透けるトレーラーに穴ぼこ対策!? アメリカならではの技術を発見【CES2019レポート】

2019年1月6日より11日にかけてアメリカのラスヴェガスにおいて「CES2019」が開催されました。アメリカ最大のエレクトロニクス技術の見本市には、先進化する自動車関連企業の出展も目立っており、クルマの最先端技術を見ることのできるイベントにもなっています。

そこで見つけたのが、いかにもアメリカ! という日本では、あまり目にしない技術です。今回は、そうした最新技術を紹介したいと思います。

トレーラー愛用者にとって、画期的な後方モニター

日本とは比べ物にならないほど、アメリカで隆盛な自動車文化といえばトレーラーでしょう。アメリカでは、ピックアップトラックやSUVの後ろに、キャンピングカーや貨物などを積んだトレーラーを牽引している車両を非常に多く目にすることができます。SUVなどのカタログには、牽引できる能力を示す数値も掲載されるほどです。

そんなトレーラー文化の花盛りのアメリカに向けた新技術の提案が、ヴァレオの「エクストラ・ビュー・トレーラー(Xtra Vue Trailer)」です。これは、ドライバーの死角になる、トレーラーの後方視界を確保するもの。バックモニターに映るトレーラーに、そのさらに後ろの風景を合成します。そうすると、ドライバーがバックモニターを見ると、まるでトレーラーが存在しないかのような広々とした視界が手に入ります。真後ろだけでなく、斜め後方も見えるため、車線変更や後退、駐車時が、ものすごく簡単になることでしょう。

ちなみに映像の合成は、モニター内だけなので、クルマの後ろを目視すると、普通にトレーラーがあるだけとなります。

巨大駐車場で駐車場所から自分のところにクルマが自動でやってくる

続いて見つけたのは、クラリオンの自動遠隔出庫システム「ロング・レンジ・サモン(Long Range Summon)」です。これは駐車場にて、クルマが駐車した場所から自動で、ドライバーの待つところまで走ってくるという技術です。アメリカのショッピングモールは、とにかく巨大です。ですから駐車場も、とにかく広い。そのために、買い物をした荷物を持ってクルマを駐車した場所までいくのは、相当に苦痛です。そんなときに役立つ技術というわけです。

従来からある低速自動運転技術とサーバーを利用するコネクテッド技術、そして位置情報制御技術をミックスして実現します。

では、実際に、どのような流れで自動遠隔出庫が行われるかを説明しましょう。まず、駐車場に入ってきて、駐車するときに、すでにシステムが働き始めます。入庫しながら、周辺の状況や経路などをシステムがセンシングして記憶します。駐車した場所から、お店までは、徒歩で移動。買い物の後に店の前でスマートフォンを操作して、クルマを呼び出します。ゆっくりとドライバーのところにやってきてくれます。速度が遅いので、人が飛び出てきたり、経路にカートが置きざりになっていても、上手に止まったり避けたりすることができるのです。

カートなど障害物も避けることができる
カートなど障害物も避けることができる

クルマを駐車した場所を忘れてしまっても大丈夫ですし、大量の買い物があっても、クルマが店の前までやってくるのでラクチンという技術です。

巨大な穴ボコをクルマが先に見つけてくれる

さらにアメリカらしい技術は、路面の凹凸を見つける日立オートモーティブシステムズの車載用ステレオカメラ技術です。

聞くところによると、アメリカの郊外や地方都市に行くと、予算の関係上から整備が完璧でない道路があるとか。つまり、道に大きな穴ボコがあるのも珍しくないというのです。そんな穴ボコにハマると、乗り心地は悪くなりますし、最悪のケースではタイヤがパンクしてしまうことも。そこで、事前に穴ボコをステレオカメラで発見して、同時にサスペンションのダンパーの硬さを調整することで、ショックを和らげようというのです。

実際に、デモ走行が行われるコースを見てみれば、穴ボコの深さは、10㎝ほどもあります。日本ではありえない深さにびっくり。

こちらがテストで使われた穴ぼこ。実際に見るとかなり深い
こちらがテストで使われた穴ぼこ。実際に見るとかなり深い

最初はサスペンションの調整なしで、乗り越えると、それはそれは大きなショックが乗員に伝わります。ところが、システムを作動させれば、ショックは大幅に緩和されました。これまでステレオカメラは、先進運転支援システムとして、他の車両や歩行者を認識するのに使われていましたが、こうした新しい使用方法もあるという、非常に面白い提案でした。

国が違えば、クルマを取り巻く環境も違うし、課題も違うということが、今回の「CES2019」でよく分かりました。

(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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