となるハイブリッドシステムをSUPER GT GT500クラスで戦ったスープラGTに搭載して参戦。リアに高出力モーター、フロントにインホイールモーターを搭載しているのが特徴です。コーナーでは、進入時に回生ブレーキによりエネルギーを回収しながら、ブレーキの負担を軽減。立ち上がりではエネルギーを蓄えたキャパシタの放電でエンジンより、レスポンスのいい加速と燃費向上を実現し、レースでは圧倒的なスピードで総合優勝を飾りました。

TOYOTA MIRAI 全日本ラリー選手権・新城ラリー仕様

トヨタは、2014年に世界初の量産燃料電池自動車「MIRAI」を発売しました。同年、「全日本ラリー選手権」の新城ラリーに「00カー(競技区間の安全確認するクルマ)」として、ラリー装備を施して参加。ドライバーは、“モリゾウ”選手。静かかつ鋭い加速でステージを走り抜けました。翌年には自動車評論家の国沢光宏さんが、自身の愛車であるMIRAIをラリー仕様に改造して「ラリー・ドイチェランド」にVIPカーとして参加し、注目を集めました。

展示車両の近くには燃料電池システムを搭載したMIRAIのラジコンが展示されていた
展示車両の近くには燃料電池システムを搭載したMIRAIのラジコンが展示されていた

現在各国では、従来のガソリン自動車の在り方について盛んに議論がされ、欧州の一部地域ではガソリン自動車から“卒業”していく動きも出ています。そんな中でのモータースポーツの将来はこのブースを見れば決して悲観するものではないということがわかるでしょう。

(文・写真:クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]