リッター2000kmは当たり前!? 低燃費を競う「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」を観戦してきた

「1リットルのガソリン燃料で、どれほどの距離を走行できるか?」

6月22日(土)、速さ(着順やラップタイム)ではなく低燃費を競う競技会「Hondaエコ マイレッジ チャレンジ2019 第11回 もてぎ大会」が、栃木県にあるツインリンクもてぎの西コースで開催されました。

多くの場合、燃費は「ガソリン燃料1リットルあたりの走行距離」を指します。皆さんは「燃費が良い」との言葉を聞いて、どのくらいの燃費を思い浮かべるでしょうか?

わずか1リットルのガソリンで、日本列島を横断できる低燃費

「Hondaエコ マイレッジ チャレンジ」は、各チームがレギュレーションに沿って低燃費を競う大会です。優勝は着順やラップタイムではなく、各グループカテゴリー中、もっとも低い燃費で走行した(燃料の消費量を抑えた)車両のチームに与えられます。1981年(当時の大会名は「Hondaエコノパワー燃費競技全国大会」)に初開催され、今年で39年目を迎えます。現在、「Hondaエコ マイレッジ チャレンジ」は、全国大会のほかに鈴鹿大会、九州大会、もてぎ大会といった地方大会が開催され、原則的に全国大会と同じレギュレーションで競われます。

気になる燃費の数値は、2011年に開催された大会で3644.869km/リットルもの数値が記録されています。日本列島の最北端から最西端までの距離が3294 kmですから、1リットルのガソリンがあれば、数値の上では日本列島を横断できることになります。燃費は大会開催時の気象状況により大きく左右されるので、必ずしも最高記録に近い数値が出るとは限りません。それでも優勝チームとなるとコンスタントに2000 km/リットル以上の数値が計測されています。

「エコマイレッジチャレンジ」は、機械好き学生たちの甲子園!

今回のもてぎ大会で採用されたグループカテゴリーは、グループⅠ(中学生クラス)、グループⅡ(高校生クラス)、グループⅢ(大学・短大・高専・専門学校生クラス)、グループⅣ(一般クラス)、ニューチャレンジクラス(新規参加クラス)、二輪車クラスの計6つになります(全国大会では、これに2人乗りクラスが加わります)。

グループⅠ、グループⅡ、グループⅢは、それぞれ対象となる学校の在学生5人でチーム構成されていることが条件です。彼らからすれば、本大会は高校球児でいう甲子園のような位置づけにあります。

ニューチャレンジグクラスと二輪車クラスを除き、各走行車両に貼られたゼッケンは最初の一桁(100の位)の数字が、それぞれ属するグループカテゴリーを表しています。

すべての参加車両は、ホンダ製の4ストロークエンジンの使用が定められています。二輪車クラスは、市販されているオートバイをそのまま用いて参加しますが、ほかのグループカテゴリーでは自作したオリジナル車両に、規定のエンジンを搭載して参加します。

好記録を狙うには独特の走行テクニックが要求される

本大会には、グループⅠに14チーム、グループⅡに27チーム、グループⅢに16チーム、グループⅣに9チーム、ニューチャレンジクラスに1チーム、二輪車クラスに12チームと、計52チームがエントリー。各チームは午前中に受付や車検、練習走行を済ませ、決勝レース用のガソリン燃料を受け取ったのち、12時から始まる決勝レースに備えます。

ガソリン燃料は大会運営より貸与される公式燃料タンクに供給され、不公平がないよう、すべてのチームが同じガソリン燃料を使用します。決勝レース直前にもガソリン燃料の残量チェックや微調整が行われるなど、正確な数値を計測するための態勢が整えられています。

今回の大会では、まず二輪車クラスからスタート。次いでグループⅠ、グループⅡ、グループⅢ、グループⅣ、ニューチャレンジグループの順にスタートします。

二輪車クラスは5周、そのほかのグループカテゴリーは10周が規定周回となります。ほかにも「平均して時速25km以上の速度で走らねばならない」、「それぞれ定められた時間内に規定周回を走りきらねばならない」といった決まりがあるため、ただ燃料の消費量を抑えた走行をすればいいというものではなく、開催するサーキットコースに合わせた戦略が求められます。

