ロッキー&ライズ登場で振り返る、ダイハツとトヨタのコンパクトSUV

ダイハツが培ってきたコンパクトカーやコンパクトSUVのノウハウを注ぎ込んだ、渾身の新作「ロッキー」。姉妹車のトヨタ「ライズ」とともに高い評価を受け、順調な滑り出しを見せています。

ダイハツからトヨタへOEMは、ロッキーとライズが初めてではありません。両社の関わりは古く、これまでに何台もの車種を互いに供給しあっています。ここではロッキーとライズに繋がった、コンパクトRVやコンパクトSUVを中心に振り返ります。

OEMの元祖? パブリカとコンソルテ

ダイハツとトヨタの深い関わり合いは、1967年11月に結ばれた業務提携より始まります。この提携は三和銀行の提案により実現したもので、自動車産業の国際競争力を高めることを目的として結ばれました。

上の画像がパブリカ、下がコンソルテ・ベルリーナ。ダイハツとトヨタ間のOEM。最初はダイハツがOEM供給を受けることで始まった
上の画像がパブリカ、下がコンソルテ・ベルリーナ。ダイハツとトヨタ間のOEM。最初はダイハツがOEM供給を受けることで始まった

1969年、ダイハツはトヨタの2代目「パプリカ」のボディに、自社「コンパーノ」のエンジンを搭載した「コンソルテ・ベルリーナ」を発売。1973年にトヨタ「パプリカ・スターレット」をベースとした「コンソルテ」を発売します。またコンソルテ4ドアモデルの後継として1974年に発売された「シャルマン」は、トヨタの2代目「カローラ」をベースとしていました。コンソルテとシャルマンはOEMのハシリとされています。

ラガー(タフト)とブリザード

1970年まで、本格クロスカントリーといえばトヨタ「ランドクルーザー」、日産「パトロール」、そして三菱「ジープ」といった比較的、大きなクルマが中心でした。そこにスズキの「ジムニー」が登場します。軽自動車ならではの利便性と経済性、そして大型クロスカントリーに引けを取らない走破性を持ち、大いに話題となりました。

そこにダイハツは、ランドクルーザーら大型クロスカントリー4WDとジムニーの間を埋めるべく、1974年に「タフト」を販売します。

ロッキーに続くダイハツの4WDは、クロスカントリーのタフトが出発点
ロッキーに続くダイハツの4WDは、クロスカントリーのタフトが出発点

当初は1.0リットルという排気量の小ささにより苦戦したものの、パワーのあるエンジンを搭載したモデルを次々と打ち出し、またクロスカントリーの人気の高まりという追い風もあって、次第に人気を博します。

1980年、ダイハツはトヨタにタフトのOEM供給を開始。トヨタ製ディーゼルエンジンを搭載し、「ブリザード」という名称でトヨタビスタ店と沖縄トヨタより販売されます。ランドクルーザーの下のクラスを受け持つ弟分というポジションでした。

トヨタビスタ店の開始は1980年。当初、ブリザードは目玉商品の一台に数えられた
トヨタビスタ店の開始は1980年。当初、ブリザードは目玉商品の一台に数えられた

1984年、タフトはフルモデルチェンジを行い、名称を「ラガー」に変更。ボディサイズは一回り大きくなり、スタイルは同時期に発売されていた他社のクロスカントリーと比べても遜色のない、精練されたものへと変わります。同時にブリザードも2代目にモデルチェンジを行い、ラガーのOEMを継承。トヨタ製のディーゼルエンジンを搭載し、後にターボモデルを追加します。

ラガーはクロスカントリーとして優秀な足回りと、2.8リットルディーゼルエンジンを搭載して登場
ラガーはクロスカントリーとして優秀な足回りと、2.8リットルディーゼルエンジンを搭載して登場

1980年代後半より起こったクロカンブームにより、好調な売れ行きを見せたラガーとブリザード。しかし、1990年代中頃となってブームは下火となり、売れ線も本格的な性能を持つクロスカントリーから快適な乗り心地を持ったSUVへと変わります。1994年にブリザードは販売を終了。3年後の1997年、日本国内でのラガーの販売は終了します(海外では需要があったため、生産は引き続き行われていました)。

