事故多発交差点、ワースト1は福岡と宮崎! 高齢ドライバーに多い事故の傾向と対策

インフラの整備やクルマの安全性能の進化により、交通事故死者数は年々減少しています。しかし一方では、池袋の暴走事故や大津の園児死傷事故など、大変痛ましいニュースが後を絶ちません。

2017年のデータによると、交通事故の約54%は交差点および交差点付近で発生しています。では、事故が多発する交差点にはどのような特徴があるのでしょうか。

一般社団法人 日本損害保険協会は、毎年「全国交通事故多発交差点マップ」を公表しています。今回は、人身事故が多発している全国の交差点ワースト10とともに、交差点の特徴や事故のパターン、注意点などを紹介します。解説していただいたのは、同協会 防災・安全グループの篠﨑亮介さんです。

一般社団法人 日本損害保険協会 業務企画部 防災・安全グループ 篠﨑亮介さん
一般社団法人 日本損害保険協会 業務企画部 防災・安全グループ 篠﨑亮介さん

事故が多い交差点、1位は東京でも大阪でもない

――「全国交通事故多発交差点マップ」は、どういう目的で作成されているのでしょうか?

ドライバーへの注意喚起とともに、交差点での交通事故を減らすことを目的として、年1回、ホームページ上で公表しています。

お住まいの都道府県を選んでいただくと、事故多発ワースト5の交差点が表示されます。さらに各交差点名をクリックすると、交差点の特徴や通行状況、事故の被害状況、要因、対策など詳細を確認することができます。

一般社団法人 日本損害保険協会ホームページ「全国交通事故多発交差点マップ」より一部抜粋
一般社団法人 日本損害保険協会ホームページ「全国交通事故多発交差点マップ」より一部抜粋

――全国でもっとも多く事故が発生している交差点はどこですか?

下の表は、2017年の事故多発交差点ワースト10です。件数が同じ交差点もあるので、全部で14か所となっています。

人身事故多発交差点 事故件数ワースト10(2017年) 資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会
人身事故多発交差点 事故件数ワースト10(2017年) 資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会

――表を見るかぎり、東京や大阪など大都市に集中しているわけではなく、全国に分散していますね。事故が起きやすい交差点の特徴はありますか?

まず挙げられるのは、規模の大きな交差点ですね。全体で4車線以上、かつ交通量の多い幹線道路で事故が多発する傾向が強くなっています。

そのほか、細かく分析すると、

・矢印信号で進む先が複数あるなど、信号機が複雑でわかりにくい
・道路間に高速道路の橋脚があり、右折する際、対向車や歩行者が見えにくい

・近くにショッピングモールや商業施設があり、入ろうとするクルマによって恒常的に渋滞している

などの例がありました。

もっとも多い事故は「追突」で41%

――交差点での事故は、構造的な要因も大きいのですね。では右折、左折など事故の類型についてはいかがでしょうか?

交差点でよく発生している事故形態は、下記の3つです。

1.追突事故(41%)……信号待ちや急ブレーキで停止したクルマに、後続車が追突する

2.右折時事故(25%)……右折時に対向車線を直進してくるクルマやバイクなどと衝突、あるいは右折先の横断歩道にいる歩行者、自転車などと衝突する

3.左折時事故(11%)……左折時にバイクや自転車などを巻き込む、あるいは左折先の横断歩道にいる歩行者、自転車などと衝突する

※一般社団法人 日本損害保険協会が2008年から2014年までに公表した事故多発交差点1,236か所の分析結果より

交通事故と聞くと、一般的には「出会い頭」のイメージが強いかもしれません。しかし交差点事故においては、追突、右折、左折の3つで全体の8割を占めています。

「交差点事故防止 リーフレット」より一部抜粋  資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会
「交差点事故防止 リーフレット」より一部抜粋  資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会

――では、交差点で気をつけるべき点は?

まず、下り坂で交差点に進入する際はスピードが出やすくなるため、とくに注意が必要です。

高速道路の橋脚や歩道橋が交差点付近にある場合は、見通しが悪くなることがあります。また夜間は、店舗の看板やネオンサインなどの影響でまぶしくなって、まわりが見えにくくなる場合もあります。きちんと減速し、周囲をよく見て通行しましょう。

損保協会のホームページに、交差点通行時の安全度チェックリストを掲載しています。日ごろの運転を振り返りながら、チェックしてみてください。
http://www.sonpo.or.jp/efforts/reduction/kousaten/check/

「交差点事故防止 リーフレット」より一部抜粋  資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会
「交差点事故防止 リーフレット」より一部抜粋  資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会

高齢ドライバーによる事故の傾向と対策

――最近は、高齢ドライバーによる事故のニュースもよく見かけます。どういったパターンが多いのでしょうか?

一般的に、高齢ドライバーに多いパターンは出会い頭事故(約30%)となっています。また、出会い頭事故のうち約65%は、信号のない交差点で発生しています。
※参考:公益財団法人交通事故総合分析センター「イタルダインフォメーションNo.119」

まず見通しの悪い交差点では、車や歩行者に注意しながらすぐ停止できるような速度で徐行し、一時停止の標識があれば必ず停止しましょう。徐行中、前後左右の安全をきちんと確認することも大切です。

下記のページから「高齢者の交通事故注意喚起チラシ(PDF)」がダウンロードできますので、ご家族、親類に高齢ドライバーがいる方は、ぜひご活用ください。
http://www.sonpo.or.jp/news/publish/safety/traffic/senior/leaflet.html

「高齢者の交通事故注意喚起チラシ」より一部抜粋  資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会
「高齢者の交通事故注意喚起チラシ」より一部抜粋  資料提供:一般社団法人 日本損害保険協会

また、高齢ドライバーに限らず「自分は大丈夫だ」という運転能力への過信も、事故の原因の一つとして挙げられます。そこで当協会では、一般のドライバーや自転車運転者などを対象とした意識啓発動画「SHARE THE ROAD」を作成しました。こちらも合わせてご覧ください。

衝突被害軽減ブレーキなどにより、クルマの安全性は年々高まっています。しかし一方で、重大な交通事故がたびたび発生していることも事実です。

「全国交通事故多発交差点マップ」は、都道府県ごとに検索できます。お住まいの地域でどこの交差点が危険なのかチェックしつつ、日々の安全運転を心がけましょう。
http://www.sonpo.or.jp/efforts/reduction/kousaten/kousatenmap29/

(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<取材協力>
一般社団法人 日本損害保険協会
http://www.sonpo.or.jp/

[ガズー編集部]

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