勘違いに注意! 新しい「チェーン規制」の標識、その正しい内容を導入の狙いとともに解説

2018年12月14日(金)から、国内に新しい標識が導入されました。それが「タイヤチェーンを取り付けていない車両通行止め」です。(上の写真が標識、画像:国土交通省)

読んで字のごとく「雪用のタイヤチェーンを装着していないクルマは走ってはいけない」という標識で、短縮して「チェーン規制」と呼びます。この標識がある区間では、スタッドレスタイヤ装着車であっても、チェーンを装着しなければなりません。もちろん4WDであろうとも、トラックであろうとも同様です。

「スタッドレスタイヤでもチェーン規制の対象にするのはおかしい」と言う人もいますが、ここには大きな誤解があります。注意してほしいのは、新しい「チェーン規制」の標識は、“特別なとき”に“特別な場所”だけで使われるということ。常設されるものではありませんし、全国どこでもというわけでもありません。

“特別な場所”は全国で13か所のみ

“特別なとき”というのは、大雪特別警報や大雪に対する緊急発表など、異例な降雪があったとき。そして“特別な場所”とは、過去に雪による立ち往生や通行止めが起こった場所で、タイヤチェーンを着脱できる場所や通行止めの最中に待機できる場所がある区間。現在(平成30年度)のところは、全国で以下の13か所の区間が想定されています。

<一般道>
●山形県
国道112号 月山道路 (西川町月山沢~鶴岡市上名川) 26.7km
●山梨県・静岡県
国道138号 山中湖・須走 (山梨県山中湖村平野~静岡県小山町須走字御登口) 8.2km
●新潟県
国道7号  大須戸~上大鳥 (村上市大須戸~村上市上大鳥) 15.3km
●福井県
国道8号 石川県境~坂井市 (あわら市熊坂~あわら市笹岡) 3.2km
●広島県・島根県
国道54号 赤名峠 (広島県三次市布野町横谷~島根県飯南町上赤名) 2.5km
●愛媛県
国道56号 鳥坂峠 (西予市宇和町~大洲市北只) 7.0km

<高速道路>
●新潟県・長野県
上信越道 「信濃町IC~新井PA(上り線)」 24.5km
●山梨県
中央道 「須玉IC~長坂IC」 8.7km
●長野県
中央道 「飯田山本IC~園原IC」 9.6km
●石川県・福井県
北陸道 「丸岡IC~加賀IC」 17.8km
●福井県・滋賀県
北陸道 「木之本IC~今庄IC」 44.7km
●岡山県・鳥取県
米子道 「湯原IC~江府IC」 33.3km
●広島県・島根県
浜田道 「大朝IC~旭IC」 26.6km

つまり、大雪によって立ち往生するクルマが発生しそうなときと場所に限って、タイヤチェーン装着車だけを通行させるのが「チェーン規制」です。決して、「冬の間中、雪が降ったら、どこであろうともチェーンが必要」というものではありません。

新しい「チェーン規制」の狙いは通行止め時間の短縮

そもそも、「チェーン規制」という新しい標識の導入には、理由がありました。それが昨今、増えている大雪による長時間の通行止めへの対策です。

振り返れば、2018年も数多くの通行止めや立ち往生が発生しています。1月には、大雪で東京の首都高速の約7割が通行止めになり、全面通行再開まで4日間もかかりました。同じように1月14日(日)に名古屋高速でも22時間におよぶ全線通行止めが、23日(火)の鳥取道と周辺でも、約300台にもなる大規模な立ち往生が発生。さらに2月上旬には、福井県と石川県を走る国道8号で3日間にわたって通行止めに。このときに立ち往生したクルマは最大で約1500台にもなっていたのです。

近年の日本は、年間の降雪量は横ばいですが、24時間の降雪量の多い日が増加。また、全国の3割以上の地域で、過去10年の最深積雪(もっとも多く雪が積もった量)の観測史上最高を更新しています。つまり、ドカッと短い時間で降る大雪が増えているのです。

雪が深くなれば、スタッドレスタイヤ装着車であっても、縦断勾配5%を超える区間では立ち往生する可能性が高まります。つまり、スタッドレスタイヤだけでは不十分という見方もあり、それが、今回の「チェーン規制」につながったのです。

もちろん、立ち往生や通行止めを阻止するには、道路の除雪作業が重要となります。しかし、立ち往生する車両が発生すると、除雪作業が遅れることになり、それがさらなる立ち往生車を生み出すことに。その負のスパイラルを防止するためにも、“特別な大雪のとき”に、“特別に立ち往生しやすい場所”に限って「チェーン規制」を実施して、立ち往生車を減らし、通行止めの時間を短縮しようというわけです。

ちなみに、国土交通省は「大雪が予想される2~3日前から通行止め実施の可能性がある旨について事前広報を行い、不要不急の外出を控えることや広域迂回、ならびに物流車両の運行計画の見直しなどについて、地域住民や道路利用者に周知してまいります」としています。正直、雪の降る中でのチェーン装着作業は、楽なものではありません。通行止めの可能性があるときは、危険なエリアに近づかないのが一番。天気予報で「大雪の可能性がある」と聞いたときは、道路に関するアナウンスもチェックしてみるようにしてみましょう。

(文:鈴木ケンイチ 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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