クルマのヘリテージ(遺産)が一堂に!「オートモビルカウンシル 2018」 ~メーカーブース編~
「ヘリテージ(Heritage)」という言葉をご存知でしょうか? これは「遺産」という意味を持つ言葉。8月3日(金)~5日(日)に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された「AUTOMOBILE COUNCIL (オートモビル カウンシル)」は、クルマの「遺産」を間近で見て、触れ、そして自分の愛車として手に入れられるイベントで、2016年から毎年開催されているものです。
- ゆったりした間隔でブースが設置され、1台1台をじっくり楽しむことができる
- トップ画像の新旧アルピーヌA110のほかに「三菱コルト・ギャラン」「日野コンテッサ」「ダイハツ・コンパーノスパイダー」「いすゞ・ベレット1500デラックス」が、主催者展示された。1960~1970年の人気車種だ
メーカーの歩みを知ることができる「オートモビルカウンシル」
「オートモビルカウンシル」には、国内外のメーカーも参加し、それぞれテーマを持ち寄って展示をしています。ただ昔を懐かしむだけではなく、メーカーがクルマとどのように向き合ってきたのかを知ることができる場となっているのが特徴です。
■マツダ
- 海に行かないのにルーフにサーフボードを乗せてドライブをする「陸サーファー」という言葉を生み出した5代目ファミリア
マツダは「マツダ・コンパクトハッチバック・ストーリー」というテーマで、「ファミリア(5代目)」や「ランティス」、「アクセラ・マツダスピード」といった市販車と、WRC(世界ラリー選手権)に参戦した「323 4WD ラリーカー」、そしてコンセプトカー「魁 コンセプト」を展示。
プレスカンファレンスでのトークショーでは、マツダが世界のハッチバックモデルと対等に戦うためのデザインについて話されました。魁コンセプトのチーフデザイナーである土田康剛氏は「お尻、リア周りのデザインで存在感を与えなければ世界に通用しない」と語ります。
- (左)魁コンセプト・チーフデザイナーの土田康剛氏(右)初代アクセラ・チーフデザイナーの鈴木英樹氏。鈴木氏は渡米し「より(存在感の)強いクルマを作らなければ生き残れない」と感じ、アグレッシブなアクセラのデザインに取り組んだと語った
- 1991年の「モンテカルロ・ラリー」を走行した「323 4WDラリーカー」。このイベントのためにフィンランドのラリー博物館から持ってきたという
■スバル
- 4WDバンながら905kgという車両重量で軽快な走りと低燃費を実現した「レオーネ4WDエステートバン」
スバルは「スバルSUVストーリー」がテーマ。東北電力から宮城スバルディーラーへの「冬場に送電線のチェックやメンテナンスの作業員が、ジープよりも快適に移動できるクルマが作れないか?」という相談から誕生した「レオーネ4WDエステートバン」から、ハイブリッド技術「e-BOXER」を搭載した新型「フォレスター」まで、4台が展示されました。
- 新開発のSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)と2.0L水平対向エンジン+モーターの組み合わせで、より日常の使い勝手を改良した新型フォレスター“e-BOXER”(グレード名はアドバンス)
- 株式会社SUBARU広報部 清田勝紀氏が登壇。パネルには「レオーネ4WD」を始祖とした、スバルSUVのヒストリーが書かれている。「AWD」という言葉は「4WDではトラックっぽいので、あくまで乗用車ベースの技術として付けた名」だそうで、これによって1980年代に売り上げが落ち込んだアメリカのセールスが再び成長したと言う
■アストンマーチン・ジャパン
- 5.2L V12ツインターボ(最大出力725馬力)を搭載するアストンマーチン「DBSスーパーレッジェーラ」。まだ日本での新車価格は公表されていないが、3500万円前後の見込み。日本デリバリーは早くても来年春先と思われる
発表したばかりのスーパーカー「DBSスーパーレッジェーラ」と、同社のヘリテージ部門によってレストアされた「DB6 Mk2ヴォランテ」を展示。アストンマーチン・ジャパン マーケティングディレクターの寺嶋正一氏は、「1913年設立から105年間で約9万台が生産され、そのうちの95%が現在も走行可能な状態にあります」と同社のブランドヒストリーを語ってくれました。
