消防車のじぷたにローラーくん……大人も子どもも夢中になる! おすすめクルマ絵本
秋は、おいしいものや絶景を求めてのドライブにもぴったりな季節。でも、秋雨の日には「読書の秋」ということで、たまにはゆっくり絵本を開いてみるのもよいものです。お子さんにもクルマ好きな大人にも、おすすめの絵本をご紹介します。
みんな大好き! 働くクルマ
ダンプ、タンクローリー、パトカー、パワーショベル……働くクルマはいつの時代も人気者です。でも、小さかったり、動きが地味だったりするクルマはなかなか注目されないかもしれません。そんなクルマたちの絵本2冊です。
『しょうぼうじどうしゃじぷた』 渡辺 茂男 作 山本 忠敬 絵 福音館書店刊
古いジープを改良した消防自動車“じぷた”。“じぷた”は働きものでしたが、はしご車の“のっぽくん”のように長いはしごはありません。高圧車の“ばんぷくん”のように力強く水を送って火を消すこともできません。救急車の“いちもくさん”のようにけが人を素早く運ぶこともできません。町の子どもたちに人気なのは、毎回大活躍するこの3台。
“じぷた”は自分がちっぽけに思え、悲しい気持ちでいっぱいでした。ところがある日、山火事が起こりました。小さな“じぷた”に出動命令がかかります!
『のろまなローラー』 小出正吾 作 山本忠敬 絵 福音館書店刊
“ローラーくん”はいつもごろごろゆっくり。スピードの速いクルマはそんな“ローラーくん”をどんどん追い抜いていきます。山の坂道に差しかかったところで、“ローラーくん”は、ずっと前に追い抜いていったクルマに出会います。のろまだけれど、でこぼこ道を直しながら進む“ローラーくん”とびゅんびゅん走るクルマたちとのやり取りの変化がおもしろいです。
働くクルマの花形ではないけれど、なくてはならない存在の“じぷた”と“ローラーくん”を、応援せずにはいられません。
時の移り変わりとともに
表紙の可愛いおうちの絵から、クルマとは関係なさそうに見られる絵本ですが、実は、読み進めるとクルマが重要なカギとなっています。
『ちいさいおうち』 バージニア・リー・バートン 作・絵 石井桃子 訳 岩波書店刊
静かな田舎に建てられたちいさいおうち。同じ風景の中、四季を何度も繰り返し、ちいさいおうちに暮らす子どもたちも大人になり街へ出ていきます。
そんなある日のこと。
「うまのひっぱっていない くるまが はしってくるのをみて ちいさいおうちは おどろきました
それは じどうしゃでした」
畑やリンゴの木しかなかった静かな田舎にクルマが現われ、大きな道路が作られ、家がどんどん建ち並び、やがて、高層ビルが建ち始め……。時が経ち、クルマの数が増えていくのに比例して、ちいさいおうちの周りが町として開発されていく様子が柔らかい絵で描かれます。
ちいさいおうちはどうなってしまうのでしょうか。
おじいさんの挑戦
夏の暑い日も雪の降る日も坂道も、毎日歩いて郵便を配達し続けたもりたろうさんは60歳で勤めを終えます。そのもりたろうさんが挑戦したのはクルマを運転することでした。
『もりたろうさんのじどうしゃ』 大石真 作 北田卓史 絵 ポプラ社刊
翌日から自動車教習所に通い始めたもりたろうさん。むずかしい運転の練習もしっかりこなして、運転免許証を手にしました。もりたろうさんはさっそく自動車屋さんのすみっこにあったおんぼろのクルマを手に入れます。ていねいに手入れをしたそのクルマで息子のさとるさんの家へ向かったもりたろうさんが出会ったのは?
クルマ版のわらしべ長者ともいうべき結末にほっこりします。
ミニカーだって頑張りたい
忘れられてしまうというのは、人間でも、おもちゃでもさびいしいものでしょう。
『ミニカーミュートだいかつやく!』 福田利之 作・絵 アリス館刊
ミニカーのミュートはほこりをかぶって、机の上。持ち主の男の子が他のおもちゃに夢中で、遊んでくれないのです。
ある日窓の外からの大きな音に驚いたミュートは、たくさんのトラックが動物たちを運んでいるのを見つけます。動物園の引っ越しだったのです。
象やキリンやライオンを運ぶ大きなトラックの様子に、ミュートは「よーし、ぼくも はこぶぞ!」と家を飛び出しますが……
小さな小さなミニカーのミュートにできることとは?
この絵本の作者の福田利之は、イラストレーターであり、「ほぼ日刊イトイ新聞」の「福田のフォト絵」などの連載や十布のテキスタイルデザインを手がけています。
キャンバスにティッシュペーパーを貼りつけて描き、インスタントコーヒーやニスで仕上げるといった独特な手法の趣のある絵も楽しめる1冊です。
クルマも大きな道具
最後に紹介するのは、今年2018年5月に92歳で亡くなった加古里子(かこさとし)の絵本です。
『どうぐ』 加古里子 作・絵 瑞雲舎刊
私たちの生活になくてはならない道具。歯ブラシや鉛筆、泡だて器やスプーンといった普段の生活で身近に使うもの。手で持って土を掘ったりすくったりするシャベルやスコップは、同じ用途で大型になると工事現場で活躍するパワーショベルになるわけです。身の回りのこんな道具、あんな道具を1つずつていねいに描き、掘り下げていきます。
ねじやバネなどの部品という道具を組み立てると、クルマというもっと便利な道具にもなります。
そして、クルマに関して驚くべきページが待っています。これは、絵本を開いて、ご自分の目でお確かめ下さい!
絵本に描かれるクルマは、どれもそれぞれ個性的で独特の魅力があります。
クルマ絵本はまだまだあります。お気に入りの絵本をぜひ、見つけてみて下さい。
(文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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