SUPER GTの選手も愛用中! オリジナルヘルメットの製作現場へ行ってみた

プロのレーシングドライバーはみんなオリジナルのカラーリングが施されたヘルメットを被っていますよね。いろいろなこだわりを感じるヘルメットですが、どのようにして作られているのでしょうか。

今回は、九州で数多くの有名ドライバーのヘルメットを手がけている「サイドワインダーズ」の大石勝一さんに話を聞いてきました。

レースの現場からサポートする立場へ

今回お伺いしたのは九州で数多くの有名ドライバーのヘルメットを手がけている、サイドワインダーズの大石さんの工房です。
大石さんはその昔、バイクショップに勤めており、自身でもレース活動を行なっていたそう。そこで自分のバイクやヘルメットを塗装し始めたのが、今のペインターとしての第一歩だったそうです。

「徐々にいろんな選手のヘルメットのペイントなどを手がけるようになる中で、自分が走るよりも、サポートした選手が活躍してくれた方がうれしいと思うようになりました」(大石さん)

現在は選手としてではなく、ペインターとしての道を選び、今に至るのだそうです。

サイドワインダーズ大石さん
サイドワインダーズ大石さん

気になるヘルメットの製作工程をチェック!

個々のオリジナリティが際立つレース用のヘルメット。一般的な製作工程は、次のようになっています。

1, パソコンでデザイン画を作る
2, ラインやイラスト、スポンサーの文字やイラストの配置を決める
3, プロッターと呼ばれる機械でカッティングシートを切り出す
4, 実際のヘルメットに切り出したシートを貼り付け、位置を確認・修正する
5, マスキングして塗装→乾燥を繰り返す
6,
完成
 

まずはパソコンを使ってデザインを仕上げていく
まずはパソコンを使ってデザインを仕上げていく

どんなデザインにしたいかという、依頼方法もドライバーにより千差万別。プロのデザイナーにデザインを作ってもらってから持ち込む人もいれば、大石さんに「こんな感じのデザインをお願いします」と依頼する人も。

デザインは画面上の2次元で行うけど、実際のヘルメットは丸みを持つ3次元。どうやってデザイン通りに仕上げるかも頭を使うといいます。

さらに、現在は複雑な絵柄を使ったり、グラデーションにしたり、ラメやメッキなど様々な色合いや素材を組み合わせて塗るのが主流。どの順序で塗るのか、どの場所にマスキングをするのかを考えながら塗る必要があるため、5番目の工程が一番大変なのだそうです。

細かい部分のマスキングの剥離作業は集中して作業。失敗するとやり直しになる
細かい部分のマスキングの剥離作業は集中して作業。失敗するとやり直しになる

当然のことながら、デザインが複雑になればなるほど製作時間がかかります。時間をかける=コストもかかるため、大石さんはできるだけ短い時間で仕上げることを心掛けているとのこと。ほかに気を使っていることはあるのでしょうか。

「塗料をいっぱい使うと、それだけヘルメットも重くなります。できるだけ、軽量化しながら塗装するように意識していますね。なにより、塗装の工程が増えれば、乾燥やマスキングにも時間がかかってしまいます」(大石さん)

当然“時短を心掛ける”とはいっても、手を抜くわけではありません。そこは職人。時短を心掛けながら、最大限によい仕上がりにするために努力を惜しまない。まさに職人です。

ブースでペイントする様子を再現してもらった
ブースでペイントする様子を再現してもらった

また、スポンサーの意匠を使うときはスポンサーの許諾確認の時間が必要となります。レースに必要なバイザーや無線など、ヘルメット装備品の装着が必要な場合も多々あるのだとか。