- ジュリアン・レン氏(左)は、アストンマーチン・ワークスによる「オーナー所有のヘリテージモデルのケア(メンテナンス・レストア)、ヘリテージカーの販売の拠点を日本にも設ける」とも説明
アストンマーチンのヘリテージ部門を担う「アストンマーチン・ワークス」ヘリテージ・ディレクターのジュリアン・レン氏も来日し、「今回、展示されたDB6 Mk2ヴォランテは、1969年7月から1970年11月までの期間、わずか38台しか生産されなかったモデル。この車両は、アストンマーチン・ワークスの手で完全なレストアを受けた、ただ1台の車両で、よりスペシャルなものになっています」と語りました。日本でのヘリテージ拠点が設立されれば、日本におけるアストンマーチンの価値もより高いものになっていくのではないでしょうか。
■トヨタ博物館
- プレスカンファレンスでは、布垣直昭館長とオートモビルカウンシル実行委員会の加藤哲也代表がトークショーを行った。二人の左右にあるのは「トヨタ2000GTスピードトライアル」と「パブリカ・スポーツ(レプリカ)」
トヨタは、メーカーそのものではなく「トヨタ博物館」が出展。テーマは「元気!!ニッポン 1960s!」。1964年に開催された「東京オリンピック」の時代に誕生した「元気な」クルマたちを展示し、2020年の「東京オリンピック」と、それ以降のモビリティの未来への想いをはせるというものです。
- 「セドリックスペシャル五輪聖火車(聖火ランナー追走車)」。普段は神奈川県座間市の「日産ヘリテージコレクション」に保管されている
- リヤシートに設置されているのが、聖火を載せる台座。1964年当時の道路の舗装率はまだまだ低く、ショックなどで火が消える恐れがあったので、出前用バイクに使われる“出前機”の機構を搭載した。
当時のオリンピック聖火の予備を運んだ特別仕様の「セドリックスペシャル五輪聖火車(聖火ランナー追走車)」が、展示されていました。また、1966年に3つの世界記録と13の国際記録、それぞれのスピード記録更新した「トヨタ2000GTスピードトライアル」や「トヨタ スポーツ800」の原型になった. 「パブリカ・スポーツ(レプリカ)」の姿も見られました。
- 1960年代の各自動車メーカーのカタログやポスターなどが飾られていた
プレスカンファレンスで布垣館長は「メーカーやブランドの垣根を越え、ヘリテージを発信し、盛り上げていきたい。他社さんのものも含む車両やカタログなどで、時代を感じ取っていただきたい」と話していました。
この4メーカー以外にも、日産自動車は、「モータースポーツヒストリー」をテーマとし、来年から参戦予定のEVフォーミュラレース「フォーミュラE」マシンと、幻のハイテクスポーツカー「MID4-Ⅱ」などを展示。ホンダはフラッグシップモデル「レジェンド」の歴代モデルを展示しホンダを技術の歴史を紹介しました。
- 日産MID4-Ⅱ。3.0L V6ツインターボエンジンをミッドシップに配置したフルタイム4WD+4WSスポーツカー。量産化されなかったが、このクルマの技術は「スカイラインGT-R」や「フェアレディZ」に生かされた
- 通称「スーパーレジェンド」と呼ばれた2代目ホンダ・レジェンド。エアバッグやABSなどの安全装備や、キーレスエントリーなど、当時としては先進的な豪華装備で、ホンダのフラッグシップモデルにふさわしいモデルだった。今でも夜の銀座や六本木に似合いそう!?
出展者とクルマ談義に花が咲くイベント
「オートモビルカウンシル」のブースには「そのブース」の人しかいないので、クルマ談義に花が咲きます。比較的コンパクトなイベントなので、会話に夢中になって「あのブース、見られなかったな……」ということもなく、ストレスフリーで楽しめるのも「オートモビルカウンシル」の魅力のひとつでしょう。歴史を知ると、クルマの世界がより楽しくなります。次回、開催された際には、ぜひ足を運んで、実車を間近でご覧になってみてください。
(取材・文・写真:クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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