自分の癖を知り安全運転に役立てる! 運転者適性診断とは
日頃、安全運転を心がけていたとしても実際に自分がどんな運転をしているのか気づくのは、なかなか難しいもの。運転の癖を科学的に測定し、安全運転につなげていくのが運転者適性診断です。運転者適性診断とはどのようなものかを独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)札幌主管支所 支所長の亀井憲さんとマネージャーの大澤栄太郎さんに伺い、運転者適性診断を体験してみました。
運転する上での個人の特性を把握して安全運転に役立てる
――運転者適性診断とはどのようなものなのでしょうか。
それぞれ顔が違うように、運転においても皆さん個性をお持ちです。まずは自分ではなかなか気づくことができない運転の癖というものを検査で測定します。測定結果に基づき、それに対応する安全運転のアドバイスを行い、ご自身を知っていただく。そして、それをその後の運転に活かしてもらうというのが運転者適性診断の目的です。
適性診断には7つの種類があります。初任診断・適齢診断・特定診断Ⅰ・Ⅱが、国土交通省の法令により、バスやタクシー、トラックといった自動車運送事業者のドライバーに対して義務化されているものです。一般のドライバーが受診することも可能で、一般診断・特別診断・カウンセリング付き定期診断がそれに当たります。
※NASVA適性診断の詳しい内容はこちらから
https://www.nasva.go.jp/fusegu/tekiseisyurui.html
最近では、営業職の方や自治体職員の方などの受診も増えてきています。全国で年間に約47万7,000人、北海道内でも2万6,000人ほどの方が利用されています。
初任診断って何をする? 実際に受けてみた
では、まずは実際に初任診断を受けてみましょう!
――受診にはどのくらいの時間を要するのですか?
時間はおよそ80~90分ほどかかります。画面と音声の指示に従って全ての項目を順に行っていってください。
――しばらく運転をしていないので、すごく緊張します。
診断は優劣をつけるものではないので、リラックスして受けてくださいね。
大切なのは結果の良し悪しではなく、それをどう活かすか
――全ての診断を受けたらかなり疲れました(笑)。実際の運転に近いシミュレーションの診断から心理テストのようなものまで幅広い項目があるのですね。
ドライバーの方の性格から安全運転態度、認知・処理機能、視覚機能まで多岐に渡り心理・生理面を科学的にとらえる診断内容になっています。その結果に基づいてアドバイスを行っていくわけです。
わたなべさんは、総合所見では判断・動作のタイミングが目立って良いと出ていますね。最近あまり運転をされていないとのことですが、クルマに乗ったとき、どんな運転をするタイプでしたか?
――運転すること自体は好きでしたが、どちらかというと慎重であまり飛ばすことはありませんでした。ロングドライブにはよく行っていました。
このように、この測定結果から自分自身を振り返り、客観的に見つめる材料としていただくわけです。長所・短所を見ていただきながら、「日ごろ、ハンドルを握っているときにはどんなお人柄ですか?」と問い、自分の中で整理していただくお手伝いをしています。そして自分の運転の仕方をありありとイメージしていただくことで、安全運転に対する意識や行動の強化を図っていきます。
――診断結果に良い点があったから安心したり、注意していただきたい点があったからがっかりしたりということではなく、その結果を基に日頃の運転をどう考えるかということが大事だということですね。
自分の癖やエラーの出方を知って、しっかり考えてもらうことが一番大事だと思います。ただ、今回、良好なデータが出たとしても、いつでもそのような行動ができるとは限りませんよね。周りに他の交通参加者もいますから、いつもの運転をやりにくくする要因が出てくることもあるわけです。そういうときが要注意です。
例えば疲れているときや急いでいるとき。それが原因で普段の力を出せずに事故につながるということもあるのです。ですから、この診断は予防的な教育という面では非常に役立つものです。自動車運送事業者では、運行管理者さんが毎日の点呼の時に診断結果や体調確認をするなど安全確保のための体制を組んでいただいています。
――そのためにも管理をされている方にも診断票が渡されるのですね。
受診していただいたご本人様宛の適性診断票と、自動車運送事業者さんや指導をされる運行管理者さんが見てわかりやすいような指導要領がついた診断票の2つを提供させていただいています。情報提供することによって、ご自身が安全行動の実践に取り組むだけではなく、見守る自動車運送事業者さんや指導される運行管理者さんにもご活用いただけるようになっています。
――注意すべき点ばかりではなく、「受診者が優れていることを認め、褒めていただきたい運転特性事項」というのがあるのですね。
良いところはしっかり認めてあげてそれを維持してもらうよう、より具体的な指導に使っていただきたいということです。注意するべきところというのも、「悪いところ」というわけではなく、エラーの出やすさを見ています。例えば、ロングドライブで疲れたときは感情が不安定になり、イライラして思わぬ事故となってしまうこともあります。「こういう状況のときにエラーが出やすいから、気をつけて運転の精度を高めていけば安全行動につながっていきますよ」と指導を行います。
また、自分の生活環境や業務形態、体調の変化などに対応していけるよう、定期的に診断を受けていただくことをおすすめしています。少なくとも3年に一度は受けていただきたいですね。適性診断用パソコンの貸出というのも行っています。そういった取り組みもどんどん利用していただきたいと思っています。
実はここ数年、運転することから遠ざかっていた筆者。運転シミュレーションや判断・動作などの診断で慌ててしまい、どんな結果が出るのかかなり不安でした。しかし、結果とともにアドバイスを受けてみて、「まずは自分を知ることが大切なのだ」ということを実感しました。運転者適性診断は個人でも受診することが可能です。客観的に自分の運転を見つめ、安全運転につなげていってはいかがでしょうか。
<取材協力>
独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)札幌主管支所
https://www.nasva.go.jp/index.html
(取材・文・写真:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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