「Aライセンス」と「Bライセンス」は何が違う? モータースポーツライセンスの基本

レースやラリーといったモータースポーツに挑戦しようとするとき、必要になってくるのが「モータースポーツライセンス」です。クルマの運転をするために「運転免許証」が必要なように、モータースポーツにも専用のライセンスが用意されています。ここでは、「モータースポーツライセンス」はどんなものなのか? そして、どんな種類があるのかを説明します。

競技を安全に楽しむための仕組み

クルマの運転に運転免許証が必要なのは、クルマを安全に走らせるためには、専門の知識と技能が求められるからです。同じように、モータースポーツという競技を安全に行うためには、そのための知識と技能を有していることが求められます。そうした知識と技能を持つことを証明するのがライセンスです。

モータースポーツという競技には「公式戦」と呼ばれるものと、そうでないものがあります。公式戦は、世界的なモータースポーツのルールの枠組みに含まれるもので、日本では「JAF(日本自動車連盟)」が統括しています。人気の「スーパーGT」や「全日本スーパーフォーミュラー選手権」「全日本ラリー選手権」「スーパー耐久シリーズ」といったイベントは、すべてJAFが公式に認めた競技です。

スーパーGTは、GTカーをベースにしたレーシングカーで行われるレース(写真:トヨタ自動車)
スーパーGTは、GTカーをベースにしたレーシングカーで行われるレース(写真:トヨタ自動車)

公式戦に参加するには、JAFが発行する「モータースポーツライセンス」を取得することが必須となります。JAFは、ロードサービスだけでなく、こうした業務も行っているんですね。

一方、JAFが認めていないそれ以外のイベントは、いわゆる「草レース」と呼ばれるものになり、JAFのライセンスは必要ありません。

ちなみにJAFも参加する世界的なモータースポーツの枠組みとは、「F1」や「WRC(世界ラリー選手権)」なども含まれるもので、その統括は、FIA(Federation Internationale del' Automobile:国際自動車連盟)が行っています。

さまざまな国際ルールはFIAが定め、世界各国の四輪モータースポーツ統轄団体(一つの国に一つの団体)は、FIAの方針に従っているというのが現状です。また、オートバイに関してはFIM(国際モーターサイクリズム連盟)という別の組織があり、日本ではMFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)が、オートバイの競技を統括しています。

ライセンスはドライバーだけでなく審判用もある

モータースポーツのためのライセンスをJAFは発行していますが、その種類は一つではありません。まず、大きくわけて「4輪自動車競技」用と、「カート競技」用があり、いわゆる普通のクルマのモータースポーツは「4輪自動車競技」用のライセンスが必要になります。

そして、それぞれのライセンスもひとつではなく、競技への関わり方に応じて、「参加者(エントラント)ライセンス」「運転者(ドライバー)ライセンス」「審判員(オフィシャル)ライセンス」の3種類が用意されているのです。

参加者(エントラント)ライセンスとは、チーム監督になるためのライセンスです。また、審判員(オフィシャル)ライセンスには、モータースポーツの現場でコースの監視(コース)、競技のタイムを記録(時計)、車両の検査(技術)をするための3種類があります。

ドライバーのライセンスは国内用と国際用がある

運転車(ドライバー)ライセンスにも、さらに細かな区分があります。国内用と国際用です。初心者で「4輪自動車競技」用といえば、国内用のライセンスを取得するところからスタートとなります。

国内用のライセンスには「Aライセンス」と「Bライセンス」の2種類があります。

「Aライセンス」は、複数の車両が同時に走行するレースを行うためのもの。「Bライセンス」は、1台ずつ走行するジムカーナやラリーといった競技に参加するためのもの。そして、「Aライセンス」は「Bライセンス」を持っていることが条件になるため、最初に「Bライセンス」から取得することになります。

JAFが発行する「Aライセンス」。取得すると毎年、JAFから新しいライセンスカードが届けられる。もちろん年会費は必要(筆者撮影)
JAFが発行する「Aライセンス」。取得すると毎年、JAFから新しいライセンスカードが届けられる。もちろん年会費は必要(筆者撮影)

逆に言えば、初心者がモータースポーツに初めて挑戦するのであれば、「Bライセンス」の取得が必須。また、国内でモータースポーツを楽しむなら、「Aライセンス」まで取得していれば、ほとんど困ることはないでしょう。

しかし、モータースポーツを、より高度に、より国際的に挑戦するには、国際ライセンスを取得する必要があります。

国際ライセンスには、レース用の「国際Cライセンス」「国際Bライセンス」「国際Aライセンス」「スーパーライセンス」と、ラリー用の「国際Rライセンス」、さらに「国際ドラッグライセンス」や「国際ソーラーカーライセンス」が存在しています。

国内の「Bライセンス」は座学だけで取得可能

モータースポーツの入り口となる国内の「Bライセンス」は、全国で開催されている「国内Bライセンス講習会」へ参加することで、取得が可能です。

講習会において、ルールなどの基本を座学で学び、その後にJAFに申請すれば、「Bライセンス」を取得することができます。

ライセンス取得時の基本となる、JAF発行の資料
ライセンス取得時の基本となる、JAF発行の資料

講習会への参加の条件は、「普通自動車免許証」を持っていて、「JAF個人会員であること」が条件。JAFへの加入は、ライセンス申請時でもかまいません。

「Bライセンス」の取得は、運転テクニックの上手下手ではなく、安全に走るためのルールを知っていることがポイントとなります。ですから、モータースポーツの初心者でも、講習会でしっかりとルールを学べば、ほとんどの人がライセンスを取得することができるのです。

モータースポーツに興味があれば、「Bライセンス」取得を目指してみてはいかがでしょうか。さらに「運転が得意ではないけれど、モータースポーツに関わりたい」というのであれば、審判として参加するという方法もあります。

(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
JAFモータースポーツ公式サイト
http://jaf-sports.jp/

[ガズー編集部]

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