輸入車の統計を発表しているJAIAの試乗会にはどんな人が参加しているの?

この時期よく話題に上がるJAIA(ジャイア)の試乗会。このJAIAって何かご存知ですか? Japan Automobile Importers Associationの略称で、正式名称は日本自動車輸入組合といいます。自動車の輸入が自由化された1965年(昭和40年)に、非営利法人として設立されました。いったいどんな業務を行っているのか、JAIAが行っている輸入車試乗会とはどんなものなのか? そして、参加する人はどんな人たちなのかについてリポートしてみたいと思います。

自動車輸入に関するあれこれを司るJAIAという機関

JAIAを構成しているのは、主に海外の自動車メーカーと直接、輸入契約を結んでいる輸入業者(インポーター)です。オフィシャルウェブサイトによると「輸入車市場の健全な発展のために、諸統計の作成、共同展示事業、技術情報の提供などの事業を行っている組合」とのこと。JAIAになってから53年経ちますが、前身の輸入自動車協会が設立されたのが1952年(昭和27年)と66年前なので、歴史はかなり長いようです。

さまざまな事業がありますが、その中でも私たちになじみがあるのは、自動車雑誌のデータのページに掲載されている輸入車統計データではないでしょうか。この統計情報を集計、提供しているのもJAIAです。

数字好きにはたまらない統計情報

雑誌などに提供しているだけでなく、オフィシャルサイト上にも、統計情報が掲載されています。その対象は、外国メーカーからの「純輸入車」、日本メーカーのいわゆる「逆輸入車」、正規インポーターではない専門業者が輸入したいわゆる「並行輸入車」も含まれているので、輸入車のすべてを網羅していると言えるでしょう。

ここはまさにデータの宝庫。輸入車の月別、メーカー別登録台数、1月からの累計、前年同月の速報値などが見られるだけでなく、都道府県別の数字も見られます。加えて検索、抽出もできるので、切り口も変えて見られる。興味のおもむくままに読み始めると止まらなくなります。数字が好きな人、トリビアをしゃべるのが好きな人、数字を見ながらあれこれ妄想に耽るのが好きな人など、いろいろな楽しみ方ができる宝の山です。関係業界の人ならプレゼン資料のバックデータとしても使えるでしょう。

16ブランド77台がずらりと並ぶ試乗会にはどんな人が?

さて、ここからは雑誌などで見かけるJAIA試乗会のお話です。

2018年2月6日(火)~8日(木)の3日間、神奈川県大磯町にある大磯プリンスホテル駐車場を拠点に今年もJAIA主催の輸入車試乗会が開催されました。集まった試乗車は16ブランド、77台。3日間のうち、2日間を雑誌やWebメディアの取材用の試乗と撮影のための媒体の日に。最終日が評論家の日と分けられていました。

まず事前に事務局から試乗車リストが届くので、乗りたいクルマを選んで提出します。参加を希望する評論家、試乗車のリストを睨みながら試乗枠を埋めていくのですが、各モデル一日最高10枠しかありません(評論家の日の場合)。EV・PHEVの場合は充電タイムも必要だし、そうでないクルマも給油や点検タイムが必要なので、枠はその分少なくなります。さらに人気車種には枠以上の評論家が希望するので枠が足りない状態に。これを事務局があれこれ調整し、決定します。

EVには必要な充電タイム
EVには必要な充電タイム

できるだけ多くの評論家が多くの試乗をできるようにということもあり、事前枠は最高5枠に制限されていました。ただ、当日に空きがあるクルマについては先着順で試乗車を増やすことができます。

自分の試乗枠を確認し、空き枠があれば当日申し込みで試乗車を増やす
自分の試乗枠を確認し、空き枠があれば当日申し込みで試乗車を増やす

試乗会なので当然自分で運転するのですが、ロールスロイスが珍しいことをしていました。それは“運転しない試乗”。リアシートに座り、運転士の運転で街を走るというもの。

同社アジア・パシフィック広報マネージャーのミッチェル・ローズマリー氏によると「広報車も用意しますので、もちろんご自身で運転する機会はありますが、今回はロールスロイスならではの世界観を後席から体験していただきたいと思いました。ご自身で運転されるより、リアシートでリラックスすることでより深く理解していただけるのではないかと思ったのです」とのことでした。

なるほど確かに。ちょっとだけ座らせてもらいましたが、さすがとしか言いようがありません。

ショーファーの運転でリアシートからロールスロイスの世界観を体感。これが日常の暮らしはどんなものなのか? どんな人たちがこの景色を見ているのか?
ショーファーの運転でリアシートからロールスロイスの世界観を体感。これが日常の暮らしはどんなものなのか? どんな人たちがこの景色を見ているのか?

