50周年を迎えた「筑波サーキット」。その歩みを振り返る
茨城県下妻市に位置し、東京都内からクルマで70分ほどの距離にある筑波サーキット。アクセスのよさから、多くのクラブマンレース(アマチュアレース)やイベントが開催されることで有名です。歴史は鈴鹿サーキット、富士スピードウェイに次いで古く、1970年に運営が始まり、2020年で50周年を迎えました。
ここでは「一般財団法人日本オートスポーツセンター」、筑波サーキット業務部業務課の難波さんの協力のもと、筑波サーキットが辿った50年の歩みを振り返ります。
開園前(~1969年)
1966年、文部大臣(現:文部科学大臣)、並びに通商産業大臣(現:経済産業大臣)の許可を受け、筑波サーキットの運営母体となる「財団法人 日本オートスポーツセンター(※)」が発足します。
同組織は「モータースポーツの振興と普及」をコンセプトとしたもので、「アマチュアモータースポーツファンの憩いの場となるサーキット」の建設を計画し、実行。茨城県下妻市(当時の千代川村)に総面積21万2300平方メートルの用地を確保します。そして1968年に、当時のFIA規格(全長2000m以上)の諸条件を満たした、サーキットコースの建設に着手しました。
※公益法人制度改革に伴い、2011年に「一般財団法人日本オートスポーツセンター」に移行
1970年代
1970年に、およそ2年に及ぶ工事が終了。同年6月22日、筑波サーキットはオープンを果たします。「筑波サーキット」という名称は(諸説がありますが)「筑波山は近隣のシンボルであり、一般の人にも覚えてもらいやすい」ということから付けられたそう。
本格的なレイアウトのコースを有したサーキットとしては、1962年の鈴鹿サーキット、1966年の富士スピードウェイに次いで日本で3番目、関東地区では初となる筑波サーキットのオープンは、当時、大きな話題となりました。
関東圏のクラブマンレーサー(アマチュアレーサー)にとって、待望だった身近なコース。オープンの直後から、毎週のようにクルマやオートバイのレースが催されます。わずか数年で、筑波サーキットは「日本でもっとも多くのクラブマンレースが開催されるサーキット」と呼ばれるようになりました。
「この流れは50年経った今でも変わらず、多くのモータースポーツ愛好者、初心者の方にご利用いただいています。また走行会やレースだけではなく、多くの自動車、バイクメーカーの車両テスト、雑誌の新車試乗テストの場として利用され、『新車、新製品購入検討の際は筑波サーキットのタイムを基準にする』という流れが生まれました」(難波さん)
1971年、筑波サーキットの4輪レースカテゴリーとして「東京プロダクションレース」シリーズが始まります(トップの画像は、開催当初の東京プロダクションレースのもの)。当時、レースは「改造した車両で行うもの」という考えが主流でした。しかし、このカテゴリーは「出走できるのは市販のノーマル車両だけ」という画期的なレギュレーションを打ち出します。結果、大いに人気を呼び、現在の「JAF N1レース」へと繋がる、重要な役割を担うカテゴリーとなりました。
1970年代後半には、車両やドライバーの安全確保のため、コースの各所にクラッシュパッドを設置。あわせて観客数の増加に対応すべく、観客席の新規設置、増設といった改修工事が行われます。
1980年代
1980年、開場10周年を記念し、コース内設備の拡充が行われます。ドライバーやライダーがコースの外でも快適に過ごせるよう、医務室やドライバーズサロン(食堂)、会議室、更衣室、シャワールームが設置されました。これらの設備は今でも使用されています。
1987年、現在の「コース1000」の前身となるミニバイク専用の「東コース」が、本コースバックストレッチ横に新設されました。そして、開場から20周年を目前に控え、筑波サーキットは安全性と快適性を備えた「世界一安全なパークサーキット」を目指し、大幅な施設改修に乗り出します。
コントロールタワーの建て替えに始まり、スタートシグナルやリーダーボード、VIPルーム、ガソリンスタンドが新たに設置され、観戦スタンドも増設。工事は1989年に完了し、これらの設備は今でも現役で利用されています。
