S、R、GT……車のグレード名によく使われるアルファベットにはどんな意味がある?
複数の言葉を組み合わせた造語だったり外国語の単語がそのまま使われたり、クルマの名前にはさまざまな由来があるものですが、グレード名となると「S」や「GT」など、決まった文字が多く使われています。では、グレード名によく使われるアルファベットには、一体どんな意味があるのでしょうか? モータージャーナリストの工藤貴宏さんに聞いてみました。
アルファベットの意味がわかればクルマのキャラも見えてくる
まずは、スポーツカーの定番とも言える「R」と「S」から。
「Rは『Racing(レーシング)』の意味が込められていることが多く、レースから得た技術を市販車に採用しているモデルや、サーキットで走行することを考えられたモデルなどに用いられます」(工藤さん)
「Sは、『Sports(スポーツ)』のS。スポーティな走りをコンセプトとしたモデルに用いられますが、「R」ほどハードでないグレードや、スポーティだけどやや大人しめのグレードでよく使われますね。また、Rと組み合わせた『RS』もよく使われていますが、この場合は『Racing Sports』の略称であることが一般的です」(工藤さん)
ちなみに、「S」や「R」ほどではなくてもよくグレード名で目にする「X」には、「未知数」や「未知の可能性を秘めた」という意味があり、その後の発展や新たな挑戦の成功を願うモデルに名付けられることが多いのだそうです。もうひとつ、グレード名で忘れてはいけないのが「GT」です。
「GTは、『Grand Touring(大旅行)』を起源に持つ言葉です。現代は、スポーツモデルやグレードで多く使われますが、当初は文字通りの大旅行、つまり長距離移動に適したクルマに用いられる名称でした。現在も、スポーティなクルマに用いられるとは言え、サーキットユースではなく、高速クルージングが得意なセダンやクーペによく使われています。ただし、ポルシェ911の『GT3』や『GT2』のように、メーカーによっては本格スポーツモデルにGTと名づけることもあります」(工藤さん)
また「アウディR8 GT3」などのように、「GT3」や「GT4」という競技車両の規格にあわせて作られた車両の中には、純レーシングカーながら「GT」と名乗ることもあるそうです。メーカーごとの意味を知っていると、より各モデルのキャラクターが見えてきますね。
アルファベットがブランド名になっていることも!
ここまでは、グレード名に用いられているアルファベットをご紹介してきましたが、メーカー内での特別なブランドにアルファベットの名称を与えている場合もあります。
たとえば、BMWのスポーツモデルに付けられる「M」。これは、BMWの関連企業である「BMW M GmbH(ビーエムダブリュー・エム)」に由来するものです。BMW社のモータースポーツ部門を担当する「BMWモータースポーツ社」に端を発するこの企業は、初代「M」モデルであるBMW M1以降、「M」と名の付く市販車の開発を担当しています。ちなみに「GmbH」とは、ドイツの有限会社に付けられる表記です。
日本にも、アルファベットをブランド名にしているメーカーがあります。それはレクサスの「F」シリーズです。BMWの「M」シリーズと同じく、スポーツモデルに「F」が名付けられていますが、こちらはレクサスやトヨタのモータースポーツ活動においてのホームコースと言える「富士スピードウェイ(Fuji Speedway)」の頭文字に由来しています。
車のアルファベットが持つ意味は他にもいっぱい!
今回、取り上げた名称のほかにも、クルマのモデル名やグレード名などには、さまざまなアルファベットが与えられています。工藤さんは、「ある言葉の略称だったり創業者の名前の頭文字だったり、名付けられたアルファベットの数だけ由来や起源、そして物語があるので、調べてみるとおもしろいですよ」と教えてくれました。メーカーや車種によっては、その名前が持つ意味や由来がホームページやカタログに記載されています。気になる名称があったら調べてみると、意外な発見があるかもれません!
(取材・文:西川昇吾 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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