ジャーナリストが試乗会に来てあのクルマを選んだ理由は?

みなさん試乗にお忙しかったのですが、うまくタイミングが合った3人の方に、選んだ車種と理由について訊いてみました。

お一人目は、カーライフエッセイストの吉田由美さんです。

「広報車(*注)を借りることはもちろん可能ですが、高額のスーパースポーツモデルや超高級車を借りると駐車場の心配や目を離している時間が心配なので、長くお借りしたいのは山々ですが、できるだけ早めに返却するようにしています。最新のスーパースポーツモデルや乗りそびれたクルマに乗れるので、JAIA試乗会は助かります」

そう話す彼女は、アストンマーティン DB11 V8、アウディR8スパイダーV10 5.2 FSI quattro、ジープ コンパス・ロンジチュード、ポルシェ パナメーラ 4E ハイブリッド、ロールスロイス ファントム エクステンデッド・ホイールベースを事前選択していました。“なんちゃってセレブ”がキャッチフレーズの吉田由美さんぽい選択ですね。
(*注:各メーカーが用意しているジャーナリスト試乗用のクルマのこと)

由美さんを助手席に乗せてドライブするか? 由美さんの運転でドライブに連れて行ってもらうのもいいか? 実に悩ましい
由美さんを助手席に乗せてドライブするか? 由美さんの運転でドライブに連れて行ってもらうのもいいか? 実に悩ましい

お二人目は、“スーパーカー超王”こと山﨑元裕さんです。選択車種はアルファロメオ ジュリア・クアドリフォリオ、ロータス エリーゼ スプリント220、プジョー 308GT、フォルクスワーゲン アルテオン R-Line 4MOTION Advanceの4台。

「まず話題性のあるモデルから選びます。今回だとアルテオン。やはりそれは乗っとかないと。それ以外は気になるモデルやまだ乗っていないモデルに乗ります」

インタビュー中にはいろいろ方面に話が及んだのですが、実に興味深いことをおっしゃっていました。今回のメインテーマからは少し外れてしまいますが、感銘を受けたのでさわりだけ紹介させてください。

「いわゆるスーパーカーの限定モデル、あるいは伝説的なモデルの復活版には背景に『そこに物語はあるのか?』が必要だと思います。それがないと、ただの唐突な限定車になったり、単なるレトロフィットになったりしてしまいます。メーカーにはきっと長期にわたって『物語』を考えている人がいるはずです」

話題性のあるクルマは複数台用意されている
話題性のあるクルマは複数台用意されている

最後は翻訳家の相原俊樹さん。相原さんは自動車評論家ではありませんが、ゲンロク誌などで海外記事の翻訳をしていらっしゃいます。「さまざまなクルマに実際に試乗することも、いい翻訳のためには必要だと思います」ということで試乗会に参加されたそうです。そういうことなので、選択車種は無差別級という感じ。

BMW M760Li、アルファロメオ ジュリア・スーパー、レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSE DYNAMIC DIESEL、ポルシェ 718 ボクスターS、ルノー トゥインゴGTの5台。これ以外に当日枠でアウディやボルボ車に試乗されていました。

「最も感銘を受けたクルマはアウディRS 5クーペですね。スタイルもいいし、あらゆる意味でとんでもないクルマ。実に魅力的です」と話す相原さん
「最も感銘を受けたクルマはアウディRS 5クーペですね。スタイルもいいし、あらゆる意味でとんでもないクルマ。実に魅力的です」と話す相原さん
評論家のみなさんはこんな感じで取材している。ちょっと失礼して横から撮影させてもらった
評論家のみなさんはこんな感じで取材している。ちょっと失礼して横から撮影させてもらった

