時代によってどう変わってきた? 人気ボディーカラーの変遷

どれを選ぶかによって、同じ車種でも見え方をガラリと変えるのが「ボディーカラー」です。人気のボディーカラーは景気によって左右されるとはよくいわれていますが、実際のところどのような関連があるのでしょうか? 毎年「世界自動車人気色調査」を行っているアクサルタコーティングシステムズ合同会社のデータをもとに、主に日本を含むアジアの人気ボディーカラーがどう変化してきたか、年代ごとに紹介します。

  • 1953年からの北米、アジア、ヨーロッパ、南米における人気ボディーカラートップ5一覧

【1970年代】社会問題への対策がボディーカラーにも変化をもたらす

高度経済成長期を経て、大阪万博の開催やオイルショックが起こるなど激動をみせた1970年代。自家用車やオートバイが少しずつ普及し、人々の生活にクルマが溶け込み始めた時代です。

北米では1970年代前半にブラウン・ベージュ・クリーム系、あるいはグリーンのボディーカラーが主流で、後半になるとブルーが人気となっていました。日本を含むアジアではシルバーグレー系が不動の人気で、次いでホワイトが並び、北米に比べ落ち着いた色味が支持されていたようです。というのも、70年代の日本は公害問題が取り沙汰され、自動車の排気ガスへの対策も強化。環境に配慮したクルマづくりへとシフトする気運の中で、ボディーカラーも地味なものがラインアップされる傾向がありました。

【1980年代】景気が上向き、浮き足立った世相が浮き彫りに

バブル期といえば、カラフルできらびやかなファッションを楽しむ若者たちの姿が浮かぶという方も多いのではないでしょうか。バブル絶頂期へ向かい、景気が上向いていたこの時代。人気ボディーカラーは意外にも、1980年代の10年間、ホワイトが首位を譲らず不動の地位を確立していました。

「人気ボディーカラーは景気に左右される」説の雲行きが怪しくなりそうなところですが、注目すべきは2位以降にレッドがランクインしている点です。1970年代では、79年に4位で一度ランクインしただけのレッドが、1983年〜1986年までは4年連続で2位に選ばれています。華やかな時代の空気感に伴って人気のボディーカラーも変化したことがデータに反映されたといえるでしょう。

【1990年代】アウトドア志向の車種が流行し人気カラーも変化

好景気が徐々に陰りを見せ、バブル崩壊後は一転して不景気へと突入。世の中が明るさを失っていくのと時を同じくして、人気ボディーカラーも変化を見せます。1979年から1992年まで14年連続で首位をキープしていたホワイトが、1993年にシルバーグレー系にその座を譲り、そのまま1999年まで7年連続でトップを維持。これまで上位に入っていたレッドはバブル崩壊とともに姿を消し、トップ5に入ることがなくなってしまうという切ない流れに……。

レッドと入れ替わるようにして、1993年からはそれまでランク外だったグリーンやブラックがトップ5に食い込むようになりました。この頃のクルマを取り巻く環境は「RVブーム」と呼ばれ、これまで人気を集めていたセダンやクーペといったボディータイプに代わって、現在でいうクロスオーバーSUVやステーションワゴンのようなモデルが登場。RVブームをリアルタイムで経験した方なら、ブラックや深いグリーンのボディーカラーを取り入れた車種が印象に残っているのではないでしょうか。こうした流行が調査結果に反映されるのはなかなか興味深いですね。

【2000年代以降】シンプルでベーシックなカラーリングが根強い人気

 

2000年以降は若者のクルマ離れが叫ばれるようになり、インターネットの普及をベースにスマートフォンやソーシャルメディアの利用が浸透するなど、テクノロジーの進化が目覚ましい時代に突入しました。

ここ20年の人気ボディーカラーはホワイト、ブラック、グレー、シルバーに対する支持が集中。世界的にみてもこの4つのカラーリングが新車の81%を占め、いかに堅い人気かがわかります。シルバーは減少傾向が続いていますが、反対にグレーはシェアを伸ばしており、シルバーよりもグレーの方がトレンドとして捉えられているのだとか。ブラックは高級車での人気が高く、車種のクラスによって人気ボディーカラーに変化がみられるというデータは、日頃見かけるクルマの塗色からも想像がつきやすいですね。また、人気ボディーカラーには住居やファッションのトレンドも影響し、現在はグリーンブルーやグリーンイエローといった色合いが最新トレンドとして同調しているそう。こうした裏付けを知ると、今後クルマのボディーカラーにはどんな個性が与えられるのかを予想するのが楽しくなります。

景気があまり良くないとクルマの購入に慎重さが増しますし、リセールへの意識を持ち、飽きがこないカラー選択をしたい心理が働きますよね。将来的に日本の景気が上向いて、個性的なボディーカラーを施したクルマに風景が彩られることを期待したいところです。

<取材協力>
アクサルタコーティングシステムズ合同会社
https://www.axalta.com/jp/ja_JP.html

(取材・文:吉田奈苗/写真:アクサルタコーティングシステムズ合同会社/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

コラムトップ