チョロQ、40年の歩みを振り返る

タカラトミー(当時タカラ)から1980年12月に発売が開始、2020年で40周年を迎えた「チョロQ」。愛らしくデフォルメされたスタイルとプルバック式ゼンマイによる走行、子どもでも購入しやすい価格により大ヒット商品となりました。どのような経緯で「チョロQ」は生まれ、愛される商品としての展開を果たしたのでしょう? ここではタカラトミーとトミーテックの協力のもと、「チョロQ」の歩んだ40年を振り返ります。

※「チョロQ」のシリーズ商品、くわえて「チョロQ」の名称を持つシリーズ商品は数多くあり、記載のできなかった商品も多数あります。

動くミニカーでクルマ玩具市場に参入を決定

1970年中頃から後半にかけて、ランボルギーニやフェラーリといったスーパーカーが絶大な人気を獲得。いわゆる「スーパーカーブーム」が起こります。スーパーカーとともに人気を博したのが、ミニカーをはじめとしたクルマ玩具です。それまでクルマ玩具というと「一部の専門メーカーがつくるもの」というイメージが強かったのですが、スーパーカーブームをきっかけに各玩具や模型メーカーがクルマ玩具を発売。ブームが収束する頃には、玩具の市場に「クルマ玩具」というジャンルが確立していました。

当時、クルマ玩具にはいろいろな商品がありました。しかしタカラの商品開発チームの目には、どれも魅力的に映らなかったそうです。クルマ玩具の市場に参入するにあたり「精巧でも動かないミニカーより、もっと動的で遊びを拡大できるものを目指そう」との目標を掲げ、企画をスタート。独自の発想と新しい技術を取り入れた、これまでにないコンセプトを持つ“動くミニカー”「チョロQ」を作り上げ、“動力のないミニカー市場”に飛び込みます。販売開始から1年(1981年12月)、「チョロQ」は累計で1,000万個を販売する大ヒットとなりました。

「チョロチョロ走るキュートなクルマ」で「チョロQ」

1980年12月に発売された「チョロQ」。その名称は「チョロチョロ走るキュートなクルマ」というコピーが元になっています。第一弾は「Aセット」という名称が付けられ、4車種が発売されました。翌1981年に「Bセット」と「Cセット」が発売されますが、ラインアップは「Aセット」と同じものです。

  • 画像は「Bセット」の2車種。特定の実車を再現したものではなく、左のモデルは「バン」、右のモデルは「エフワン」と呼ばれていた

「チョロQ」のキモとなる「エンジン」ことプルバック式ゼンマイは、最初に開発が始まりました。完成したエンジンは十分にコンパクトですが、これを収めるには高い車高が必要となり、あの可愛らしくデフォルメされたボディーが生まれます。

  • 左はBセット、右は「スタンダードチョロQ」に使用されているエンジン。使用される素材の材質が変わっても、基本的な構造は踏襲されている

エンジンはコンパクトながら瞬間的な動力性能が高く、車両の後部(コインホルダー部)に10円玉を差し込むことでウィリー走行ができました。

  • ウィリー走行はチョロQの代名詞のひとつ

ファンにとっては有名な話ですが、「チョロQ」には前身となる「豆ダッシュ」という商品がありました。「豆ダッシュ」は開発中のネーミングで、「小さいボディーでダッシュする」さまから付けられています。1980年の国際見本市には「豆ダッシュ」の名称で出展し、テスト販売時の商品名にも使用されます。正式な販売にあたって「マメダッシュ」を経て「チョロQ」に名称があらためられました。「豆ダッシュ」の車種はAセットと同様ですが、シャシーの裏に「チョロQ」と記載されていないのが特徴です。

約3,000種類のバリエーションが生まれた初代「チョロQ」

Aセットから続く「チョロQ」、いわゆる「A品番」は、1986年に発売されたWセットで幕を下ろします。累計で約3,000種類もの車種(バリエーション)が発売されました。

  • 1980年代のチョロQはサンルーフやリアゲート開閉など、アクション部分が盛り込まれたものもあった

通常の「チョロQ」のほか、女性に向けた「ふぁっしょんチョロQ ラブラブ(1982年)」や「ハデハデチョロQ(1983年)」、水の上でも走行できる水陸両用「アイディアチョロQ Qボート(1983年)」、文具としての機能を持った「アイディアチョロQ コンパス・トラック」や「ケズリ・ダンプ」、たこ糸の綱渡りができる「Qレンジャー(1985年)」といった、バリエーションに富んだ数々の「チョロQ」が発売されます。