おおたなかチョイスと一口インプレッション

せっかく試乗する機会をいただいたので、おおたなかの感想もお届けします。

試乗時間は1台45分なのでそんなに時間はありません。限られた時間でどこを走って戻れば堪能できるのかを考えるのですが、今回は、日本のモータージャーナリスト界の偉大なる先達である、クルマ好きのみなさんならきっとご存じのあの方が毎回使ったという道を走り、小田原厚木道路の一区間を走ってみました。これで試乗時間はほぼ終わりです。

少し時間が残ったクルマについては、パートナーと大磯にバケーションに来るならどのクルマが似合うかな? という妄想のためにホテルのエントランスにクルマを置いてみました。

レンジローバーヴェラールR-DYNAMIC HSE (2L DIESEL)。高級SUVの先駆けとなったRANGE ROVERの風格はさすが。リゾートホテルにもっとも似合うかな。クルマとしては4気筒エンジンのフィーリングだけはちょっと……
レンジローバーヴェラールR-DYNAMIC HSE (2L DIESEL)。高級SUVの先駆けとなったRANGE ROVERの風格はさすが。リゾートホテルにもっとも似合うかな。クルマとしては4気筒エンジンのフィーリングだけはちょっと……
キャデラック エスカレード プラチナム。とんでもなくデカいけど意外に運転しやすいし走りも軽やか。ただ、バックミラー越しの威圧感はかなりのものなので車間距離には注意が必要だ
キャデラック エスカレード プラチナム。とんでもなくデカいけど意外に運転しやすいし走りも軽やか。ただ、バックミラー越しの威圧感はかなりのものなので車間距離には注意が必要だ
並んで置くと雰囲気はもう護衛車
並んで置くと雰囲気はもう護衛車

キャデラック エスカレード
http://www.cadillacjapan.com/escalade/model-overview.html

せっかくの湘南なので、季節には少々早いもののシボレー カマロ コンバーチブルにも。風の巻き込みも適度で気持ちいい。友だちを誘ってどこかへ遊びに出かけたくなるクルマ
せっかくの湘南なので、季節には少々早いもののシボレー カマロ コンバーチブルにも。風の巻き込みも適度で気持ちいい。友だちを誘ってどこかへ遊びに出かけたくなるクルマ
中央のアルファロメオ ジュリア・ヴェローチェ。アルファ久々のFR(後輪駆動)
中央のアルファロメオ ジュリア・ヴェローチェ。アルファ久々のFR(後輪駆動)

アルファロメオ ジュリア・ヴェローチェ
http://www.alfaromeo-jp.com/models/giulia/veloce/

ABBAを聴きながら(かなり古い?)ドライブすると気分はヨーテボリ(ボルボの本拠地がある街。別名イェーテボリ)。こういう控え目なクルマでさらっと遊びにくるのもいい
ABBAを聴きながら(かなり古い?)ドライブすると気分はヨーテボリ(ボルボの本拠地がある街。別名イェーテボリ)。こういう控え目なクルマでさらっと遊びにくるのもいい
実は最も興味がなかったけど意外にも感銘を受けたのがアウディ Q7 3.0 TFSI quattro。上質なインテリア、いい音のオーディオ、そして運転好きには「やはりこれが重要だな」と思わせる6気筒エンジンのフィーリング。すてきな妻を横に乗せていつまでも走っていたくなる
実は最も興味がなかったけど意外にも感銘を受けたのがアウディ Q7 3.0 TFSI quattro。上質なインテリア、いい音のオーディオ、そして運転好きには「やはりこれが重要だな」と思わせる6気筒エンジンのフィーリング。すてきな妻を横に乗せていつまでも走っていたくなる
BMW M760Li。圧倒的パワーに絶句。ゆるゆると本線に合流しアクセルペダルをちょっと踏んだだけでドカンと背中を押されたと思ったら、本当に一瞬で法定速度を超えそうになる
BMW M760Li。圧倒的パワーに絶句。ゆるゆると本線に合流しアクセルペダルをちょっと踏んだだけでドカンと背中を押されたと思ったら、本当に一瞬で法定速度を超えそうになる
ダウンサイジングまっしぐらの世の中に背を向ける? Cピラーには燦然と輝くV12のエンブレム
ダウンサイジングまっしぐらの世の中に背を向ける? Cピラーには燦然と輝くV12のエンブレム
BMW家族なこの2台
BMW家族なこの2台

BMW 7シリーズ
https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/7-series/sedan/2015/at-a-glance.html

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]