一般道は丸ゴシック、高速道路は角ゴシック……意外と知らない道路標識の秘密

ドライバーにとって必要不可欠な存在、それは道路標識です。ふだん何気なく見ている標識ですが、逆光対策や英語表記の追加など、日々更新されていることをご存知でしょうか。
今回は年間5万枚もの道路標識を製造している、野原グループの「株式会社アークノハラ」にお伺いして、製造工程や最新式の標識についてお聞きしました。
ご対応いただいたのは、株式会社アークノハラ 常務取締役の岡本力さんと、設計部設計課の加藤早紀さんです。

株式会社アークノハラ 設計部設計課 加藤早紀さん(左)、常務取締役 岡本力さん(右)
株式会社アークノハラ 設計部設計課 加藤早紀さん(左)、常務取締役 岡本力さん(右)

――ひとくちに「道路標識」といっても、いろんな種類がありますよね。まず分類について教えてください

道路標識は大きく分けて「本標識」と「補助標識」の2種類があります。さらに本標識は「案内標識」「警戒標識」「規制標識」「指示標識」の4つに分けられます。
規制標識と指示標識は交通管理者、つまり警察が組織する都道府県公安委員会の管轄です。一方、案内標識と警戒標識は道路管理者、つまり国や都道府県、高速道路会社などの管轄となります。
案内標識は緑色が高速道路、青色が一般道です。一般道の場合、施設や地点の標識は「白地の青文字」、方面・方向を案内する標識は「青地の白文字」に分けられます。

(上から)案内標識、警戒標識、規制標識、指示標識、補助標識
(上から)案内標識、警戒標識、規制標識、指示標識、補助標識

――道路標識はどのように作られているのでしょうか?

警視庁や県警など公安委員会が設置する「規制標識」は印刷で、国やNEXCOなど道路管理者が設置する「案内標識」は切り文字で製造しています。工程については、動画で見ていただくのが一番分かりやすいかと思います。切り文字の場合はすべてカッティングマシンを使用し、手作業で貼ります。その後、真空加熱圧着でしっかり接着させます。
弊社での製造数は、大小あわせて年間約5万枚、1日あたり200枚ほどです。「通行止め」や「止まれ」などの規制標識はほぼ一定ですが、高速道路の標識は開通に合わせて需要が一気に増えますね。直近では圏央道、外環道の開通にともなう需要がかなり多くありました。

――逆光対策や、夜間でも見やすい工夫が施されているそうですね

逆光対策の標識については、スリット孔が入っている「スリット式(反射式標識板)」のものと「透過式(内部照明式標識板)」の2パターンがあります。
「スリット式」は、表示内容に沿ってスリット孔を入れ、西日や東日でもよく見えるようにしています。新東名高速道路で広く使われているので、ドライバーの方も目にしたことがあるのではないでしょうか。
「透過式」は背面に透過性のある繊維シートを使用し、内部に太陽光を取り込むことで逆光時の判読性を向上させています。

スリット孔が施された逆光対策標識。LEDが光っているように見えるが、実際には太陽光を通過させている
スリット孔が施された逆光対策標識。LEDが光っているように見えるが、実際には太陽光を通過させている
透過式の逆光対策標識(右)。対策前(左)と比べて判読性が格段に向上している
透過式の逆光対策標識(右)。対策前(左)と比べて判読性が格段に向上している

夜間の対策については、反射輝度を向上させています。「広角プリズム型」という超高輝度の反射シートを使用することで、従来と比べて10~12倍ほど視認性が向上しました。また「再帰性反射」という特性を用いて、当たった光をドライバーだけに返す工夫も施しています。

(左から)50m、100m、150m地点での見え方の比較。左半分が「広角プリズム型」で、右半分の従来型と比べて明るさが10~12倍になっている
(左から)50m、100m、150m地点での見え方の比較。左半分が「広角プリズム型」で、右半分の従来型と比べて明るさが10~12倍になっている

――Twitterでは標識の書体がたびたび話題になっているようです。詳しく教えてもらえますか?

