レーシングスーツやグローブがサーキット走行に必要なワケとは? 普通の衣服と何が違うの?
モータースポーツに参戦するときには、レーシングスーツやレーシンググローブをはじめとしたレーシングギアが必要となります。それは安全のために着用するものですが、普通の衣服と何が違うのでしょうか? 冬用の手袋じゃダメ?
そこで、5ZIGENインターナショナル株式会社でレーシングギアブランド「ARD」を担当している竹村さんにお話を伺いしました。
―なぜ、レーシングギアが“安全のため”に必要なのでしょうか?
レーシングスーツやレーシンググローブが重点を置いているのは、耐火性です。難燃性(燃えにくい)素材を使用しているだけでなく、可能な限り肌を露出しない構造となっているのもポイントです。これは、スーツとグローブはもちろん、アンダーウェア、アンダーマスクにもいえること。操作のしやすさにも配慮しながら、「肌の露出を少なくし、燃えにくい素材で作られる」というのが基本となっています。
―どんな素材が、「燃えにくい素材」となるのでしょうか?
弊社のレーシングギアは、「ノーメックス(Nomex)」というアラミド繊維の糸から作られた生地を使用しています。ノーメックスは、アメリカのデュポン社が特許を持つもので、レーシングギアのほかにも消防士が着る耐火服などに使われていて、優れた難燃性と耐熱性、そして自己消火性という特徴を持っています。つまり、高温にさらしても生地が溶けることなく、一定時間は肌に触れる部分の温度を適切に保ってくれます。さらに素材自体も燃えにくく、さらにもし燃えても燃え広がりにくいのです。
一般的な衣服の素材は、自己消火性がないのはもちろんですが、スポーツウェアなどに多いポリ系の素材では、高温にさらされると溶けて肌に張り付いてしまうこともあります。こうなると単なる火傷だけでは済みませんから、サーキット走行をするときにはレーシングスーツを着用する必要があるのです。もし、レーシングスーツがない場合は、最低でも上下綿素材でできた長袖長ズボンを着用すべきですね。
―「FIA公認」と書かれているものもありますね。
FIA(国際自動車連盟)が定めた性能をクリアした製品には、FIAのマークがつけられています。具体的には公認のものの方が、耐火性能が優れていますね。
レースによっては、FIA公認製品の着用が義務付けられています。ただし、公認製品は、高い性能基準をクリアするために、価格は高めです。また、FIAの基準も更新されるので、それに合わせて製品をアップグレードする必要もあります。
ちなみに、おなじ公認製品でも、高価なものほど生地が薄くて軽く、動きやすいといえます。具体的には、同じノーメックスの糸を使っていても、10種類以上の異なる生地を使っていたり、可動部をニット形状にして動きやすくしていたりといった違いがあるのです。また、スーツによっては重さが500~600gも異なることもあります。
―レーシングスーツは毎年、ニューモデルが出ていますよね。何が新しくなっているのでしょうか?
年々、高くなっていく安全基準に合致させているのはもちろんですが、素材の改良により最近のスーツは、軽く通気性がいいものになってきています。また、生地の発色も向上しているので、昔よりもデザインの自由度が高くなっていますね。
―最後に、レーシングギアの選び方を教えてください。
自身が使うシチュエーションに合わせて選んでください。スポーツ走行のみならば、FIA公認である必要はありませんが、将来的に競技への参加を考えているならばFIA公認の製品がおすすめです。サイズは、メーカーのホームページで公表されている身体の各所のサイズを参考にしてください。弊社は日本のブランドですので、比較的日本人にマッチしたサイズ感になっています。
竹村さんのお話で、レーシングギアの重要性や特徴がよくわかりました。レーシングギアは、命に関わる大事なものです。スポーツ走行をする方は、改めて自身の装備品を見直してみるといいかもしれません。
(取材・文:西川昇吾/写真:5ZIGENインターナショナル株式会社/編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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