1990年代
施設改修後、筑波サーキットには「PARK CIRCUIT TSUKUBA(パークサーキット ツクバ)」の愛称が着けられます。
1990年、本コースのランドマークとなっているダンロップアーチから先に、2輪用のシケインが設置されます。これによりダンロップアーチをくぐった後、右側へ切り込んでいくのが2輪コース、緩やかに左に進むのが4輪コースと、走行する車種でコースがわけられることになりました。
2000年代
2000年に入り、それまでミニバイク専用コースだった「東コース」の全面リニューアルを敢行。工事の終了後、2輪も4輪も走行できる「コース1000」に生まれ変わります。これに合わせて、本コースの名称も「コース2000」へと改称しました。コース1000、コース2000の名称は、それぞれの全長(メートル数)を元にしています。
筑波サーキット開場50周年を迎えて
開場から50年を経った今でも「モータースポーツの振興と普及」というコンセプトと、「アマチュアモータースポーツファンの憩いの場となるサーキット」という方針は変わっていないと、難波さんは語ります。
「近年では、コース2000のタイムアタックイベントが盛んに行われ、海外からも多くのタイムアタックチームが訪れて、しのぎを削っています。10年ほど前までは『1分近くで走れたら上出来、1分を切ったらすごい』と言われていたのが、現在は『1分切りは当たり前。50秒代で上出来、50秒切を目指せ』とすさまじいタイムの更新が競われています」(難波さん)
現在のコース2000総合トップタイムは、2016年12月に小林可夢偉選手が「スーパーフォーミュラ SF14トヨタ」で計測した43秒304だそう。
筑波サーキットのもうひとつの顔である、自動車やオートバイメーカーの車両テストや雑誌の新車試乗テストの場。変わらず利用され続ける理由は、良好なアクセスだけでなく「コースが変わらないこと」と、難波さんは分析しています。
「筑波サーキットが車両やタイヤのテストの場として長い間ご利用いただけているのは、50年経った今でもコースのレイアウトに大きな変更がほとんどないため、過去のデータと比較がしやすいこと。全長約2キロというコース長の短さから1周回って戻ってくるまでに大きな時間を要さないため、セッティング変更等が容易にできることが挙げられます。現在、4輪の全日本選手権クラスやFIA世界選手権クラスのレースは開催していませんが、コースのコンセプトである『モータースポーツの振興と普及』は50年経った今でも変わらずに受け継がれています」(難波さん)
これからも筑波サーキットはモータースポーツファンにとって身近な存在で、走行する人、観戦する人を問わず、誰もが訪れやすいサーキットであり続けることでしょう。
■2020年現在のコーススペック
・コース2000
2輪コース … 2,070m
4輪コース … 2,045m
・コース1000
2輪コース … 952m
4輪コース … 1,039m
■過去に開催されていた主要レース
・全日本F3選手権
・全日本ツーリングカー選手権(JTC・JTCC)
■現在も続いているレース、イベント
・メディア対抗ロードスター4時間耐久レース(1989年初開催から現在まで継続開催)
・D1グランプリ
・全日本ロードレース選手権シリーズ(二輪)
・四輪筑波シリーズ(スーパーFJ、TTC1400・1500・1600)
・JAF筑波サーキットトライアル
・筑波ロードレース選手権シリーズ(サーキット主催二輪レース)
・筑波ツーリスト・トロフィー(サーキット主催二輪レース)
・テイスト・オブ・ツクバ(サーキット主催二輪レース)
・耐久茶屋(サーキット主催二輪レース)
<関連リンク>
筑波サーキット
https://www.tsukuba-circuit.jp/
(文:糸井賢一/写真:筑波サーキット/編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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