一般道は、和文が丸ゴシックでナールというフォント、英文がヘルベチカです。高速道路は角ゴシックで、首都高速は新ゴ、NEXCOはヒラギノというフォントを使っています。
高速道路では、かつては三鷹の「鷹」を略するといった、旧日本道路公団オリジナルの書体である「公団文字」を使用していました。しかし「公共の場所に正しい日本語でないものを掲示するのはよろしくない」ということで、公団文字は廃止になってしまいました。
高速道路の標識は緑色ですが、実は首都高とNEXCOで微妙に異なります。「首都高グリーン」と「NEXCOグリーン」と呼んでいますが、普通のドライバーはまず気づかないでしょうね。

一般道は丸ゴシック、高速道路(NEXCO)は角ゴシックが使われている
一般道は丸ゴシック、高速道路(NEXCO)は角ゴシックが使われている

――2020年の東京オリンピックに向けて、標識も変更されているそうですね

訪日外国人への対策として、2017年7月から「止まれ」の下に「STOP」と表記するよう法令が改正されました。ただ、「止まれ」だけで全国に100万枚あるといわれており、一斉には変えられないので、10年間かけて新しい標識へ更新することになっています。
あとは道路の通称名。たとえば「青山通り」の場合、「Aoyama-dori Ave.」が新しい表記です。2年前までは「Aoyama-dori」だけでしたが、これも外国人の方向けの追記ですね。doriとアベニュー、意味としては二重になっていますが、「青山通り」というのは一つの固有名詞ですので、結果としてはAve.を追加することになりました。

STOPが追加された「止まれ」と、Ave.が追加された道路の通称名標識
STOPが追加された「止まれ」と、Ave.が追加された道路の通称名標識

――「止まれ」を八角形にしよう、という動きもあったとお聞きしました

実は、国際標準は八角形なんです。アメリカもヨーロッパも八角形で、逆三角形は日本だけ。韓国も日韓ワールドカップの際に八角形へ変更しました。東京オリンピックに向けて「日本も八角形にしましょう」と訴えていたのですが、最終的には「従来の形で広く認知されているから」という判断で、逆三角形のままSTOPを追記するにとどまりました。

  • 海外の「STOP」標識
  • 八角形の「止まれ」標識サンプル

海外の「STOP」標識(左)と、変更を提案していた八角形の「止まれ」標識サンプル(右)

――「自動運転になれば標識はいらなくなる」という話もありますが、実際はどうなんでしょう?

自動運転というとクルマ側の技術開発ばかりクローズアップされがちですが、道路側からの情報発信も重要ではないか、と考えています。
現状の自動運転車は、車載カメラで画像認識をおこなっています。もし標識にいたずら書きをされた場合、「止まれ」を認識できない可能性もありますよね。「GPSと車載カメラで安全は担保されている」という意見もありましたが、実際には夜間の走行実験で接触事故を起こした例もあったようです。
そこで、クルマ側から画像を読み取るだけではなく、標識側から情報を発信する研究を群馬大学と共同で進めています。

もし自動運転が普及すれば、「ドライバーさん、標識をよく見てくださいね」という時代ではなくなるでしょう。自動運転の進化に合わせて、よりクルマ側が探知しやすいような情報を標識側から発信する。そういった「次世代標識」の開発にも取り組んでいます。

自動運転車両と標識との間で行われる通信(路車間通信)のイメージ図
自動運転車両と標識との間で行われる通信(路車間通信)のイメージ図

普段あまり意識していませんでしたが、逆光対策や英語の追記など、日々細かく更新されているのですね。
ドライバーが安心、安全に運転できるのも道路標識のおかげなのだな、と改めて認識することができました。自動運転に合わせた次世代の標識にも注目しましょう。

(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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