レースでヘルメットを装着する理由は? 2輪用とは違うの?
原付きも含めて2輪車は、公道を走るときもヘルメットを装着します。しかし、クルマ(4輪車)の場合、モータースポーツ競技への参加や、サーキット走行を楽しむ際など、危険がともなう時には、レース運営団体やサーキットなどのルールによってヘルメットを被ることが義務付けられています。
もちろん、ヘルメットを装着するのは安全のためですが、今回はモータースポーツ競技で義務付けられている理由や、2輪用と4輪用のヘルメットに違いはあるのかなど、アライヘルメット国内営業部の上幸一さんに聞いてみました。
―4輪競技でヘルメットが必要とされる理由はなんでしょうか?
一番の理由は、クラッシュ時にドライバーの頭部を保護するためです。レーシングカーは、一般車と異なりドライバーを守るための骨組みである「ロールケージ」が、車内に張り巡らされています。これは激しい接触でもドライバーが生存できる空間を潰さないようにするためのものですが、クラッシュ時にドライバーの頭部が、ロールケージなどに接触してしまうことがあります。その衝撃から守るためにヘルメットは必要です。
- ロールゲージが張り巡らされたレーシングカーの車内(写真:PIXTA)
そしてもう一つ、大切な理由があります。それは火災です。モータースポーツの世界では、アクシデントで車両火災が起きることがあります。車内に火が回った時、ヘルメットはドライバーの頭部を熱や延焼から守る役割もあるのです。
―どのような点が2輪用ヘルメットとの違うのですか?
一番は、先ほどお話した火災に関する部分が大きいですね。4輪用ヘルメットの方が、より耐火性能が優れています。4輪の方が、ドライバーが炎に晒される可能性が高いからです。2輪では、車両火災が起きてもすぐにその場を離れられますが、4輪の場合はそうはいきません。
炎が立ち込める車内から「脱出」しなければいけないこともあります。そのようなシチュエーションで、ドライバーが火傷をしないように開発をしています。具体的には、ヘルメットの内装素材を耐火性に優れたものにしていることや、開口部やベンチレーションの穴が小さく作られていることが挙げられます。
- 4輪用ヘルメットの内装
- ヘルメットの耐火性をテストしている様子
―ヘルメットは時代によって変化しているのでしょうか?
衝撃吸収性において世界で最も厳しいと言われている安全基準である「スネル規格」というものがあります。規格は5年ごと見直され、その都度、厳しくなってきているので、ドライバーの頭部を保護する機能は着実に進化しています。弊社の製品はこの規格をクリアするように開発しています。また4輪のモータースポーツ競技での安全については、ヘルメットとあわせて近年大きく進化していることとして、「HANS(ハンズ)」をはじめとしたクラッシュ時に首を保護する装備が登場しています。ヘルメットと、この首を保護する装備を一緒に装着することで、激しい衝撃でも首が伸びて大きなダメージを受けることが少なくなりました。弊社でも、これらの基準や装備に対応したヘルメットを作っています。
- アライヘルメットの4輪用ヘルメット「GP-6」
ヘルメットにも注目してみよう!
今回の取材では、ヘルメットがさまざまな危険に対応できるように開発が進められているお話を聞くことができました。レーシングドライバーは、ヘルメットを含めた安全装置の進化によって、より競技に集中し高いパフォーマンスを発揮することができるのですね。
また、モータースポーツ競技用のヘルメットには、2輪用、4輪用というだけでなく、レースによってさまざまなカタチや機能のものがあるので、ドライバーの「顔」となるカラーリングはもちろん、その機能や安全性にも注目してみてはどうでしょうか。
(取材・文:西川昇吾 写真:アライヘルメット 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
アライヘルメット
https://www.arai.co.jp/jpn/top.html
[ガズー編集部]
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