【鈴鹿10時間レース徹底レポート2】 “熱く”そして“濃い”バトルが繰り広げられた予選、そして決勝!

台風直撃でセレモニーが中止になるという、番狂わせからスタートした「鈴鹿10時間耐久レース」のレースウィーク。予選日には天候は回復したものの、直射日光とアスファルトからの照り返しでサーキットにいるすべての人にとって過酷な状況下で、レースイベントは進行しました。今回は、レース本番、予選と決勝の様子を詳しくお伝えします。

予選はコースアウトギリギリのタイム合戦であのチームにあわやの・・・

25日(土)に行われた予選は、1台のマシンに乗る3人のドライバーにそれぞれ15分のセッションが与えられ、3人が記録したベストタイムの合計で順位が決められるルール。トップ20台はさらに「ポールシュートアウト」というタイムアタックに進出し、最終的なグリッドを決定します。

15分という短い時間の中で35台が一気にコースインするため、どこでアタックをかけるかが勝負のわかれ目。そんな中、なかなかアタックできない日本勢を尻目に、こういった状況に慣れている海外チームは、次々と好タイムを出していきました。

しかし、「トラックリミット(4輪脱輪)」でタイム抹消されるチームが続出。3つのセッションのあとに、一部チームからトラックリミットの基準に抗議があがり、再審議のためにスケジュールが遅れる事態に。ポールシュートアウトは、28号車「HubAuto Corse(フェラーリ488GT3)」が、2分01秒740を記録し、ポールポジションを獲得しました。

その裏では、奇跡の復活を遂げた34号車「Modulo DRAGO CORSE(ホンダNSX)」が決死のアタック。しかし、高速のデグナーひとつ目でスピン! このため予選は赤旗中断に。その割りを食ってしまったのが00号車「メルセデスAMG Team GOOD SMILE」です。前半セクションをベストタイムで走っていただけに、ドライバーの小林可夢偉選手にとって悔しい結果となりました。

なお前回の記事で注目したチームの中で最上位だったのは、911号車「マンタイ・レーシング(ポルシェ911 GT3R)」で、6位でした。

スタートから波乱続きの決勝。ラスト30分は表彰台圏外でのバトルに息を呑む

26日(日)の決勝も快晴。普段、行われるレースよりもずっと早い午前10時のスタートを前に、2万7000人の観客が来場しました。

スタート前には参加国の旗を掲げたスーパーカーやトラックによるパレードランが行われた
スタート前には参加国の旗を掲げたスーパーカーやトラックによるパレードランが行われた

10時間の耐久レースは、フォーメーションラップからトラブルが発生。ポールポジションを獲得した28号車「HubAuto Corse」のエンジン始動に時間がかかり、やや遅れて隊列に戻りポールショットに復帰しました。

28号車(隊列前方)は無事にスタートし、後方との差を広げていったものの……
28号車(隊列前方)は無事にスタートし、後方との差を広げていったものの……

しかし、28号車「HubAuto Corse」は、スタートから1時間後にスタート時のトラブルによる手順違反でドライブスルーペナルティを通達されてしまい、トップ争いから陥落。そんな中でトップに躍り出たのが75号車「サンエナジー1レーシング(メルセデスAMG GT3)」です。

正面からだと燃えているように見えてしまうカラーリングの75号車「サンエナジー1レーシング」
正面からだと燃えているように見えてしまうカラーリングの75号車「サンエナジー1レーシング」

さらに日本勢にもトラブルが続発。7号車「D’stationレーシング(ポルシェ911GT3R)」が、レース開始から2時間半を経過したところで、トラブルによりマシンを止めてしまう事態に。34号車もスタート早々に58号車「Garage 59(マクラーレン650S GT3)」とシケインで接触。走行に支障がなかったものの、審議対象となり、34号車にはドライブスルーペナルティが課せられてしまいました。

その中で淡々と走り、トラブルの罠を回避しながら走行をしていたのが、不運な中で予選を終えた00号車「メルセデスAMG Team GOOD SMILE」。21番手スタートから安定したペースで順位を上げて、5時間が経過したところで8番手まで浮上。さらに7時間半経過時点で、上位のトラブルにも助けられ5番手に順位をアップします。

00号車の浮上の原因となった07号車「ベントレー・チームM-Sport」が追い上げを開始。一時、タイム差が1秒を切る接近戦にまで持ち込みましたが、最終的に00号車「メルセデスAMG Team GOOD SMILE」が07号車を振り切り、日本勢最高位の5位でチェッカーを受けました。

総合優勝は、予選2番手がスタートした888号車「メルセデスAMG GruppeM Racing」。

888号車は、レース前半に左側面のゼッケンが脱落するという珍しいトラブルがあったものの、マシンそのものはトラブルフリーで、安定したスピードでレースを進め、276周を走りきり鈴鹿10時間耐久レースの初代ウィナーとなりました。

大きなトロフィーを高々と上げるGruppeM Racingのドライバーたち。優勝賞金は3000万円!
大きなトロフィーを高々と上げるGruppeM Racingのドライバーたち。優勝賞金は3000万円!
前回の記事で取り上げた43号車「メルセデスAMG チーム・ストラッカレーシング」は2位表彰台を獲得した
前回の記事で取り上げた43号車「メルセデスAMG チーム・ストラッカレーシング」は2位表彰台を獲得した

なぜ、日本勢は勝利を獲得できなかったのか?

なぜ、日本勢は勝利を獲得できなかったのか?

今回の「鈴鹿10時間耐久レース」で日本勢は、00号車を除いて何かしらのトラブルに遭遇し、上位完走のチャンスを逃してしまいました。クルマは同じGT3マシンなのにどうして?

ひとつは、「ピレリタイヤ」。今回のレースは、ピレリタイヤのワンメイクでした。海外勢にとっては問題なくても、さまざまなタイヤメーカーがしのぎを削って戦うことが当たり前になっている日本勢にとっては一大事。人間に置き換えてみれば、アスリートが突然履いたことがない別ブランドのスポーツシューズを履かされるのと同じです。

2つ目は、「10時間のペース配分」。前回までの「鈴鹿1000kmレース」と比べて、走行時間は約4時間も長くなりました。しかも、今回はGT3マシンだけのレースです。今までのスーパー GTやスーパー耐久よりもペースが上がってしまったことで、マシンへの負担が想像以上にかかりトラブルを誘発したと考えられます。

地元である日本勢にとってはやや悔いが残る結果となってしまいましたが、来年(開催されれば)の活躍に期待したいところ。しかし、鈴鹿1000kmを超えるロングランとなった、今回の10時間レースは、見どころが盛りだくさんの“濃いレース”でした。

(取材・文・写真:クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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