「RS」の2文字には特別な意味がある!クルマ好きを熱狂させるRSの世界(国産車編)

「RS(アール・エス)」という2文字は、クルマ好きにとって特別な意味を持っています。なぜなら、車名にその2文字を加えることやRSというグレード名をつけることは、高い性能を示唆することだから。そこで、新旧さまざまな「RSと名付けられた国産車」を集めてみました。

ホンダにとって「RS」は伝統的なスポーツモデル

1974年10月、ホンダの大衆車「シビック」に特別な仕様が追加されました。それが「シビックRS」です。1.2リッターエンジンは、標準車の66psに対し、高性能キャブレターの装着などで76psまでパワーアップ。トランスミッションも1速多い5速MTとして、動力性能を高めています。

さらに、サスペンションもひときわ締め上げた専用チューニングに。ホンダは「RS」を「ロード・セイリング」の略としており、高速巡行を重視したキャラクターというイメージに仕立てていました。しかし実際には、峠道などを楽しく走れるスポーツモデルとして高い評価を得たのです。

  • シビックRS(写真:ホンダ技研工業)

    シビックRS(写真:ホンダ技研工業)

シビックRSが多くの人の憧れとなったことから、ホンダにとって「RS」という名は、思い入れのあるものになっていきました。昨年まで販売していた「ジェイド」や先代「フィット」にスポーツモデルの「RS」を設定したほか、もうすぐ新型が登場する軽自動車の「N-ONE」にも「RS」が用意されます。いずれも選べるオレンジのボディカラーは、それがイメージカラーになっていた初代シビックRSへのオマージュなのです。

  • ジェイドRS(写真:ホンダ技研工業)

    ジェイドRS(写真:ホンダ技研工業)

  • フィットRS(写真:ホンダ技研工業)

    フィットRS(写真:ホンダ技研工業)

  • N-ONE RS(写真:ホンダ技研工業)

    N-ONE RS(写真:ホンダ技研工業)

ちなみに海外のタイなどでは、新型フィットのセダンに相当する「シティ」にスポーツグレードとして「RS」を設定。1.0リッターで122psを発生する3気筒ターボエンジンを搭載しています。

日産の「RS」といえば、あのセダン&クーペ

日産の「RS」といえば、多くの人が思い浮かべるのは「スカイラインRS」ではないでしょうか。デビューは1981年10月。FJ20型エンジンを積む高性能モデルとして6代目スカイラインに追加され、当初は自然吸気で150psでした。

その1年半後となる1983年2月には、ターボを組み合わせて190psとした「スカイラインRSターボ」が登場。さらに1984年2月には、インタークーラーを追加した205psとした通称「RSターボC」がデビュー。当時の日本は、パワー競争の真っ盛り。どんどんパワーが上がっていくのは、そんなクルマを取り巻く状況を反映していたというわけです。

  • スカイラインRS(写真:日産自動車)

    スカイラインRS(写真:日産自動車)

日産はそのほかにも、1980年代に「シルビア」や兄弟車の「ガゼール」に高性能仕様として「RS」を設定。しかし、日産はその後「GT-R」や「SSS-R」「マーチR」など、「RS」よりも「R」という文字を好むようになりました。

そんな中で異例といえるのが、1996年に登場したステーションワゴンの「ステージア」に設定された高性能グレード「RS FOUR」(のちに「25RS」なども設定)です。さらにその最高峰として、「スカイラインGT-R」用のRB26DETTエンジンを搭載した超高性能仕様「260RS」も登場しました。このクルマは、実質的に「ワゴンの形をしたGT-R」といえます。

まだまだある国産車の「RS」

実はスバルにも「RS」がありました。それは、1989年登場の初代と1993年デビューの2代目、そして1998年登場の3代目「レガシィ」のセダンに高性能グレードとして用意していた「レガシィRS」です。特に初代レガシィRSは、ラリーなどの競技に出場するために手作業で組んだエンジンを搭載し、サスペンションも強化した「RSタイプRA」が設定されるなど、ひときわ特別なグレードでした。

  • レガシィRS(写真:SUBARU)

    レガシィRS(写真:SUBARU)

スパルタンな「RS」といえば、三菱の「ランサーエボリューションRS」も欠かせません。ランサーエボリューションは、ラリーへの参戦を前提に開発された超高性能モデルですが、街を走っているのはそのほとんどがエアコンなどの快適装備のついた一般向けの仕様。「RS」は、そこからエアコンなどの快適装備を外して軽量化を図った、純粋な競技用の仕様なのです。

  • ランサーエボリューションRS(写真:三菱自動車)

    ランサーエボリューションRS(写真:三菱自動車)

一方で、マツダが小型オープンスポーツカーの「ロードスター」に設定している「ロードスターRS」やスズキの小型車「スイフト」に用意する「スイフトRS」は、バリバリの走りというよりは「ちょっとスポーティな味付け」といった立ち位置。トヨタが販売していた「ヴィッツRS」も同様です。

  • マツダ ロードスターRS。(写真:マツダ)

    マツダ ロードスターRS。(写真:マツダ)

  • スズキ スイフトRS(写真:スズキ)

    スズキ スイフトRS(写真:スズキ)

  • トヨタ ヴィッツRS(写真:トヨタ自動車)

    トヨタ ヴィッツRS(写真:トヨタ自動車)

ところで、「RS」にはどんな意味が込められているのでしょうか。シビックでは「ロード・セイリング」と公表されていますが、一般的には「Racing Sport(レーシング・スポーツ)」、「Racing Spirit(レーシング・スピリット)」「Road Sport(ロード・スポーツ)」などが語源と言われています。

「クラウン」にも「RS」がある!

トヨタ「クラウン」といえば伝統的な高級セダン。ですが、現行モデルにはなんと「RS」という名のグレードが設定されています。内外装をスポーティに仕立てているほか、グレードによっては専用のサスペンションなども採用。

  • クラウンRS(写真:トヨタ自動車)

    クラウンRS(写真:トヨタ自動車)

また、トヨタの最新「RS」としては、専用設計のボディを持つコンパクトスポーツカー「GRヤリス」に「RS」グレードがあります。高出力ターボエンジンに6速MTと4WDを組み合わせた上位モデルに対し、自然吸気エンジンを積んだCVTで駆動方式はFF。「気軽にGRヤリスを楽しんでほしい」と用意されているグレードです。

  • GRヤリスRS(写真:トヨタ自動車)

    GRヤリスRS(写真:トヨタ自動車)

トヨタは、「RS」について「Runabout Sports(ランナバウト・スポーツ)」と説明していますが、これは「キビキビと自由に走れる」といった意味が込められた言葉です。

ひとくちに「RS」といっても、特別なエンジンを搭載したり快適装備を取り外したりしたバリバリのスポーツモデルから、気軽にスポーティな走りを楽しめるモデルまでその方向性はさまざま。ただ、“運転が楽しいこと”は共通していると考えてよさそうです。今回の「RS」国産車編は、たくさんある日本車の「RS」のなかから、注目モデルを中心にセレクトしてみました。

(文・写真:工藤貴宏  写真:日産自動車、ホンダ技研工業、SUBARU、三菱自動車、マツダ、スズキ、トヨタ自動車、 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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