圧雪アイスバーンコースでハイラックスが大活躍!サーキットではたらくクルマたち<十勝スピードウェイ編>
コースを安全に走行できる状態を保ち、イベントでは出走車両のエスコート。そして緊急事態が発生した際は、迅速に駆けつけて対処を行う。サーキットの花形であり、縁の下の力持ちのコースカーたち。
今回は日本で最も北に位置し、北海道で唯一のFIA(国際自動車連盟)国際公認コースを持つ「十勝スピードウェイ」のコースカー事情を、同サーキット運営スタッフの刈屋直樹さんに伺いました。
全長5,100m、フラットな路面が特徴のコース
まずは十勝スピードウェイについて簡単に触れておきましょう。北海道帯広市の南、河西郡更別村にあります。十勝スピードウェイは通称で、正式名称は「十勝インターナショナルスピードウェイ」になります。1993年にグランドオープンを果たし、かつては「全日本GT選手権」や「十勝24時間耐久レース」といったビッグレースを開催。現在はJAF公式戦「北海道クラブマンカップレース」や「北海道ジムカーナ選手権」を中心に、多くのクラブマンレースを開催しています。
一周5,100mに及ぶグランプリコースは国内で例をみないフラットなコースで、メインスタンドからコースのほとんどを見渡すことができます。また北海道としては積雪が少なく晴天が多いという気候と地理を生かし、パドック内に冬期コース(圧雪路や氷盤路のコース)を開設することでも知られています。
セーフティーカーにオーストラリア仕様の200SXが!
ここからが本題。十勝スピードウェイのコースカーたちを見ていきましょう。レースやイベントのスタート時、あるいはアクシデントが発生した際にコースインし、出走車両の先導を務めるセーフティーカーは、レクサス「LS500h」と日産「200SX」の2台が務めます。
2018年に導入されたLS500hは、ルーフ上の標識灯のほか、トランク上にもLED式の標識灯が搭載されています。
LS500hが導入される前は、トヨタの初代「セルシオ」が運用されており、過去にはホンダ「ビガー」、日産「スカイライン(R33)」、「スカイラインGT-R(R33)」がセーフティーカーとして活躍していました。
一見、日産「180SX」に見える200SX。これはオーストラリア仕様のため、車名などが異なるもの。1994年に開催された「日産レーシングスクール」のオフィシャルカーとして導入され、以降はセーフティーカーとして活躍しています。イベントでは主にLS500hが使用され、200SXはバックアップに回ることが多いそうです。
ハイラックスにハリアーG’sと、オフィシャルカーにはタフな車両を配備
イベントで出走車両の最後尾につき、後追いを務めるオフィシャルカー。ほかにもコースのチェック、ドクターや関係者を乗せての移動、アクシデントに初動で対応するレスキュー車両の役割も担っています。十勝スピードウェイでは現在、2台のトヨタ「ハイラックス」と「ハリアーG’s」が活躍しています。
レッドのハイラックスは2020年に、シルバーのハイラックスは2010年に導入されました。多用途に運用するため、後部の荷台には消火器や清掃道具が積まれています。
冬期コースの圧雪路を整備するのもオフィシャルカーの役目。十勝スピードウェイならではの運用です。
ハリアーG’sは2018年に導入。ルーフにブルーのLED式標識灯を備えます。G’sというのは、サーキット車両らしいですね。過去には三菱「エクリプス」、「アウトランダー」が運用され、名称こそオフィシャルカーではありませんでしたが、日産「テラノ」、トヨタ「スプリンターカリブ」も同様の使い方をされていたそうです。
そして2020年11月、新たにレッドとブルーのトヨタ「スープラ」が導入されました。標識灯やラッピングが施された後、2021年からの運用が予定されています。
消火車にレッカー車、コースの維持に欠かせない作業車たち
セーフティーカーやオフィシャルカーのように日の目を浴びることはないものの、安全なレースやイベントの開催は作業車の働きがあってこそ。各作業車は特に記載がない限り、サーキットのオープンした1993年より活躍しています。
レーシングアクシデントが発生し、車両火災のおそれがある場合に駆けつける消火車(ファイヤーエンジン)には、ホンダ「シビックシャトル」が運用されています。後部座席の取り払われた荷室には放水設備が施され、水が使用できない火災に対応するための消火器も積載しています。
サーキット内で急病人が発生し、病院への緊急搬送が必要となった際に出動する救急車は、日産「エルグランド」と2台の「キャラバン」を配備。エルグランドは2018年に導入された、比較的新しい車両です。
アクシデントやトラブルによりコース上で動けなくなった車両やコースの外で身動きのとれなくなった車両を救出し、ピットやパドックまで牽引するのは、レッカー車のトヨタ「ダイナ」。競技が二輪の場合は積載用のリアカーを牽引します。
身動きの取れなくなった車両の車種、状況によっては、いすゞ「フォワード」クレーン付きユニックが使用されます。
冬期になるとユニックは荷台に水タンクを積み、冬期コースの下地作りや氷盤路を作るのに活躍します。
散水車の三菱ふそう「キャンター」とスイーパーは、日頃のコースメンテナンスから、アクシデントによりエンジンオイルが飛び散った際の清掃まで、コンディションの維持には欠かせない存在です。
コース周辺の整地や冬期コースを造成するため、4台の「タイヤショベル(コマツ・日立)」が配備されています。
緑の多い十勝スピードウェイにとって、サーキット内の美化作業は重要な業務のひとつ。高所作業用の三菱ふそう「キャンター」は2016年に導入されました。
セーフティーカーとオフィシャルカー撮影は通常の営業日に
十勝スピードウェイにて運用される各コースカーのラッピングに決まりはなく、現在はシンプルに「SAFETY CAR」や「OFFICIAL CAR」といった役割だけを記載するのが主流だそう。
普段、セーフティーカーとオフィシャルカーはパドックビルの前で待機しています。イベント開催時の見学は難しいそうですが、通常の営業日ならばスタッフに声をかければ、可能な限り応えてくれるそうです。
<関連リンク>
十勝スピードウェイ
http://tokachi.msf.ne.jp/
(文:糸井賢一/写真:十勝スピードウェイ/編集:木谷宗義 type-e+ノオト)
[ガズー編集部]
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