ガソリンスタンドとどう違う？ LPGを補給する「オートガススタンド」

法人のタクシーや宅配便のトラックなどには、ガソリンや軽油ではなく、LPG（液化石油ガス）を燃料とするLPG自動車が広く使われていますよね。では、こうしたLPG自動車は、どこでどのようにして燃料を補給しているのでしょうか？　東京都内でタクシーを走らせている「山手交通株式会社」に聞いてみました。

山手交通さんによると、LPG自動車は「オートガススタンドで燃料補給を行う」とのこと。「オートガス」とは自動車を走らせるLPGの一種で、オートガススタンドは「LPガススタンド」と表記するスタンドもあるそう。

ガソリンスタンドは、東京都内におよそ1000箇所あるのに対し、オートスタンドは50数箇所と、ユーザー数が限られるだけに少数。それでもタクシーの多い都心部は、比較的多いのだそうです。山手交通さんでは、板橋区内で「山手交通オートガススタンド」という名のオートガススタンドを運営しています。

「弊社では、お客様の約9割がタクシー会社さん、ほかの1割が運送屋や営業車です。個人のお客様はほとんどいません。平日は24時間営業で、営業を終えたタクシーの多い、深夜・早朝の時間帯が賑わいます」（山手交通担当者）

燃料を補給する目的は一緒だから、基本的な仕組みはガソリンスタンドと同じ。充填用のホースも天井に吊るされるタイプで、これもガソリンスタンドでよく見る形です。

「地下にガスを貯蔵するタンクがあって、そのガスをパイプからひいて専用のノズルでクルマに充填しています。貯蔵する燃料に合わせて貯蔵タンクや充填ノズルは異なりますが、ガソリンスタンドと大きな違いはないでしょう」（山手交通担当者）

販売単位もガソリンや軽油と同じで「リットル」単位。ですが、その単価はガソリンよりも安く、2018年7月現在のオートガス1リットルあたりの値段は「70円台後半から80円ぐらい」とのこと。

ガソリンスタンドとの違いは大きく2つあり、ひとつは営業に当たって必要な資格。

「ガソリンでは、危険物取扱者免状の『丙種』や『乙4種』などが必要ですが、オートガス保安責任者になるには高圧ガス製造保安責任者試験の『丙種化学(液化石油) )責任者免状』が、保安の統括や実務的な業務を担当するために必要な資格となります」（山手交通担当者）

もうひとつ、ガソリンスタンドと大きく異なる点があります。それは、セルフ式のスタンドが存在しないこと。その理由を聞いてみると「充填用のノズル脱着の甘さや、ノズルや抜き忘れ、充填バルブの閉め忘れなどの事故を防ぐためではないか」と山手交通の担当者は言います。

実際に作業を見せてもらいましたが、ガソリン車よりも燃料を充填するまでの作業が多い印象を受けました。ガソリン車の給油口にあたる場所には「ニップル」と呼ばれる充填用の突起があり、ここにノズルを接続するのですが、接続しただけではまだ充填はされず、LPGタンクの充填バルブを手動で開けなければなりません。

実は、法律上セルフ式オートガススタンドが禁止されているわけではありません。このように充填作業が複雑で、利用者のほとんどが商用車や営業車であるため、特にセルフ化を求める声がないのかもしれません。

オートガススタンドの歴史は意外と古く、国内では1962年に初めて作られたそう。たしかに、法人タクシーのほとんどがLPG車であることを考えると、普段気にしていないだけで、昔からごく当たり前にあるものだったんですね。現在では、オートガス用の地下タンクが地震に強いことに注目し、オートガススタンドに自家発電装置を設置することで、災害時の素早い復旧が可能になると期待されているそうです。

▼山手交通株式会社
住所：東京都板橋区熊野町10-1
電話：03-3956-3103

（取材・文：写真：斎藤雅道　編集：木谷宗義＋ノオト）

[ガズー編集部]