赤べこになった電気自動車「カリン」で疫病退散!
福島県会津地方の郷土玩具「赤べこ」。首がゆらゆらと揺れる張り子の赤い牛で、古くより魔除け・疫病除けのご利益もあるといわれ親しまれてきました。
この赤べこをモチーフにした電気自動車で、現在、疫病退散の願いを込めて日本各地を巡るプロジェクトがあります。
最初は広告塔として立案
「カリン」と名付けられた赤べこ車。企画立案・デザインをしたのは、福島県のデザイン制作会社「OFFICE ZERO’S」の代表・菅野司さん。そもそも企画当初は、「電気自動車専門店の開業に向けてのオブジェ」という目的が主軸だったそうです。
「訴求効果が高く、観光集客にも生かせるものはないか検証することも踏まえ、赤べこをもとにデザインを考えました」(菅野さん)
2019年9月からなんと4か月かけてデザインの構想が練られました。
電動ミニカーに伝統工芸技術も付与
「カリン」の車体に選ばれたのは、富山県の「タケオカ自動車工芸」が製造する電気自動車「ミリューR」。最高速度は時速60kmで、満充電で約50km走ることができ、しかも家庭用の電源で充電できる1人乗りミニカーです。
「当初は2名乗りの車両を考えていた」とのことですが、軽自動車より1クラス小さいものはまだまだ実証実験の段階だったこともあり、ミニカー登録車に絞ったそうです。
「『ミリューR』は、運転席とバッテリーのポジションが車体のセンターに位置づけされているため、重心バランスに優れ、操作性がとても良く快適であり、パワーモードまであるので、通常走行モードのワンランク上の走りにも魅力を感じました」(菅野さん)
塗装にもこだわり、なんと福島県の伝統工芸である「漆」が使われています。
まず、菅野さんが塗装の参考にしたのは、会津地方各地に点在する赤べこのオブジェ。
これらのオブジェで使われている色や技法について調べるため、菅野さんは「福島県ハイテクプラザ・会津若松技術支援センター」を訪れました。その時、エントランスに展示されている漆塗特殊塗料のクルマを目の当たりにして感動。運よくその技術者に相談することができ、「含漆UV塗装」という特殊な漆塗装が施されることになったそうです。
こうして、デザイン構想後2か月の施工を経て赤べこ車「カリン」が誕生しました。
疫病退散と、本当に暮らしやすい環境を願って
「電気自動車の普及」が当初の目的であった「カリン」。いつ頃からか「見かけると願いが叶う」と噂が広まるようになったそう。これをきっかけに、カリンのプロジェクトは大きく変化しました。
「企画当初からさまざまな出会いやご縁をいただき、コラボレーションによる相乗効果と『世界に一台の縁起物のクルマ』となることを見越して、製作途中で改めて企画名『願いが叶う車プロジェクト』と命名しました」(菅野さん)
カリンが完成したのが2020年2月下旬。くしくも、新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめてきた頃です。
「赤べこ伝説は諸説あり、長く語り継がれていますが、一説には、赤べこに描かれた丸い模様は天然痘を表し『子どもの疫病を払う』、『健康を祈願する』、『無病息災』などの思いが込められているといわれています。外出自粛が求められている生活なので、数ある赤べこの御利益伝説の中から、特に「疫病退散」を打ち出しています」(菅野さん)
現在、「変化の求められる仕事や生活、エネルギーの正しい有り方」について、学生や企業、高齢者など各方面の意見交換を行い、コンセプトを理想的な暮らし・日々の実現化を目指す活動にシフトしているとのこと。
少しでも早い新型コロナウイルスの終息への願いと、医療関係者をはじめ、多くの人へのエールとなっているのです。
自分の街にもやってくる、かも!?
プロジェクトが始まり、地元の福島県では、感染予防対策を取りながら各地を走行しているという「カリン」。県外では、富山県、埼玉県、静岡県をすでに訪問しています。今は世情を鑑み、一旦お休み中ですが、新型コロナウイルスが終息したら、日本各地の名所やパワースポットを巡る予定だそうです。ちなみに遠方へ行くときは、軽トラックに積んで現地まで移動するとか。
「静岡を訪れた時、県公式キャラクター『ふじっぴー』と共演でき、テレビ放映翌日には、宿泊先の近くに住む人や会津出身者がとても喜んでくださいました。また、赤べこを知らない人から『ダルマですか?』と尋ねられたこともありますが、どちらも縁起物なので好きに捉えていただけたら、と思います」(菅野さん)
「カリン」は、協力体制とオファーがあれば、御利益と無病息災を願い、各地へ訪問するとのこと。見るだけでなんだかちょっといいことがありそうな気がする赤べこ車「カリン」。自分の街で走っているところを見てみたいものですね。
<取材協力>
OFFICE ZERO’S
https://zero-s.jimdofree.com/
(取材・文:別役ちひろ/写真:OFFICE ZERO’S/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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