クルマ好きのロマンが詰まってる! 公道も走れるレーシングカーの世界
クルマ好きの憧れのひとつと言われるのが、レーシングカーを公道で走らせること。通常、レース車両は公道を走る車両の基準から外れているので、ナンバープレートを取得して一般公道を走らせることができません。
しかし、世の中にはレーシングカーとして開発された車両をベースに、公道走行可能に仕立てたクルマも存在します。今回は、そんなクルマ好きにとって胸アツなマシンたちを6台紹介しましょう。
ボディをカーボン製パネルで覆う「ウラカンSTO」
ランボルギーニがレースで培ったテクノロジーを盛り込み、「スーパー・トロフェオ」(英語表現だとスーパー・トロフィー)というワンメイクレースの走りと興奮を継承した公道走行可能なモデルが、「ウラカンSTO」。
STOには、「スーパー・トロフェオ・オモロゲーション」の略で、「公道走行の認証を得たスーパー・トロフェオ」という意味が込められています。
その特徴は、外装の仕立て。まるでレーシングカーのように、カーボンファイバーのパネルをまとっているのです。エンジンは640psで、停止状態から100km/hまでの加速は、たったの3秒。最高速度は310km/hだそうです。なんという高性能!
レーシングマシンよりも高出力エンジンを積むマクラーレン「620R」
イギリスのスーパーカーメーカー、マクラーレン。「570S GT4」というレース専用マシンをベースに、公道走行可能な仕様としたのが、マクラーレン「620R」です。
シャシーは、レーシングカーと同様にカーボンファイバー製。620psのエンジンは、レースの規則に則る必要がないため、レーシングマシンに対して50psもアップしたもの。元となったレーシングカーよりも、パワフルになっているというのがおもしろいですね。最高速度は322km/h。
公道最速? 「アルティマRS」はかつてのレーシングカーがモチーフ
もっともハイパフォーマンスなエンジンは、なんと1200ps! 最高速度はまさかの402km/h!!
そんな耳を疑うようなスペックを誇るのが、このクルマ。イギリスの少量生産車メーカー「アルティマ・スポーツ」が、2020年秋からデリバリーをはじめた「アルティマRS」です。
正確にいうとこのクルマは、レーシングマシン直系ではなく、公道走行を前提に作られたロードカーです。しかし、見ての通りデザインも構造もレーシングカーそのもの。まさに公道を走るレーシングカーと呼ぶのにふさわしい存在といえるでしょう。
イメージは、1980年代から1990年代にかけて日本でも人気があった「グループC」と呼ばれるレーシングマシン。それを現代に蘇らせるというコンセプトで作られました。
レーシングカーとしか思えないこのルックスで、堂々と公道を走れるのだからビックリですね。エアコンなどの快適装備も搭載されていて、日常使用もOK。同社は日本語のウェブサイトもあり、日本でも購入可能です。
メルセデス・ベンツが作った、レーシングカーの公道仕様
かつて存在した「GT1」というレース車両の規定には、「公道走行用の車両を作らなければならない」という決まりがありました。その決まりを満たすために、メルセデス・ベンツがレース車両をベースに公道走行用に仕立てたのが「CLK GTR」。見るからにレーシングカーらしいスタイルですが、中身もレーシングカーに最小限の仕様変更を行っただけのモンスターです。
エンジンは排気量6リットルのV型12気筒で、612ps。レースの規定を満たすには1台を生産すればいいのですが、このCLK GTRは、25台が作られて市販されました。中にはオープンモデルや右ハンドル仕様もあり、日本にも輸入されています。
市販されなかった、日産の公道走行可能なレーシングカー
「CLK GTR」と同様に、日産がレース車両の規定を満たすためにレーシングカーの公道走行用モデルとして作った(建前上はレーシングマシンのベースモデルにあたる)のが、「R390ロードカー」です。1998年、ル・マン24時間耐久レースに出場するにあたって制作されました。
エンジンは排気量3.5リットルのV型8気筒ツインターボで、出力は350ps以上。「市販したら1億円以上」といわれ、2台が作られましたが、結局市販されることはありませんでした。2台のうち1台は日産が所有し、歴代モデルの保管庫に収められて展示されているほか、ときどき日産のイベントなどでも公開されています。
ヘッドライトはZ32型「フェアレディZ」の部品を使い、丸いテールランプは「スカイラインGT-R」をモチーフとするなど、デザインは日産の高性能車をイメージさせる仕上げになっているんですよ。
トヨタは発売することを前提に鋭意開発中
実は、トヨタもレーシングカーをベースにした公道走行可能なクルマを鋭意開発中。市販に向けた開発であることが公言されています。
「GR Super Sport(仮称)」と呼ばれるそのクルマのベースとなるレーシングカーは、2018年と2019年にル・マン24時間耐久レースで総合優勝を果たした「TS050 HYBRID」。車体構造やV6ツインターボエンジン、ハイブリッドシステムなど、レーシングカーのメカニズムを可能な限りダイレクトな味付けとしたまま公道走行用に最適化して採用される予定ですから、市販が楽しみですね。
このプロジェクトは「レーシングカーからスポーツカーを作る」というトヨタの新しいチャレンジ。ハイブリッドで環境にも配慮しつつ徹底的にパワフルで、次世代のスーパースポーツカーを目指します。
普通の車では味わえない「存在感」も大きな魅力
ここで紹介したモデルはすべて、改造車ではなく自動車メーカーが製造したものです。レーシングカーをベースにしたスポーツカーの凄さはなんといっても「速さ」ですが、もちろん公道ではその性能を使い切ることなんてできません。
しかしながら、これらの車両が公道でも思いきり発揮できることがあります。それは「存在感」。普通の市販車では味わえないその世界を楽しめることが、公道を走れるレーシングカーの最大の魅力なのかもしれませんね。
(文・写真:工藤貴宏/写真:アルティマ・スポーツ、ランボルギーニ、マクラーレン、メルセデス・ベンツ、日産自動車、トヨタ自動車/編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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