クラウンが個人タクシーのドライバーに愛される理由とは?
個人タクシーの定番車種といえば、今も昔もクラウンですよね。以前は「道路運送車両の保安基準」により後部ドアの開口面積やシートサイズなどの規定があったため、個人タクシーにできる車種は限られていたのですが、実は2015年の改正で規制が緩和されてからは、タクシーにできる車種がグンと広がりました。アルファードなどのタクシーも増えているのも、そのためです。でも、クラウンが定番であることは今も変わりません。
では、なぜ個人タクシーのドライバーはクラウンを選ぶのでしょうか? その人気の秘訣を個人タクシー暦25年のベテランドライバーで、クラウンユーザーでもある斎藤孝春さんにお聞きしました。
クラウンはお客さんのウケがいい
- 斎藤孝春さんは、東京都個人タクシー協同組合(でんでん虫グループ)に加盟している個人タクシーの運転手
クラウンの人気が高い理由について斎藤さんは「全体的に安定しているからでしょうね。だから法人タクシーも個人タクシーも、クラウンが一番多い」と答えます。運転時の安定性、補修パーツの供給状況や価格、メンテナンスができる工場の数などを考えると、自然とクラウンが多くなるそうです。
また、「クラウンはお客さんのウケがいい、というのもありますね」とも語ります。これは斎藤さんの実体験によるもので、「例えば赤坂で並んでいて選ばれるのは、今だと一番はレクサス。その次にクラウン、マジェスタ、シーマ……という感じです。バブル時代はなんでも乗ってくれたけどね(笑)」とのことでした。
- 斎藤さんのクラウンは、ゼロ・クラウンのアスリート。後席には電動リクライニングもついていた
ほかにも、個人タクシーには定期的に利用してくれる常連のお客さんがおり、「その人たちの選ぶ基準はシートの心地がいいとか、そういう部分もあるんです」とのこと。斎藤さんのクラウンも、シートは本革で、リヤシートにも電動リクライニングがついているなど豪華な仕様でした。個人タクシー運転手にとって乗り心地のいいクルマ選びはかなり重要なようで、「クラウンからほかの車種に変えた直後に『乗り心地が悪い』といわれてお客が減った人もいる」そうです。
個人タクシーのクラウン人気はまだまだ続く?
大型セダンならば、メルセデス・ベンツやBMWなどのタクシーも目を引きますが、斎藤さんによると「輸入車を選ぶ運転手は、よほどこだわりがあるか頑固者のどちらか」とのこと。輸入車は国内の道路事情を第一に考えて作られていないので、お客さんに乗り心地の悪さを指摘されることもあるのだそう。さらに部品代が高いこともあり、「頑なに乗っている人は『あいつ変わってる』って言われますね(笑)」と、冗談まじりに話してくれました。
「最近はレクサスにする人もいるけど、やっぱり今でもクラウンが一番かな」と斎藤さん。2020年の東京五輪に向けて、観光客や車いす利用者も乗り降りしやすい「おもてなし」を意識した設計のトヨタ自動車の新型タクシー「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」も登場しましたが、まだまだ個人タクシー業界でのクラウン人気は続きそうです。
(取材・文・写真:斎藤雅道、編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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