「スプレー式タイヤチェーン」はどんなときに使える? グリップ力や耐久性は?

気象庁の長期予報によれば、今シーズンは暖冬予想。暖かければ雪は降らない? と思いきや、そうではないようです。最近はゲリラ豪雨も頻発しており、それが大気中の湿度を上げて、降雪に影響を与える可能性があるのだと言います。

これは、非降雪地帯に住むドライバーにとっては頭の痛い問題です。雪が降らないと思って出掛けたら、突然の積雪で立ち往生……といった事態にも陥りかねません。

もちろん、最初からスタッドレスタイヤを履いていれば問題ありません。思わぬ急な降雪など、いざという時の緊急用としてご紹介したいのが、最近人気を呼んでいるスプレー式タイヤチェーンです。

純正装着されていた例もある

スプレー式タイヤチェーンは、タイヤのトレッド面に特殊な液体をスプレーすることで、雪道や凍結道路でのグリップ力が増すという仕組み。

液体には粘着性の樹脂が含まれており、これをスプレーで吹き付けることでタイヤの表面を細かくざらつかせて、摩擦を高めます。このアイディアそのものは結構古く、1960年代のシボレーなどで、オプションとして採用されていたようです。タイヤハウスの内側にスプレー缶を仕組んでおき、必要な時に運転席から操作してタイヤの表面へ噴射するものでした。

現在、販売されている製品も、考え方は一緒です。使用方法は、タイヤ表面に向けてスプレーするだけと、とても簡単。

ただし、使った経験から言えば、スプレーをプッシュする手に液体が回り込んで、ひどいベタつきが発生します。手袋なしでスプレーすると、とんでもないことになるので注意してください。さらに言えば、スプレーする際に、着衣に降りかかる可能性も考慮に入れておく必要があるでしょう。

では、スプレー式タイヤチェーンの効果はどのぐらいあるのでしょうか? 今から1年ほど前の2018年12月初頭、その効果をスケート場内で試してきました。

グリップ力や制動力の向上を確認

まずは確認のため、夏タイヤで走行します。速度を10km/h 程度に抑えて走りましたが、この時は発進時に空転が多く、コーナーでは簡単に横滑りして、怖くて走れない状態でした。

次に、その夏タイヤ4輪すべてにスプレー式チェーンを施し、同じ条件で走ってみました。

すると驚いたことに、発進時もジワッとグリップが効いて、比較的スムーズに発進することができたのです。そのままコーナーへ進んでも、ほとんど横滑りすることなく通過することができました。

走った感想としては「あ、効いているなぁ」と実感できるほど、グリップ力が得られた印象です。実際に10km/hで急制動して実測したところ、スプレーしたタイヤは、何もしなかった夏タイヤに比べて、80cmほど短く停止することができました。

速度をあまり上げずに走っている分には、一定の効果は期待できるかもしれません。ただ心配なのは、その効果がいつまで続くのかでしょう。取扱説明書には「70kmほど使える」と記載してありましたが、走行していくうちに徐々に効果が低くなっていくのは間違いありません。

スプレー式タイヤチェーンはどう使うもの?

この状況から言えるのは、スプレー式タイヤチェーンは、冬タイヤ規制が出た時に対応できるものではなく、あくまで緊急避難的に一時利用するためのものであること。トランクにこのスプレーを1本常備しておき、突然の雪に見舞われた際に使うものだと言えるでしょう。

もうひとつ忘れてはいけないのは、季節が夏に向かう時は必ずこのスプレーをクルマから下ろしておくこと。夏場、車内のスプレー缶を置いておくと、過熱により爆発する心配もあるからです。

スプレー式タイヤチェーンは決して万能ではありませんが、メリットデメリットを頭に入れておき、クルマに常備しておくと、いざというとき役に立つかもしれません。

(文:会田肇 写真:木谷宗義 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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