「RS」の2文字には特別な意味がある。クルマ好きを熱狂させるRSの世界(海外モデル編)

クルマのモデル名として特別な意味を持つ「RS」。先日公開した「国産車編」に続き、今回は「海外モデル編」としてクルマ好きを魅了する日本国外の「RS」を紹介しましょう。たくさんの「RS」の中から、憧れのクルマを中心に選んでみました。

「RS」と名がつく海外の車両で、もっとも知名度が高いのはポルシェ「911」シリーズの「RS」かもしれません。初めて登場したのは1973年の「911カレラRS 2.7」。911をベースとした競技に出場するためのスペシャルモデルとして開発され、装備の簡略などで車体を軽量化したほか、ベースとした「911S 2.4」に対してエンジンの排気量を大きくして、30psのパワーアップを実施。究極のスポーツモデルとなっていました。

  • 1973年にデビューした「911カレラRS2.7」(写真:ポルシェ)

もうすぐデビューから50年を迎えますが、今でも「ナナサン・カレラ」の愛称で絶大な人気を持つレジェンド。海外における「RS」のイメージはこのクルマが作ったといっても過言ではないでしょう。
  • サーキットが本拠地と言える991型の「911GT3 RS」(写真:ポルシェ)

その後もポルシェにとって「RS」は特別な意味を持ち、たとえば2018年にデビューした「911GT3 RS」は、徹底した軽量化を施した車体にサーキット走行を前提としたサスペンションを装着。室内はフルバケットシートを標準装着し、メーカーオプションとしてロールバーも組み込める、「公道を走れるレーシングカー」と言えるモデルでした。「RS」は、ポルシェにおいては過激なモデルの代名詞といっていいでしょう。

「RS」として超高性能ワゴンも展開するアウディ

「RS3スポーツバック」「RS3セダン」「RS4アバント」「RS5クーペ」「RS5スポーツバック」「RS Q3」、そして「TT RS」と、シリーズとして「RS」を用意しているのがアウディ。そのポジションは、それぞれの車種の頂点となる、ドライビングプレジャーを追求したスポーツモデルです。
  • 実用的なボディを中心に揃えるアウディの「RSシリーズ」(写真:アウディ)

アウディには通常の「A」や「Q」といったシリーズの上にスポーツモデルの「S」があり、「RS」はさらにその上の存在。たとえば「RS3」は、コンパクトハッチバックやセダンの「A3」をベースとし、400psを発生する超高性能エンジンを搭載しています。頂点となる「RS5クーペ」や「RS5スポーツバック」「RS4 アバント」のエンジンはさらにパワーが上乗せされ、なんと450psです。
  • 最新の「RS4 アバント」(写真:アウディ)

RSシリーズのルーツは、1994年に発売された「RS2」。アウディのステーションワゴン「80アバント」をベースとしてアウディとポルシェが共同開発した超高性能ワゴンで、製造はポルシェが担当。ハイパフォーマンススポーツカー並みの走行性能ながら、実用性の高いワゴンボディというのがこだわりでした。そんな歴史もあり、アウディの「RS」は実用性の高いワゴンボディをベースとすることが多いのも特徴です。
  • アウディのRSシリーズのルーツとなる「RS2」(写真:アウディ)

アウディは同社の「RS」について「Sモデルをさらにスポーティに進化させたレーシングモデル」と説明。特別な存在としています。

ルノーにはニュルでFF市販車最速を誇る「R.S.」がある

厳密にいうと「RS」ではなく「R.S.」ですが、「トゥインゴR.S.」や「ルーテシアR.S.(欧州名『クリオR.S.』)など、玄人好みの超高性能マシンを展開するのがフランスのルノー。ハッチバックをベースとするから、高い性能やドライビングプレジャーを実現しつつ、実用性をまったく犠牲にしていないのが特徴です。
  • 鈴鹿サーキットでタイムアタック中の「メガーヌR.S. トロフィーR」 (写真:ルノー)

その代表作である「メガーヌR.S.」は、ドイツにある過酷なサーキットとして知られる「ニュルブルクリンク」の北コースで、ホンダ「シビック タイプR」と量産FF車最速タイムを競って火花を散らしあっていることでも知られています(2020年11月現在はルノーが勝ち越している状態で「メガーヌR.S.トロフィーR」が量産FF車最速のタイトルを誇る)。ちなみに、ルノーの「R.S.」の意味は、「ルノー・スポール」の略です。

フォードも頂点に「RS」をラインナップする

フォードも頂点に立つスポーツモデルに「RS」を好んで使うメーカー。歴史を遡ると、1970年にはコンパクトカーの「エスコート」をベースとしたラリー参戦用として、「エスコート1600RS」が登場しています。
  • 「エスコートRS」の初代モデル(写真:フォードモーター)

日本でよく知られているのは、1985年にデビューした「シエラRSコスワース」でしょう。レースやラリーでの戦闘力を高めることを目的に開発されたモデルで、ミドルサイズのファミリーカーである「シエラ」をベースに、レーシングエンジンのスペシャリストとして知られる「コスワース」社がチューニング。出力を204psへと高めた、2.0リッターターボエンジンを搭載してました。いわば「エボモデル」です。
  • 日本のレースでも大暴れした「シエラRSコスワース」(写真:フォードモーター)

開発はフォードの特殊車両部門がおこない、日本でも当時大人気だった「全日本ツーリングカー選手権」というレースに出場。日産「スカイラインGTS-R」や「スカイラインGT-R」、トヨタ「スープラ」と激しいバトルを繰り広げたことを覚えている人もいるでしょう。
  • 小さなボディに高出力エンジンと4WDを組み合わせた「エスコートRSコスワース」(写真:フォードモーター)

1993年に登場した「エスコートRSコスワース」はWRC(世界ラリー選手権)で大活躍し、タミヤ模型のラジコンとして発売されるほど、日本でも人気となりました。

フォードはその後も「フォーカスRS」など、“普通のハッチバック”をベースに高出力エンジンを積んだ「RS」を展開。いずれもサーキットも走れる市販車として高い走行性能を誇るほか、ラリーをはじめとするモータースポーツ参戦車両としてもメジャーな存在です。

フォードと言えば、多くの人は「アメリカの自動車メーカー」をイメージすることでしょう。しかし、ここで紹介した「RS」は、すべて欧州拠点で欧州向けに開発された「欧州車」。「RS」という名称は欧州で好まれるようです。

  • 「ドリフトモード」も用意する最新の「フォーカスRS」(写真:フォードモーター)

欧州における「RS」を見ていると、共通するのはいずれも超高性能エンジンを積んだ超ハイパフォーマンスのスペシャルなモデルだということ。欧州における「RS」という名称は競技と直結することが多く、日本車のそれよりもさらに高性能なイメージを持つと考えていいでしょう。

(文・写真:工藤貴宏/写真:ポルシェ、アウディ、ルノー、フォード/編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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