岡山市内から1時間のドライブで雲海の世界へ【備中松山城】

「岡山に、雲海に浮かぶお城が見られる場所がある」。そう聞いて、さっそく自分の目で確かめに行くことにした。その「場所」とは、岡山県高梁市にある知る人ぞ知る名城 「備中松山城」。

「日本三大山城」でもあるこのお城は、雲海が見られることで有名になり、国内外から多くの城好きが訪れているという。なお、江戸時代からの天守閣が現存するお城は全国で12あるが、そのうち山城は「備中松山城」だけ。「日本のマチュピチュ」と呼ばれる「竹田城(兵庫県朝来市)」も多くの人が訪れているが、天守閣は存在しない。

「賀陽IC」から約1時間。「備中松山城展望台」へ

12月17日(日)、雲海に浮かぶ天守閣を見られることを期待して、朝7時に岡山自動車道「賀陽IC」のパーキングエリアに集合した。当日の天気は晴れ、気温は1度。三菱自動車が運営する「雲海出現NAVI」では、雲海の出現率が25%と少し不安な数字だったが、薄っすら雪化粧をした道をゆっくりとクルマを走らせた。約1時間のドライブでたどり着いたのは、高梁市にある備中松山城展望台だ。

一般社団法人高梁市観光協会の南賀隆さんによると「11月は18回、雲海が見ることができ、その確率は60%。12月に入ると出現率が落ちるが行ってみないとわからない。12月は凍結の可能性もあるので、ノーマルタイヤで来るなら11月がベスト」と事前に聞いていた。見られるかどうかは運次第である。

雲海の発生は、前日に雨が降って水蒸気を蓄えている状況で、夜は気温が下がることが条件。太陽が上がってくるごとに大気が温められ、雲が発生するというメカニズムだ。しかし、雲が発生したとしても、風があると流されるので、風速3m以上の風があるとなくなってしまうという。

クルマを走らせると、雲海を見る前に思わぬ歓迎を受けることになった。道路上に30頭以上のニホンザルが現れたのだ。これは車外には出ない方がいいだろう。備中松山城のある臥牛山(がぎゅうざん)は、1956(昭和31)年に天然記念物臥牛山のニホンザル生息地として指定を受け、1991(平成3)年まで自然動物園があった。南さんによると「現在150頭ほど生息していて、朝は展望台近くに集まっていることもが多い」とのこと。

雲海に浮かぶ天守閣は見られたのか?

展望台の近くには県内・県外ナンバーのクルマやタクシーが並ぶ。いよいよ目的地に到着だ。備中松山城にかかった雲海と、その下に沈む高梁市中心部を待ち望んで展望台へ上がる。しかし……。

そこには白く染まった高梁市内と、くっきりと見える備中松山城が。やはり、雲海はそう簡単に遭遇できるものではないのだ。奈良県からやってきた男性は、朝6時から2時間も待ったという。後日、高梁市観光協会の南さんからこんな写真を送っていただいた。

写真:一般社団法人高梁市観光協会
写真:一般社団法人高梁市観光協会
写真:一般社団法人高梁市観光協会
写真:一般社団法人高梁市観光協会

この写真は、我々が訪れる2日前のものだそう。ちょっとしたタイミングや運が明暗を分ける。ちなみに、雲海を見られる可能性の高い11月には「場所取りが大変なくらいの人が訪れる」と南さんは言う。

雲海は見ることができなかったが、高梁の素晴らしい自然と澄み切った空気を味わうことができ、来年11月にもう一度ここへやってくることを心に決めて帰路に着いた。ノーマルタイヤで来れるのに冬を思う存分味わえる、くれぐれも12月ではなく11月に。

(取材・文・写真:松原龍之、写真:一般社団法人高梁市観光協会、編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]