サーキットを走行した経験のある人、あるいはサーキットでのレース観戦を趣味にしている人ならばご存じかと思いますが、通常のレースの場合、最終コーナーを抜けて車体が安定したらアクセルを踏み込み、全開加速を始めます。しかしマイレッジチャレンジの場合、多くの車両は最終コーナーの中ほどから慣性による走行へと切り替えます。いつもなら排気音が大きくなるはずの場面で、逆に小さくなる、あるいは停止する。最終コーナーは低燃費を競う大会ならではのエコドライブテクニックを垣間見ることのできるポイントです。

ゴールのあとに待っているチームの大仕事

二輪車クラスの車両はスタートから10分ほど、ほかのグループカテゴリー車両も20分ほどで規定周回を終え、ゴールを迎えます。

チームメイトより「お疲れ様」や「ゴールおめでとう!」との言葉を受けつつのゴールイン。しかしこれで終わりではありません。ゴール後、すみやかに公式燃料タンクを外し、ガソリン燃料の残量を計測します。

ここで失敗してしまうと記録は残らず、これまでの努力がすべて水の泡となって消えてしまうため、どのチームも間違いのないよう、慎重に作業を進めます。

突然の天候急変に翻弄されたチームも……

二輪車クラスのスタート時、天候は曇天で、雲のすき間から日が差していました。しかし徐々に雲は厚く、そして濃い灰色のものとなり、スタートの遅かったグループカテゴリー車両は走行中、雨に降られます。

雨足は徐々に強くなり、走行している車両の燃費にも影響が出ます。また風防の曇りにより、視界の悪くなった車両もあったそうです。スタートの遅かったチームは、すでにゴールしたチームと比べて悪条件を背負うことになってしまいました。しかし、これも競技。天候の変化も受け入れて精一杯走るしかありません。

そして14時過ぎ、ついに最後の出走車両がゴールを迎えます。

計測結果は順次、指定されたボードに掲載されます。ボード前では各チームの面々が、結果と順位に思い思いの表情を浮かべていました。以下、各グループカテゴリー上位3チームと燃費になります。

●グループⅠ(中学生クラス)

1位 芝学園技術工作部2号車 599.122 km/l
2位 あきる野市立東中学校 チーム 484.018 km/l
3位 東京都市大付属中高自動車部中学A 455.722 km/l

●グループⅡ(高校生クラス)

1位 千葉県立下総高等学校自動車部A 2297.053 km/l
2位 埼玉県立進修館高校 機械研究部B 1646.683 km/l
3位 矢板高等学校 機械技術研究部B 1512.306 km/l

●グループⅢ(大学・短大・高専・専門学校生クラス)

1位 長野高専Reginetta 1506.057 km/l
2位 長野高専Cygnus 1375.342 km/l
3位 ホンダ学園関東校 AQUILA 827.078 km/l

●グループⅣ(一般クラス)

1位 T-ONE 1573.233 km/l
2位 KAMISU BASE 1493.712 km/l
3位 チームベイント 1166.913 km/l

●ニューチャレンジクラス

1位 EM長野 Team Rising 452.004 km/l

●二輪車クラス

1位 東京電機大学理工学部自動車部弐輪 170.756 km/l
2位 群馬高専Project' E' 167.344 km/l
3位 Korn'sEcorunTeam 160.817 km/l

自動車競技は数多くありますが、その中でも特別なルールと雰囲気を持った「Hondaエコ マイレッジ チャレンジ」。今後は、8月4日(日)に熊本県のHSR九州で九州大会が、9月29日(日)にツインリンクもてぎで全国大会が開催される予定です。興味を持たれたら、足を運んではいかがでしょうか?

(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
Hondaエコマイレッジチャレンジ2019公式Webサイト
https://www.honda.co.jp/emc/

[ガズー編集部]

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