映える「首都高ジャンクション」 その構造とは?

思わず写真を撮りたくなるような、複雑な構造をしたジャンクションが多い首都高速道路。ひと目見ただけでワクワクする佇まいのジャンクションには、どのような構造上の特徴があるのでしょうか? 壮観な5箇所のジャンクションについて、首都高速道路株式会社にお話を伺いました。

分岐の躍動感はまるで生きもの! 『箱崎ジャンクション』

  • 「ヤマタノオロチ」とも形容される複雑な構造はフォトスポットとしても人気を博す

――なぜこのように独特な構造をしているのでしょうか?

「箱崎ジャンクションは首都高速6号向島線と9号深川線がY字に分岐するジャンクションであり、ジャンクションの下層部が各方向への進路変更を可能にする「ロータリー」となっています。そのためロータリーへの連結路も加わり、複数の橋梁が重なり合う構造をしています。向島線の下り線は当初、一番右側の車線のみしか深川線に分岐されていませんでしたが、渋滞緩和を図るため一番左側の車線からの連結路を増設しています」

路線が分岐するだけでなく、ロータリーへの連絡路が設けられていることで複雑な構造に見える箱崎ジャンクション。「機能美」と呼ぶにふさわしい佇まいがジャンクション好きな人々をとりこにし、写真撮影の定番スポットとして有名です。渋滞緩和を目的とした連絡路が増設されたことにより、利便性も大幅に向上されています。

交差点を渡りながら見上げたくなる『西新宿ジャンクション』

  • 山手通りと甲州街道が立体交差する初台交差点の真上でどっしりと存在感を放つ

――ランプの急勾配や急カーブが特徴的ですが、それはなぜでしょうか?

「西新宿ジャンクションの建設にあたっては、地下トンネルである中央環状線と高架構造である4号新宿線を接続させる必要がありました。地下と高架で両者の高低差が大きいこと、また都市部の狭い空間に設置するため、急勾配・急曲線の構造となっています」

都心にジャンクションを造るとなると、そもそも利用できる空間が少なく、既存の建物や道路との兼ね合いをはじめとした数多くの問題に直面します。さまざまな制約のなかで地下トンネルと高架構造をつないだ結果として、急勾配や急カーブが生まれたというわけですね。こうした背景を知ると、ただ通過するだけだったジャンクションの存在に親しみが湧いてきます。

ひらけた環境に悠々と佇む『両国ジャンクション』

  • 隅田川上にゆるやかな曲線を描き、付近の公園からは夜景が楽しめる

――川の上にどうやってジャンクションをつくったのでしょうか?

「両国ジャンクションは隅田川の河川内に水門が存在したことなどから、一部、橋脚が設置できない部分がありました。そのため、7号線の桁から6号線の桁を吊り下げる構造を採用しています」

首都高には両国ジャンクションのほかにも江戸橋や堀切など、水上に位置するジャンクションが点在しています。水上という環境の制約を受ける中でも、構造を工夫することでジャンクションの設置を可能にしているのは見事としか言いようがありません。川の上にあるジャンクションは維持管理に船が必要となるため緊急時の対応が困難という問題点も見受けられますが、たとえば神田橋〜江戸橋ジャンクション付近では「日本橋区間地下事業」により路線を地下化するプロジェクトが開始されるなど、より安全で快適な道路づくりが進められています。

橋脚の高さはなんと30m以上! 『生麦ジャンクション』

  • 都心のジャンクションとはひと味違った抜けのいい眺めが特徴

第三京浜・港北ジャンクションから横羽線・生麦ジャンクションをつなぐ「横浜北線」は2017年3月に開通。さらに延伸路線の「横浜北西線」とつながり、東名高速と横浜の中心市街地を結ぶ新ルートとして話題になりました。

――高さのある橋桁が印象的な構造ですが、橋梁を架ける工事はどのように行われたのでしょうか?

「生麦ジャンクションの橋梁の架設にあたっては、横羽線の上を跨ぐ本線・連結路がいくつもあることから、通行止めや規制を伴う夜間架設を何度も実施。通行止めにあたっては、他の路線へスムーズに迂回していただくよう、高速道路上の文字情報板や横断幕、チラシ、ポスターなどで事前に広報を行いました。横羽線の上を架設する際には日本国内に4台しかない1250tクレーンを用いた大ブロック桁架設も実施しました」

いくつもの路線をつなげるジャンクションは、工事段階においても安全性への配慮がとても重要になるわけですね。巨大クレーンを用いた架設の様子は『きたせん』のサイト(https://www.shutoko.jp/ss/kitasen/)に詳しく掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。

大きなとぐろを巻く複層構造『横浜港北ジャンクション』

  • 複数の路線や連絡路が重なる構造は遠目にも存在感を発揮

――横浜港北ジャンクションが高い場所にあるのはなぜでしょうか?

「横浜港北ジャンクションはすでに開通している第三京浜と接続するため、トンネルではなく地上につくる必要がありました。ここでは道路が5層に重なるので、最も高い位置が地上からの高さ約40mとなっています。地上の1階部分が一般道路の新横浜元石川線および川向線、2階が第三京浜、3階が横浜北西線の青葉方面、4階が横浜北西線から横浜北線の生麦方面、5階が第三京浜や出入口から青葉方面へつながる連結路となっています」

道路が5層も重なってぐるりと回るジャンクションの形状は「スパゲティ」に例えられたりもするのだとか。トンネルから出たあとに見晴らしのいいジャンクションを通過するだけでも、ドライブ中の気分爽快度がアップしそうですね。

 

見て、撮って、走って楽しい首都高ジャンクションですが、その構造上、分合流が連続する箇所があり車線数も一定ではありません。中には合流・分岐区間が比較的短い箇所もあるので、走行前に動画で経路を確認できるコンテンツも用意されています。ドライブ前のシミュレーションやおうち時間の楽しみとして、活用してみてはいかがでしょうか。

『知れば万全!首都高ドライブ動画』
https://search.shutoko.jp/movie/point_jct.html

<取材協力>
首都高速道路株式会社
https://www.shutoko.co.jp

 

(取材・文:吉田奈苗/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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