運転も操舵も難易度「高」。お台場で乗れる水陸両用バス「TOKYO NO KABA」の知られざる特徴

都内で生活をしていると、たまに街中で出合うことがある水陸両用バス。一体どこで乗れるのか?と調べてみたところ、東京・お台場でドライブ&クルーズの運行をしているという情報が。

今回はこの水陸両用バスを運航している、株式会社フジエクスプレス総務部の南条亜矢乃さんに、「TOKYO NO KABA」の特徴や魅力について聞きました。

新たな観光として、レインボーブリッジの下をくぐる水陸両用バスを企画!

「2017年に弊社を含めた数社で、お台場で新しい観光の試みはできないか? と検討している中、都内に観光案内を兼ねた水陸両用バスを運行しようという話になりました。そこで、共同で使える入水のためのスロープを設置し、都に許可を取りました」(南条さん)

そこで登場したのが「TOKYO NO KABA」です。でも、船体を見て、少し気になるのが“KABA3”という3の数字がついている点。もしかして、ほかにも「KABA」先輩がいるのかも!?

聞いてみたところ、確かに「KABA」「KABA2」という車両が存在し、2台とも山梨県の山中湖で運航されているのだそうです。これら先輩車両ももちろん観光客に大好評! 

「KABA」先輩たちの人気を受けて、お台場で「TOKYO NO KABA」(KABA三男坊)の運航が始まりました。

水陸両用車ならでは? 「KABA」シリーズのボディ制作

道路だけでなく海上も走るという、クルマと船両方の特徴を持つ水陸両用車には、クルマ用のナンバーと船舶用の登録が併記されています。こういったクルマは、どこの会社が作っているのでしょうか。

「KABA」は、車体の全パーツが海外製。でも、以降のモデルに関しては、ベース車両は日野自動車、船体部分は形原造船、海上運航用のマリ-ンエンジンはいすゞ自動車製だそうです。

大型車両で有名ないすゞですが、実はマリーンエンジンのメーカーとしても知られていて、漁船やモーターボートのエンジンも提供しています。動力はディーゼルエンジンで、そういった部分では、クルマと変わらないとのことでした。

淡水だけじゃない。海上を走るからこその気配り

ドライブ&クルーズのコースは、アクアシティお台場のバス停を出て、東京湾に入り、レインボーブリッジの下をくぐった後に再び出発地点へ戻るというルートです。

山中湖で運行している先輩2台との違いは、風景を含めたクルーズそのものを楽しむほかに、お台場ならではの観光案内を重視している点。乗車時間も長めになっています。

もうひとつの大きな違いは、「TOKYO NO KABA」は山中湖とは違い、淡水ではなく海水をクルーズしている点。この部分には、かなり注意を払っているそうです。

「海水は塩分があるので、さびやすいのです。洗車には、ほかの2台よりかなり気を配っています。海から出た後には必ず下部洗浄と放水で車体を洗いますし、メンテナンスにも手をかけています」(南条さん)

離水直後には、放水して車体を洗うのが定番。観客がいる車内には「KABAシャワー」とアナウンスされる
離水直後には、放水して車体を洗うのが定番。観客がいる車内には「KABAシャワー」とアナウンスされる

バスと船舶両方の運転技術が必要なので、かなりの習熟期間が必要!

クルマと船、ふたつの機能を持ち合わせているゆえに、ドライバーにはバスの運転免許のほかに小型船舶の免許も必要とされます。しかも、陸上のハンドルと海上の梶は別で、操舵用の梶は運転席の左側に設置されているため、技術習得はなかなか大変なのだそう。

「まず、陸上では車高がとても高くなるため、距離感に慣れる必要があります。また、タイヤにはサスペンションがついていないので、揺れへの配慮も必要です。海上に出るとハンドルでスクリュー駆動に切り替えるのですが、左側の梶を操作することになるので、かなり難易度が高いと運転手さんは話していますね」(南条さん)

運転手さんにも話を聞いたところ、海上では陸上のように、細かい方向転換ができないので、操舵にはかなり気を遣うのだそうです。しかも面舵・取梶の操作にも技量を要し、同乗しているガイドさんとお客さんを盛り上げつつ、動かすのは大変とのこと。しかし、入水などの場面でお客さんが喜ぶので、大きなやりがいもある、と話していました。

日野自動車製のハンドルの左側にはいすゞ製の船舶用梶が取り付けられており、入水・離水時に切り替える
日野自動車製のハンドルの左側にはいすゞ製の船舶用梶が取り付けられており、入水・離水時に切り替える

ちょっと変わった都内観光を体験したい人にオススメ!

平日には海外の観光客が多く、夏休み期間になると、国内のファミリー層の需要が増えるという「TOKYO NO KABA」。利用者の様子も聞いてみました。

「お客さまの反応が一番いいのは、やはり入水時ですね。特にお子さんには、楽しんでいただけると思います。また海外の方向けには、車内アナウンスの英語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語の同時通訳音声の貸し出しなども行っています。予約チケットは、電子マネー決算ができるのですが、海外にお客様のことを考えると、本当は当日チケットも電子マネー決算をしたいと考えています。これからの課題ですね」(南条さん)

ちなみに、海上では、それほど沖までは出ないため「船酔いが怖い」という方にも、安心して乗ってみて欲しいと話していました。

レインボーブリッジの真下まで行ける体験に加え、入水や離水直後、ディーゼルエンジンがタイヤ駆動からスクリュー駆動にかわる際、振動の違いが体感できる点も楽しいとのこと。ほかのクルマにはない体験ができるのが、大きな魅力のようです。

▼取材協力
株式会社フジエクスプレス
東京都港区芝浦4-20-47
https://www.fujiexpress.co.jp/

(取材・文:斎藤雅道 写真:斎藤雅道・フジエクスプレス 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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