クルマに乗ったまま薬を受け取れる! ドライブスルー薬局とは?
クルマに乗ったまま気軽に利用できるドライブスルー。ハンバーガーやコーヒー、牛丼も買える便利なドライブスルーですが、なんと薬も受け取れてしまうのです。ドライブスルー薬局の誕生秘話や利用方法を、シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社 代表取締役社長 長南登志さんに伺いました。
アメリカでは普及していたドライブスルー薬局を日本で開店
――ドライブスルー薬局はいつから始められたのですか?
25年くらい前からです。以前はお薬をもらうのは病院の中でという院内処方が主流でした。医薬分業が始まったばかりの時期はいろいろ手探り状態で、どんなサービスがあったら患者さんに喜んでもらえるだろうかと知恵を絞っていたそうです。ちょうどその頃、創業者が医薬分業では先行しているアメリカに医療視察に行き、そこで見つけたのがドライブスルー薬局。アメリカでは既に普及していました。「これは日本では見たことも聞いたこともない! 流行らせたら面白いのではないか」と、ドライブスルー薬局をオープンさせようと決心したそうです。
――アメリカでは普及していたのですね。
ところが、そこからが大変でした。日本では保険薬局を開局させるために地方厚生局と保健所の許可、認可が必要なのですが、「前例がないからダメ」となかなか認可が下りず、かなりの苦労をしたとか。「日本初のドライブスルー薬局」と謳っているのは、この時に「前例がない」と言われたことからですね。
ドライブスルーであっても薬の調剤には時間がかかる
――どのように利用すればいいのでしょう?
最初に受け付けをして、お薬ができあがったら受け取り窓口で服薬指導をしてお薬をお渡しします。最近では、病院やクリニックからあらかじめFAXを送ってもらい、それに基づいて調剤をしておくというケースも増えましたね。
- まずは処方箋の受付窓口へ
――飲食店のドライブスルーとシステムとしては同じですか?
流れとしては同じなのですが、実際はちょっと違います。
お薬はそれぞれの患者さんによって千差万別です。錠剤だと飲めない方には粉砕したり、お子さんのお薬だとシロップを混ぜたり、皮膚科なら軟膏を数種類ミックスしたりといったように手間をかけるお薬が結構あるのです。調剤に30分から1時間かかるものもあります。ですから、受け付けをしていただいて、調剤に時間のかかる患者さんには一旦クルマの待合場所でお待ちいただき、できあがり次第お渡しするということになります。受付時によくフードコートなどで使用されている呼び出しベルをお渡しして待っていただいています。このような流れですが、いつもいらっしゃる患者さんの中には受け付けをして「後で取りに来るわー」とおっしゃって、改めて来局される方もいらっしゃいますね。
- 薬ができたら受け取りの窓口に。待合場所にはクルマで待つことができるスペースが広々と取られている
――“クルマを降りない”というだけで、一般の調剤薬局と流れは一緒ですね。
そうですね。1店舗目をオープンした時には、飲食店のドライブスルーのように受け付けをしたらすぐにお薬をもらえるというイメージがどうしてもあって、「ドライブスルーなのにどうしてこんなに遅いんだ!」とお叱りを受けることもありました。また、窓口を1ヵ所しか設けなかったため大渋滞を起こすなどトラブル続きでした。その教訓を活かして2店舗目からは窓口を分けたり、クルマの待合場所をつくったりと改良していきました。
今では患者さん側も自分のお薬を調剤するのにどれだけ時間がかかるかを覚えてくださって、受け付けと受け取りの間には別の用事を済ませてくる……といった具合に工夫して利用してくれています。
- 立ち寄りしやすいよう大きな看板も
患者さんのメリットを最大限に考えて
――ドライブスルー薬局を利用することで時間の節約にもなるのですね。
その点は大きなメリットで、患者さんは病院で何時間も待たされることも多く、その後薬局でまた30分も1時間も待たされる……となると相当なストレスがかかりますよね。ドライブスルーの利用でじっと待っているだけという時間が短縮されるのはよいことだと思っています。
――他に患者さんのメリットはありますか?
インフルエンザなど感染症が流行するシーズンになると、ドライブスルーを利用する方が圧倒的に増えます。薬局の中に入らないことが感染症予防にも繋がるのです。お子さんがいる場合はチャイルドシートの乗り降りする手間や、薬局の中で子どもが騒いで他の患者さんに迷惑をかけてしまうのではないかと心配される方々の利用も多いですね。また、足腰の調子がよくない高齢者がクルマの乗り降りは大変だからドライブスルーでということもあります。あと、これは地方都市特有かもしれませんが、プライバシー保護にもなっているようです。顔見知りの多い中で薬局にいたと知られたくないという方が利用されるケースもあります。
当初は思いもよらなかったメリットがいろいろあるものだと私たちも感じています。
――運営側としてはいかがですか?
実は、大変です(笑)。ドライブスルーで受付したお薬はできるだけ早くお渡ししたいという気持ちから、結構プレッシャーがかかります。受付も一般受付とドライブスルーと2つの窓口があるので人員も多めに配置していますし、店舗を造るにはクルマの駐車スペースを確保するために通常の店舗の1.5~2倍の土地が必要となり、降雪地域では除雪費用などもばかになりません。
- 一般受付とドライブスルー受付が併設されている
――大変すぎませんか?(笑)
いろいろ大変なこともありますが、やはり来ていただく患者さんに喜んでいただくのが第一。患者さんの立場に立って、これからも貢献していきたいと思っています。
こちらのドライブスルー薬局では処方箋による調剤だけではなく、一般の市販薬やオブラートなど薬を飲む時の補助となるものも購入できるそうです。要領がわかればやはり便利なドライブスルー薬局。機会があれば利用してみたいものです。
<取材協力>
シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社
https://www.shpe.co.jp/
(取材・文:わたなべひろみ 写真:シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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