アクセル踏み間違いによる急発進を制御! ペダルの見張り番とは

特に高齢者に多いアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いの急発進による事故。とっさの判断ミスが大きな事故へとつながる誤操作を防ぐために開発されたのが「ペダルの見張り番」です。開発、販売をしている株式会社オートバックスセブン カーエレクトロニクス商品部バイヤー野島基範さん、高橋拓也さんに、開発のいきさつや装置の仕組みなどを伺いました。

現場スタッフの疑問が開発のきっかけに

――ペダルの見張り番はどのように急発進を防ぐのですか?

アクセル開度を電子的に制御することによって、クルマが急発進するのを防ぎます。ひと昔前のクルマは、アクセルスロットルはワイヤーで引っ張って開け閉めして出力のコントロールしていました。17、8年前くらいから、それを電子的に制御するクルマが出てきました。電気信号でアクセルの出力を調節するんですね。「ペダルの見張り番」はアクセルを急激にバンと踏み込んだ動作を検知して、アクセルの出力を電気的にカット、クルマが急発進しないようにします。自動ブレーキなどとは違いますので、間違えて強く踏み込んだ時に、クルマが止まるわけではなく、オートマチック車のクリープ状態のようにゆるやかに進む感じになります。

――この発想はどこからきたのですか?

「スロットルコントローラーを応用して、踏み間違いの事故を防ぐためのものがつくれないだろうか?」という現場スタッフのひと言がきっかけでした。

スロットルコントローラーという製品は、アクセル開度を電子的に制御し、アクセルレスポンスをコントロールするパーツです。発進時のアクセルレスポンスを引き上げ、スムーズな発進や加速を実現することができます。この電子制御で「発進を抑える」ことに特化すれば、アクセルの踏み間違いでの急発進を抑制することができるのでは? という発想から、「ペダルの見張り番」の開発が始まりました。

アクセルを踏み込む感覚は、人それぞれ……制御レベルの決定に四苦八苦

――スロットルコントローラーの出力をコントロールする機能を抽出したわけですね?

はい。その仕組みを使うというところまでは、スムーズに進んだのですが、アクセルを踏み込む強さ……踏み込む量の基準を3段階に設定しているのですが、その段階をどの程度踏んだところに合わせるのかで苦労しました。踏み込む量の感じ方は人それぞれの感覚に頼るところがありますので。

また、事故の起きやすい状況として、コンビニの駐車場などでゆっくり動き出したところでアクセルを踏み込んで……というパターンも多いので、徐行時にも作動する設定になっています。その徐行のスピードをどうするかでも悩みましたね。時速10㎞がいいのか、8㎞がいいのか……。製作をお願いしたメーカーさんに試作を繰り返してもらい、私たちが実際に乗ってみて、何度もグルグルグルグル走って試しました(笑)。このように多くの協議を重ねてようやく完成にこぎつけたのです。

人に寄り添う製品へ

――やはり高齢の方を中心に普及しているのですか?

やはり65歳以上の方のご購入が7割以上を占めていますね。ただ、ご自身が決めてのご購入よりも、息子さん娘さんなどご家族の方が勧めて、ご一緒に買いに来るというのが多いです。

――自分のクルマが対応車種かどうかの判断はどうしたらよいですか?

現在は、国産車の170~180車種が適合していますが、クルマの車種と年式がわかる必要があるので、販売店に車検証をお持ちいただくと間違いないです。
お買い上げということになりましたら、本体、取り付け用のハーネス、取り付け工賃、そして、ドライバーの方との使用方法の説明を兼ねた試乗を一式でワンプライスとしています。お持ち帰りで売りっぱなしということは決してしません。

このパッケージで渡すことはない。ドライバー本人と調整するところまで行ってから引き渡す
このパッケージで渡すことはない。ドライバー本人と調整するところまで行ってから引き渡す

――ひとりひとりに合わせた設定を行うということですね。

先ほども申し上げましたが、ペダルを踏み込む感覚は乗る人によって千差万別なので、取り付け後、お客さまに実際にペダルを踏んで試していただきます。そして、お客さまの踏み方によって3段階のどのレベルに合わせたらいいかを調整し、どのような状態で動くかを体感し確認していただくことを徹底しています。

――取り付けた方からの反響はいかがですか?

お客さまから、「ペダルの見張り番が作動しないようなんだが、どうなっているのか?」といったお問い合わせを受けることがあります。そういう方の場合、普段から慎重にペダルを踏み込んでいるから作動しないということなのです。「ぜひ、そのまま安全運転をしていってください」とお答えしています。
この製品が発売されたのは2016年の12月でした。以来、5000台近くの販売実績があります。実は、こちらの商品はお取り付けのお客さまに1年間の交通事故傷害保険を付帯させていただいております。しかし、こちらの保険の請求はこれまで1件もありません。

ハイブリッドな展開でより交通安全を意識した提案を

――今後はどういったことを目指していきたいですか?

もちろん、ペダルの見張り番とドライブレコーダーとを組み合わせてより安全性を高めていくなど、技術的なアイディアも多く出ています。ただ、近年自動車メーカーさんから、自動ブレーキなどのアシスト機能が高性能になったクルマがどんどん出てきています。そういう技術的な部分は本当によいものだと思うので、おまかせしていきたい。これから、私たちが目指すのは、クルマのオーナーになったあと、より安全なカーライフを送っていくためのサポートだと思っているんですね。

例えば、バニティーミラーという、お母さんが後部座席のチャイルドシートに乗ったお子さんの様子を見るための小さな鏡があります。これを少し外側に向けて取り付けることで車線変更の時により見通しがきいて安全に走ることができる。このように今ある製品を他の製品や考え方と組み合わせてより安全運転支援ができる提案をしていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

技術的に発達した製品をお客さまに提供していくのは当然として、そのことをさらに越えて、お客さまひとりひとりにぴったりと寄り添った丁寧な調整をすることや、たくさんの製品を扱う会社だからこそ思いつくのであろう組み合わせの提案という考え方が印象的でした。今後のより安全なカーライフへの取り組みに期待したいと思います。

(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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