コンパクトに回帰、テリオスとキャミ

1990年、ダイハツは小型クロスカントリー4WDの「ロッキー」を発表。しかし、クロスカントリー色を強く打ち出したスタイルにより販売で苦戦します。そして登場したのが、軽快で都会的なイメージを持たせたコンパクトSUV「テリオス」です。1997年のことでした。

テリオスには全長・全幅を軽自動車サイズに縮小した姉妹車、「テリオス キッド」も登場
テリオスには全長・全幅を軽自動車サイズに縮小した姉妹車、「テリオス キッド」も登場

当初はNAの4WDモデルのみでしたが、マイナーチェンジを機にFRモデルとターボモデルをラインナップ。トップモデルとなる4WDターボモデルは140psのパワーにメカニカルセンターデフロック付き4WDを組み合わせ、本格クロスカントリーに劣らぬ性能が奢られます。ダイハツの強いこだわりが感じられるモデルでした。

一方のトヨタからは、1994年に「v」というコンセプトの「RAV4」がデビューし、ヒットモデルに。そして、かつてランドクルーザーの弟分をブリザードが務めたように、RAV4の下のクラスを受け持つ弟分として、1999年にテリオスのOEM「キャミ」がトヨペットより発売され、狙い通りに人気を博しました。

2006年、テリオスは「ビーゴ」を後継として、販売を終了。同じくしてキャミも販売を終了し、ビーゴのOEMである「ラッシュ」に受け皿を託します。

ベストサイズのコンパクトSUV、ビーゴとラッシュ

2006年1月、ダイハツのビーゴとトヨタのラッシュは同時に発売を開始します。ビーゴは“B”eと“Go”という英語から用いられた名称で、「Be(ある、いる)からGo(出る、行く)へ」という積極的への変化を表しています。SUVの楽しさと走破性、コンパクトの気軽さと使い勝手、ワゴンの機能性を高い次元で融合させた、ベストサイズのコンパクトSUVを目指し開発されたそうです。

テリオスの後継モデルとして登場した「ビーゴ」。トヨタ「ラッシュ」としても販売された
テリオスの後継モデルとして登場した「ビーゴ」。トヨタ「ラッシュ」としても販売された

テリオスと同様にエンジンを縦置きし、当初よりFRモデルとフルタイム4WDモデルをラインナップ。マイナーチェンジや幾度かの一部改良が施されましたが、標準の109psで十分との判断かターボモデルは追加されませんでした。

ビーゴとラッシュとも、2014年にFR(2WD)が販売終了。2016年に4WDも販売を終了します。ビーゴには後継車が作られなかったため、タフトから始まったダイハツのコンパクトSUV(コンパクトクロスカントリー)の系譜は幕を下ろします。これによりラガーから始まったトヨタとのコンパクトSUVのOEMも終了……したかと思われましたが、2019年にロッキーとライズが発表されたのは、ご存じの通り。

トヨタ「ライズ」。ダイハツ「ロッキー」とはフロントまわりのデザインやグレードなどが異なる
トヨタ「ライズ」。ダイハツ「ロッキー」とはフロントまわりのデザインやグレードなどが異なる

3年余りの空白期間を経て、コンパクトSUVに対する姿勢と熱意を、ダイハツはあらためて打ち出しました。トヨタはライズを迎えたことで、ランドクルーザー(プラド)、ハイラックス、ハリアー、RAV4、C-HRと、あらゆるランクにSUVのラインナップを構築したことになります。

ターゲット層を絞ることで競合を避けたロッキーとライズ。これからの2台の動向と戦略は、コンパクトSUVを有する他社も気になるところでしょう。

(文:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
トヨタ ライズ
https://toyota.jp/raize/
ダイハツ ロッキー
https://www.daihatsu.co.jp/lineup/rocky/

[ガズー編集部]

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