昭和の雰囲気を残す全国のドライブインを巡る。「懐かしの昭和ドライブイン」著者・越野弘之さんに聞く(前編)

ドライブ中に立ち寄る憩いの場も、時代とともに移り変わっています。今は、高速道路では趣向を凝らした店舗や身近なコンビニエンスストアが出店しているサービスエリア、一般道なら地元の特産物が並んだり、郷土料理が食べられたりする道の駅などが主流でしょうか。

昭和の高度成長期には、ドライブインが多く立ち並び、長距離トラックのドライバーやマイカーを手に入れた家族で賑わっていました。現在、姿を消しつつある「昭和ドライブイン」について『懐かしの昭和ドライブイン』の著者である越野弘之さんに話を聞きました。

レトロ自販機巡りからドライブイン探訪へ

『懐かしの昭和ドライブイン』は、越野さんが実際に足を運んだ全国各地の昭和から続くドライブインを紹介した本です。中には、既に閉店してしまった店も含まれますが、昭和の時代になぜドライブインが急増したのか、どう利用されていたのか、そんなドライブインが次第に姿を消していく理由などとともにまとめられています。

越野弘之さん著『懐かしの昭和ドライブイン』 (株式会社グラフィック社刊)
越野弘之さん著『懐かしの昭和ドライブイン』 (株式会社グラフィック社刊)

――越野さんは、なぜ昭和ドライブインを訪ねて回ろうと思ったのですか?

2011年の11月、長野県にある戸倉上山田温泉への旅行の帰り道、埼玉県内の国道17号線沿いにある「うどんの自動販売機(自販機)」の紹介をするYouTubeの動画を見たのをふと思い出して立ち寄ってみたんです。そこは「オートレストラン鉄剣タロー」というところで、うどんの他にもハンバーガー、トーストサンドの自販機がありました。それがいわゆるレトロ自販機との出会いでした。

埼玉県行田市のオートレストラン鉄剣タロー
埼玉県行田市のオートレストラン鉄剣タロー

実際には、古くてあまりきれいには見えなかった自販機に怯み何も食べず、写真だけ撮ってきました。しかし、帰宅後もレトロ自販機のことが頭から離れず、ネットで調べはじめ、その後3ヶ月ほどで日本全国に残っていたレトロ自販機の7割くらいを一気に訪問して味わいました。

自販機から熱々で提供される
自販機から熱々で提供される

そうして、日本全国のレトロ自販機設置店を制覇し、そんな旅の中でレトロ自販機のないドライブインにも昭和の雰囲気が残る渋い店があるなと思い始め、今度はドライブインを中心に訪ね始めました。

日本全国400店舗以上のドライブインを訪問

――これまでどのくらいの数のドライブインを巡ってきましたか?

私が個人的に定義している昭和ドライブインとは、建物が当時の姿で内外装ともそのままであるか一部改装されていても昭和の雰囲気が残るものとしています。それらだけでも約200店舗は回りました。

その他、レトロ自販機などがあるコインスナック、オートレストランなどが約100店舗。平成以降に改築されているなど、昭和を感じさせないドライブインも100店舗以上は訪れていると思います。これらの中には閉店していたり、廃墟になって建物だけ残ったりしているものも含んでいます。

――ドライブインの情報はどのようにリサーチしているのでしょう?

ネットで「ドライブイン ○○県」で検索したり、Twitterなどで探したりしています。恥ずかしながらごく最近知ったのですが、グーグルマップで「ドライブイン」と検索する方法もありました。検索をして気になったお店にはすぐ足を運びます。でも、遠方の場合はすぐというわけにはいかないので、2年に1度の割合で日本全国を回る旅をしているので、その途中で訪問しています。

通りがかりにたまたまドライブインを見つけることもあります。見つけるコツは一般道で移動すること。なるべくバイパスも使わず、いわゆる旧道を走ります。

岡山県備前市大阪屋のメニュー豊富なディスプレイ
岡山県備前市大阪屋のメニュー豊富なディスプレイ

昭和の雰囲気、人とのふれあい……昭和ドライブインの魅力

――越野さんにとって昭和ドライブインの魅力とは?

昭和の時代の雰囲気、メニュー、流行、建物、備品などがそのままタイムスリップしたかのように、この令和の時代にも残っていること。数十年お店を続けてらっしゃる店主や女将さんは優しくて、人情味に溢れているところ。近い将来確実に失われてしまうであろう昭和の雰囲気が今ならまだ味わうことができるところ、でしょうか。

愛媛県伊方町三崎ドライブインのおばあちゃん
愛媛県伊方町三崎ドライブインのおばあちゃん

――昭和ドライブインを回っていてどのようなことが印象的ですか。

「こういう古いドライブインが好きで東京から来たんですけど」と声をかけると、店主がわざわざ話をしに来てくれたり、お土産を持たせてくれたりするんです。
だから、本を書くための特別な取材やアポイントメントを取ったことがありません。取材をお願いするまでもなく、町の歴史や近辺の道路の歴史、駐車場がいっぱいになって行列や渋滞が起きたなど、ドライブインが賑わった昭和の頃の様子を進んでお話してくれます。

地元の人ならではの地域の見どころや旬の食べ物、花がきれいなシーズンなどの話を聞くだけでも旅が豊かになりますね。


懐かしい時代にタイムスリップしたかのような気分を味わえる昭和ドライブイン。後編では昭和ドライブインの楽しみ方などを伺います。

<取材協力・画像提供>
kossy昭和スポット研究所
https://www.youtube.com/channel/UCLx3LXnWAAML6e59hhW3uKw
昭和スポット研究所kossy Twitterアカウント
@jihankimania

(取材・文:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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