ETCでケンタッキーが買える!ドライブスルーにETCを取り入れたワケ

2020年7月29日からモニター募集を開始し8月3日~11月末まで、ケンタッキーフライドチキン(以下:KFC)で、ドライブスルーでのETC多目的利用サービスの試行運用が行われています。ドライブスルーでETCとは、キャッシュレスが進む中でもありそうでなかったシステム。その試行運用には、どんな狙いがあるのでしょうか? 中日本高速道路株式会社(以下:NEXCO中日本) 国際・技術事業部の尾高寛信さんと、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 広報CSR部の笠原一樹さんに聞いてみました。

スピード向上と感染リスク低減に

この試行運用は、KFC相模原中央店で実施。事前にモニター登録されたお客様のみが利用でき、モニターに参加された方は1割引で購入できるサービスもついています。

通常のドライブスルーと異なるのは決済方法で、今までお客様は受け取り口で現金やクレジットカードを手渡してから商品を受け取っていましたが、「ETCで!」と言っていただくことのみで決済されて商品を受けとることができるのです。これにより、受け渡し口での停車時間短縮による回転率の向上と、キャッシュレス化による接触機会低減にともなう感染症の感染リスク低減が見込まれます。このシステムの発案は、KFCだったそうです。

「われわれは、以前からドライブスルーの混雑を課題としていました。もっとドライブスルーのシステムをスムーズにできないかと模索していたところ、NEXCO中日本さんが、有料道路の料金支払い以外の場面でETC多目的利用サービスの試行運用をしていると知り、ぜひ取り入れたいと協力を打診した次第です」(笠原さん)

KFCからの打診は、ETC多目的利用サービスの活用方法を模索していたNEXCO中日本にとっても、うれしい話だったと言います。

「私たちも駐車場やフェリーの支払いにETC多目的利用サービスを試行運用していて、ETCを有料道路以外でも、より広く便利に活用できないかと考えていた段階でした。ですので、KFCさんからのお話はうれしかったですね」(尾高さん)

好評の中に見えてきた課題点

運用が始まり約2カ月の時点で、400人ほどのモニター登録が集まり、概ね好評を得ているとのこと。とはいえ、やはり課題も見えてきたと言います。

「ETC多目的利用サービスのシステム上、こういった有料道路以外の支払いでは決済時に車載器から音が鳴らないので、無事に支払いが行われたか戸惑ってしまうお客様が見受けられました。この点は今後の改善点だと思います。しかし、モニター参加してくださった多くのお客様が『今後も利用したい』と回答されていたので、試行運用をしてよかったですね」(笠原さん)

実用化に向けた動きもすでにスタート

試行運用の成果は上々だったといえそうですが、気になるのは実用化が進むのか。尾高さんはこんな風に話してくれました。

「現在は試行運用中で、11月末に一旦運用を終了しますが、実用化に向けた本格的な動きも始めています。今回の試行運用は4社が協力して実施したものですが、よりスムーズに業務運営をするために、ETC多目的利用サービスを提供する会社『ETCソリューションズ株式会社』が設立されました。今後はこの会社が主体となってETC多目的利用サービスの多様化を目指していくことになると思います」(尾高さん)

そして今後、ETC多目的利用サービスを利用できるドライブスルーが、さらに増える可能性があるとのこと。

「今回の試行運用は多くのメディアさんに取り上げていただき、たくさんの人に知っていただくことができました。それにより、現在、多くの企業様から試行運用をしたいというお声がけをいただいています。まだ詳しいことは言えませんが、今後もETC多目的利用サービスを利用できるドライブスルーが増えていくと思います。今後の動向に注目していただけたらうれしいです」(尾高さん)

今や多くのクルマに搭載されているETCの車載器。せっかく車載器がついているのだから、有料道路以外にも使えたらうれしいですね。今後、ETCがどんな風にもっと便利で、もっと身近なものになっていくのか、非常に楽しみです。なお、モニター募集は11月13日まで行っているそうなので、気になった方は応募してみて、実際に新しいキャッシュレスの形を体験してみてください。

(取材・文:西川昇吾 写真:中日本高速道路株式会社 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

コラムトップ