それらの配送やセッティングにかかる時間も計算に入れて作業しているため、時間のやりくりも製作上の大事な要素なのだそうです。

ギターやマイクスタンドなど、塗れるものなら何でも塗る。「今後は誰もやっていないようなペイントや技術を盛り込んだものを手がけてみたい」とも話していた
ギターやマイクスタンドなど、塗れるものなら何でも塗る。「今後は誰もやっていないようなペイントや技術を盛り込んだものを手がけてみたい」とも話していた

SUPER GTで実際にオリジナルヘルメットを使っているドライバーたち

SUPER GTで活躍するドライバーも、サイドワインダーズが担当したヘルメットを使っています。そこで、大石さんとの関係やデザインに対する思いを聞いてきました。

・60号車 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3 吉本大樹選手

「大石さんとの付き合いはもう10年以上になります。このヘルメットの左右には龍や虎が描かれていますが、これは大石さんが勝手に入れてきました(笑)。最初は驚きましたが、今は気に入っています。今回のヘルメットは細かい結晶を入れてもらいました。湿度や温度が合わないとこの結晶が出ないため、塗るのが大変だったようです。いつも新しいアイデアや技術を取り入れてくれるので信頼してお願いしています」(吉本選手)

・88号車 マネパ ランボルギーニ GT3 小暮卓史選手

「サイドワインダーズとは、かれこれ15年くらいの付き合いになるかもしれません。デザインの変更はなく、少しずつ色合いを変えたり、ラメやゴールドなどを入れてもらったりしています。動きのあるデザインを入れて欲しいため、頭頂部はタービンをイメージしたデザインになっています」(小暮選手)

・88号車 マネパ ランボルギーニ GT3 元嶋佑弥選手

「同じ福岡ということでレーシングカートに乗っているときに、自分から『塗ってください』とお願いしに行ったのがきっかけです。自分でイメージ図を作って大石さんにブラッシュアップしてもらい、デザインしてもらっていました。普段は蛍光イエローを中心にしているのですが、地元オートポリス用に今回黒のマットをベースにしたものも新たに作ってもらったんです。シックでとても気に入っています」(元嶋選手

・52号車 埼玉トヨペットGB マークX MC 脇薫一選手

「大石さんとは、もう15年近くの付き合いになると思います。いつもグラフィックデザイナーにデザインをオーダーして、サイドワインダーズでヘルメットに塗ってもらうという流れですね。デザインのストックはたくさん持っているので、今まで同じものはひとつとしてないんじゃないかな。それに、ヘルメットは『この人にプレゼントしたい』という思いでデザインしたりするので、ほぼ誰かにプレゼントしているんですよ」(脇選手)

・52号車 埼玉トヨペットGB マークX MC 吉田広樹選手

「レース活動を開始したときに服部尚貴さんの『TeamNAOKI』で走らせてもらったことが縁となり、サイドワインダーズでヘルメットを塗ってもらっています。デザインのベースは服部さんと同じですけど、ラインを増やしたりしてエッジを効かせたりしているんですよ。年ごとに、少しずつ色を変更したり、メッキやマットに変えたりしながら制作をお願いしています」(吉田選手)

・10号車 GAINER TANAX triple a GT-R 星野一樹選手

「サイドワインダーズとは10年ぐらい付き合っています。父親のヘルメットのデザインをベースに、細かい部分を変えながら塗ってもらっています。大石さんと相談しながら、今回はイエロー、星、ラインなどを組み合わせて塗ってもらいました。今までのなかでもかなりお気に入りのヘルメットになっています。いつかは父親と同じデザインにしてみたいですね」(星野選手)

ドライバーのみなさんがヘルメットにこだわるからこそ、作り手側もこだわりをもって作る。作り手がこだわってくれるからこそ、ドライバーもこだわる。そんな相互関係が垣間見えてきました。

今度レースを見るときは、クルマだけでなくヘルメットに注目してみるのも面白いかもしれませんね。

(取材・文・写真:雪岡直樹  編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<取材協力>
サイドワインダーズ
https://www.facebook.com/Custompaintsws/

[ガズー編集部]

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