ガイドつきで海底トンネルが見学できる!「東京湾アクアライン裏側探検」
工場見学など「普段は入れない場所に入れる」と聞くと、それだけでワクワクしますよね。実は「東京湾アクアライン」でも、普段は入れない場所に入れるガイドツアーを実施しています。海底トンネルの裏側が見られる「海底トンネルに潜入!東京湾アクアライン裏側探検」です。今回はこのガイドツアーの様子をレポートします。
毎週開催になった人気ガイドツアー
東京湾アクアラインでは、2008年(平成19年)の東京湾アクアライン開通10周年を迎えたときから、毎年8月に「サマーフェスティバルin海ほたる」というイベントを開催しており、その中でファミリー向けに「アクアライン探検隊」を実施していました。2018年末までに12回を数え、今までに2,000名以上が参加した人気のガイドツアーです。
体験型イベントの流行やインフラツーリズムの参加者の増加もあり、2019年1月より年間を通して毎週火・水曜日は個人向け、木・金曜日は団体向けにそれぞれ午前と午後の1日2回、「海底トンネルに潜入!東京湾アクアライン裏側探検」としてガイドツアーを開催することになったそうです。
ところでアクアラインってどんな道路?
ガイドツアーのレポートをする前に、簡単に東京湾アクアラインについておさらいしておきましょう。
東京湾アクアラインは、神奈川県川崎市の浮島から千葉県木更津まで、トンネル(アクアトンネル)と橋梁(アクアブリッジ)を組み合わせた道路で総延長15.1kmの自動車専用道路のこと。アクアトンネルは9.5kmあり、海底道路トンネルとしては世界最大規模。4.4kmのアクアブリッジは、橋の長さが日本最長です。
トンネルの中間地点には「風の塔」と呼ばれる人工島を作り、トンネル内の換気を行う施設があります。東京ドームと同じくらいの広さの島に、高さ90mの大塔と75mの小塔が立っていて、大塔は「自由の女神」とほぼ同じくらいの高さだそうです。また、アクアトンネルとアクアブリッジの間には、パーキングエリアの「海ほたる」もあります。
いざ、東京湾アクアラインの裏側へ!
東京湾アクアライン裏側探検は事前申し込み制。当日は、海ほたる1階に集合し、管理棟へ移動します。そこで参加受付と参加費用(税込)として大人(中学生以上)1000円、子供(小学3年から6年)500円を支払います。そこから約10分程度、アクアラインの概要や当時の工事の様子などを映した映像を見ます。改めて見ると、よくこんな海のど真ん中にトンネルを作ったなと感心させられますね。それが終わると、いよいよ関係者以外立ち入り禁止区域に入っていきます。
週末の混雑時に使われる臨時駐車スペースの奥に、厳重に鍵のかかった扉があります。ここが東京湾アクアラインの裏側への入口です。入ってみると大きな空間が広がっていました。奥へ進んでいくと急に狭く曲がりくねった通路になり、その先に厳重な扉が現れます。
いよいよ秘密の部分である緊急避難通路兼管理用道路に入っていきます。何カ所か同じような扉を抜けると、ひんやりとした空気が流れてきます。これは避難通路に常に空気を流し気圧を高め、万が一事故や災害で起こったときに、火災や煙が逆流しないようになっているためだそう。試しに吹き流しを扉に近づけてみると、横を向くほどの風が流れているのがわかりました。
避難通路で改めてアクアラインの構造を説明してもらいますが、自分たちの上に道路があり、多くのクルマが通過していることが、音を通して感じられます。アクアラインの本線上を走っていて気がつくかはわかりませんが、実は非常用出口が300mおき設置されており、そこの非常出口から避難すると道路の下にある、この避難通路に出ることができる仕組みです。
避難連絡路は階段ではなく滑り台になっていました。これは、階段だと非常時に将棋倒しになってしまう危険性があることや、体の不自由な方でも降りられることを想定しているからだそうです。さらにゆるやかに曲がる形状とすることで、滑り降りる速度を緩めているのだとか。
避難通路には非常電話があり、またいま自分が何番の非常口から降りたのか、そして最適な避難先は海ほたるなのか、あるいは風の塔や浮島側なのかがわかるようになっています。
避難通路を見学したら、いよいよ地上へ出る通路へ。地下3階部分、海水面の下、約15mの場所から地上へ行くには、120段の階段(ビル7階相当)を上っていきます。120段を上り切ると、最初に映像を見た管理棟の中に出ました。そこから外部に出ると、風の塔や羽田空港、遠くに富士山が見えるデッキに出ます。
トンネルのほかにも驚きがいっぱい!
海ほたるの西側には、トンネルを掘るときに使われた刃が設置されたシールドマシンのカッターフェイスモニュメントが立っています。マシンの直径は14.14mと巨大で、人と比べるとその大きさに驚きます。ひとつ10kgの重さがある土を掘る刃は全部で1000個付いていて、それだけで10tの重さになるというから驚きです。東京湾アクアライン消防車庫も見学。高さを抑えたアクアライン専用の消防用車両が並びます。
高さを抑えた仕様ゆえ、消化用の水槽を持たないタイプになっていますが、それでも消化活動ができるように、避難通路内には水と消化剤を流すパイプラインが設置されていて、そこにホースを繋いで消化活動を行うようです。
ちなみに、ここに消防隊が常時待機しているわけではなく、火災などが発生したときに、川崎・木更津の双方から消防隊が駆けつけ、必要に応じてこの消防車を使うとのこと。幸いなことに、過去20年間で一度も出動はないものの、常に訓練は行われているそうです。
参加記念カードをもらってツアー終了
最後にツアー参加記念カードを貰って解散です。今回、ツアーに参加した方に感想を聞いてみると「(映画『シン・ゴジラ』に登場した避難通路の)撮影地に来られておもしろかったです」「風の塔まで歩いて行くツアーもあったらいいいかも」「見学ツアーをいろいろ見ているけど、なかなか見られない部分が見られて楽しかった」「非常口の裏側を見られて楽しかった」と、さまざまな声が寄せられました。たしかに普段、見られない部分が見られるのは楽しいですよね。
ツアーを主催している東日本高速道路(NEXCO東日本)と東京湾アクアライン株式会社は、このツアーを通じて、事故などが起きたときに冷静に判断できるように、こういう設備があるのを知ってほしいという思いと、「土木のアポロ計画」と言われた壮大な工事の様子を感じ取ってもらえればと考えているそうです。気になった方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
▼東京湾アクアライン裏側探検
URL:https://www.umihotaru.com/ait_tanken/
(取材・文・写真:雪岡直樹 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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