青くレトロなハイエースが目印! 「鯛焼きのよしかわ」<キッチンカー探訪>
西武新宿線・東伏見駅の南口。ダイドードリンコアイスアリーナ前の広場になんとも味わい深い青色のバンが止まっています。こちらが「鯛焼きのよしかわ」。店主の吉川好英さんは、バンのバックスペースを上手に活用して「一丁焼き」といわれる一つずつ焼かれる鯛焼きを作られています。
屋台の鯛焼きの味が忘れられない
吉川さんがこの店を始めたのは2006年9月。それまで魚の加工品の販売をしていましたが、「自分で作ったものを売りたい」という気持ちが芽生え、そこで目をつけたのが故郷・長野県のおやきでした。善光寺のご開帳の時、屋台で売っているおやきを食べに行ったところ、一丁ずつ焼かれる鯛焼きの屋台が出ていて、その味に感動したそうです。
その話を知人にしたところ、知り合いの店を知っている、という情報が入りました。ただ、閉店している可能性もあるので「もし使っていないのなら道具を譲ってもらえないか?」と伝え、交渉の末、見事譲ってもらえることに!
そんなラッキーも重なり、一念発起。33歳で移動販売の鯛焼き店をオープンさせました。水分多めのとろりとした自家製あんは、北海道産の「トヨミ大納言」を使用。大粒で豆臭さが少なく、あっさりとした味わい。あんこだけを買い求めるお客さんも多いそうです。卵や乳製品を使用していないので、ビーガンやアレルギー体質の人も食べられます。
40年以上乗り継がれるトヨタ「ハイエース」
前職の頃からバンが欲しい、と思っていた吉川さん。フォルクスワーゲンのバスなども検討したけれど、どこかピンとこない。そもそも古い日本のものが好きだったそうで、そんな時に見つけたのがこちらのトヨタ「ハイエース」でした。1976年に車両登録されているそうで、吉川さんが購入する以前は、千葉県の料理屋が冠婚葬祭使用の送迎に使っていたのではないか、と推測されます。
「もともと車体の横にその料理店の名前が入っていたんです。横浜にある古いクルマばかりを取り扱う中古車店で見かけ、『なんだあのクルマは!?』という感じでほとんど一目惚れでした」(吉川さん)
10人乗りで4万kmしか走っていなかったこともあり、初めてこのクルマを見た翌日には中古車屋に電話を入れていたそうです。
この爽やかな青色は購入時からこのままですが、扉部分などは後から塗り直されている模様。
「水をかけると古くからの部分はその水がなじむのですが、肩部分などは水を弾く感じがあったんですよ」(吉川さん)
けれどぱっと見は塗り直されているなんてまったくわかりません。
大事に、大切に、付き合ってきた相棒
室内の構造は至ってシンプル。後ろの扉を開いて、そこに焼き台が置かれています。熱源はプロパンガス。なかなかの火力です。シンクや棚、冷蔵庫などもあります。もともとあった座席を取り除いたりシンクや棚を取り付けるなどの作業は、すべて吉川さん自身で行ったそうです。
なかなかの年代物のハイエース。メンテナンスは三鷹の自動車店にお願いされています。「古いクルマ好き」という知見とノウハウと横のつながりで、修理や車検は託しているのだとか。
「一度自分のミスでガス欠してしまったとき、どうにも動かなくなってしまい、助けてもらいました。でも14年乗っていますが、止まったのはその一度だけ。古いクルマだけど、ちゃんと動くところも気に入っています」(吉川さん)
信頼できる業者さんが定期的にメンテナンスしているからこそ、ずっと快調に走るハイエース。
「このクルマには思い入れがたくさんあります。もしこのクルマが使えなくなったら……どうかな、鯛焼き屋続けるかな、わかりません。とりあえずしばらく休むでしょうね。そんな相棒です」(吉川さん)
次から次へとひっくり返して焼かれる鯛焼きを前に、手を止めることなくポツリ。一目惚れで、転機のタイミングを捉えて進んできた吉川さんにとって、この青いハイエースとの関係は、とても深くて強いもののようです。
<取材協力>
鯛焼きのよしかわ
http://yoshikawa.html.xdomain.jp/index.html
(取材・文・写真:別役ちひろ/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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