  • 「ハデハデチョロQ」も、女性を意識した「チョロQ」

  • 「Qボート」はフロートを使用して水に浮かび、水面を走行する

  • 「コンパス・トラック」は文字通りコンパスとしての機能を、「ケズリ・ダンプ」はえんぴつ削りの機能を持っている

2つのエンジンを搭載可能な「チューンナップチョロQ PRO(1985年)」は、カスタムを前提とした異色のモデルで、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動と自由に駆動方式の変更が可能。後に発売される分割ボディーを持った「カスタマブルチョロQ(1996年)」の前身と見ることができます。

  • 「チューンナップチョロQ」と「チョロQプロ メカニックボックス(1985年)」。「メカニックボックス」にはクルマのキーをイメージしたドライバーとスペアタイヤ、前後バンパーが梱包されていた

  • スペアのエンジンやタイヤ、ドライバーの収納を目的とした「チョロQツールボックス(1985年)」も発売された

バトンは二代目「チョロQハイグレード」、三代目「スタンダードチョロQ」へと受け継がれる

1986年に販売が終了した初代「チョロQ」は、翌1987年に「チョロQハイグレード(HG)」に生まれ変わります。初代では成形色とシールで表現していたボディー色ですが、「チョロQ HG」では塗装やタンポ印刷(パッド印刷)の技術を取り入れ、安全性の向上とクオリティーアップを果たします。

  • 初代「チョロQ」はボディーとガラスは別パーツだったが、「チョロQ HG」の後期からは一体パーツとなり、塗装で表現するようになる。ホイールにもメッキ処理が施された

2004年、「チョロQ HG」に替わって「スタンダードチョロQ」が登場。その後、幾度かの仕様変更を行い、2009年に「スタンダードチョロQ」は販売を終了します。

  • ボディーのディテール表現が一層細かくなり、大幅なクオリティーアップを果たした2000年代初頭のチョロQ

「チョロQ」サイズで赤外線リモートコントロール機能を持ったクルマ玩具「Qステア(2006年)」。この技術を改良して「チョロQ」に搭載した「チョロQハイブリッド!」が2009年に発売開始。そして2014年、障害物を自動的に避けるセンサーを搭載した自動走行チョロQ 「Q-eyes」が登場します。

1980年のAセットから始まり「自動走行チョロQ Q-eyes」まで、タカラトミー(当時タカラ)の販売した「チョロQ」の累計個数は1億5,000万以上を記録しています。

タカラトミーアーツとトミーテックが引き継いだ、それぞれの「チョロQ」

現在、タカラトミーの「チョロQ」は発売されていませんが、タカラトミーアーツとトミーテックの2社が、それぞれ異なる形で「チョロQ」を引き継いでいます。

企業の記念グッズとして、または付加価値の高いお土産グッズとして提供されることが多いオリジナルの「チョロQ」を見たことがある人も多いと思います。このオリジナル「チョロQ」の制作サービスを行っているのがタカラトミーアーツです。遠州鉄道株式会社の「遠鉄バス チョロQ」(1997年)から始まり、これまでに3,030企画ものオリジナル「チョロQ」を制作しました。

2011年、トミーテックより発売された「チョロQ zero」は、プルバック式ゼンマイのエンジンを持つ、旧来の「チョロQ」のデザインを受け継いだシリーズです。

  • 「チョロQ zero」はボディーとガラスを別パーツにするなど、初期の「チョロQ」を彷彿させる作りになっている

トミーテックはタカラトミーグループ内で“大人に向けたクオリティーのホビー商品”を担当する会社であり、当時、タカラトミーより引き続き発売されている「チョロQハイブリッド!」との差別化の意味もあって、“大人に向けた「チョロQ」”をコンセプトとした商品の企画を立ち上げます。

  • 「チョロQ zero」の価格は一律ではなく、最近のものは2,000~2,600円。高価なようだが、実際に見るとクオリティーに適した価格であることがわかる

「その時代ごとのクルマ文化を反映した車種のラインアップ」、「クルマ好きの視点を通したデフォルメ形状や細部の味付け」という、「チョロQ」が持つ魅力の再現を目指して制作を開始。「チョロQ zero」とうい名称は、「チョロQの原点」という意味を込めて付けたそうです。

40年間、時代に合わせて進化し、受け継がれた「チョロQ」。どのような形で50年、60年を迎えるのか、注目し続けたいと思います。

 

🄫 TOMY
「チョロQ」は株式会社タカラトミーの登録商標です。

<関連リンク>
タカラトミー
https://www.takaratomy.co.jp/

トミーテック ミニカー「チョロQ zero」ページ
https://minicar.tomytec.co.jp/lineup/choroqzero/

タカラトミーアーツ 「オリジナルチョロQ」制作オーダーページ
https://www.takaratomy-arts.co.jp/business/choroq-order/

(文:糸井賢一/写真:トミーテック/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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