円窓が印象的!手作りの木造小屋が目を引く「道草Hütte」<キッチンカー探訪>

「道草Hütte(ヒュッテ)」は、国産在来種のオーガニックそば粉で作られるガレットをはじめ、グルテンフリーの焼菓子やオーガニック野菜のデリなど、体にやさしい「食」を販売するキッチンカーです。その見た目が手作り感満載! 特に丸い窓が印象的です。

ペーパードライバーからキッチンカーオーナーの夢は譲れない

「食で何か起業したい」との思いから「道草ヒュッテ」の活動をはじめた店主のadotanさん。「アドベンチャーや探検が好き」ということから友人が付けた名前で活動しています。2019年11月から始めたそうですが、最初はお祭りの屋台出店やシェアキッチンでのランチ営業で腕を磨き、その間にヒュッテ号を造っていきました。

  • ヒュッテ号のベースとなったダイハツ「ハイゼット」

ヒュッテ号はダイハツ「ハイゼット」トラックの2019年式を使用。

「スマートアシストⅢtが搭載されているのがこの車種だったので決めました。当時の私はペーパードライバーだったため、安全機能の充実が重要でした。出張ドライバー講習をみっちり受けて、運転特訓に1年を費やしたほどです」(adotanさん)

運転に自信がなくても、「やってみたい!」という気持ちがあればキッチンカーオーナーにはなれる。まさにadotanさんは夢を形にしました。

「思い描くものはつくってしまえばいい」

adotanさん自らデザイン・DIYをして造られたヒュッテ号。そのコンセプトは「都会の山小屋」、「自然でつながるキッチン」です。

  • 愛らしくて、目を引くヒュッテ号(写真:Kayoko Shibata)

「祖父は書道家、父はプロダクトデザイナーだった影響で、アートやデザインに囲まれて育ちました。私も美大で絵画を学んだため、衣食住において「無いものはつくる」という発想がベースにあります」(adotanさん)

特徴的な円窓は、ガレットの鉄板をはさんでお客さんと目線が合う高さに。鉄板でガレットを焼く作業をデモンストレーションとして捉え、試行錯誤しながら1センチ単位で上下させ焼き台の位置を調整しました。

  • 特徴的な円窓から見える作業中のadotanさん(写真:Kayoko Shibata)

材料にも強いこだわりがあります。外装は、国産の「木曽サワラ」という木材を使用。安価な輸入材ではなく、あえて国産の材木を使用することで、「日本の林業を応援したい」という思いを込めています。

  • 光をふんだんに取り込めるデザイン

他にも、キッチンカーでは珍しい高性能断熱材「ネオマフォーム」を壁に使用。屋根は「ツインカーボ」というポリカーボネートを中空構造に加工したもので、耐衝撃性・耐候性・耐熱性があり、しかも軽量。透過性があるため、内部はとても明るく、開放感があるのだとか。体に優しいドイツの自然派塗料「HiLaRi」で内壁を塗り、床は天然素材のコルクを敷いている、と空間作りへの徹底ぶりは目を見張ります。

「暖房、照明などに頼らない、なるべく無駄なエネルギーを使わないようなエコな造りにしました。おかげで自宅より、キッチン小屋にいる方が快適です」(adotanさん)

製作過程はインスタグラムで発信

ヒュッテ号が作られる過程はハッシュタグ「#スモールキッチンカープロジェクト」としてインスタグラムでも発信しています。

  • キッチン小屋の製作途中

「業者さんにすべてお任せするのは楽かもしれませんが、壊れたときに自分で直せないのは不便だと思いました。昔、古民家再生プロジェクトに関わったことがあり、大工さんから『プロじゃないんだから壊れてもいいんだよ。自分で造れば壊れても直せるでしょ』と言われたことが印象的でした」(adotanさん)

また、「スモールイズビューティフル(小さいことは良いこと)」という言葉にもadotanさんにとって思い入れがあります。

「企業で働いていた時は、会社というバックボーンに支えられて大きなお仕事もさせていただきました。一方で常に成果が求められ、精神的にどこか息苦しさも。そのような経験から『小さな商いで起業しよう』と思い立ち、軽トラの荷台に収まる小さいお家のようなキッチンのイメージが思い浮かびました」(adotanさん)

  • 荷台にキッチン小屋を載せて。完成も近い

小さいキッチンカーを自分の手で一つずつ造っていく。その過程をちゃんと確かめていくように、軽トラの何もない荷台に少しずつ「キッチン小屋」ができていく様子を記録していったのです。

大切だからしっかりお手入れ

「木の耐久性を考えると、いつかお別れの日が来ることは覚悟しています。営業時間は12時〜14時30分までの2時間半なのですが、閉店後のお掃除とメンテナンスにも同じく2時間半かけています。これからも大事にしていきたいです」(adotanさん)

大切に、慈しむように相棒の手入れをする。頭でわかっていても、毎回、というのはなかなかできないことです。それだけadotanさんのヒュッテ号への愛情が伝わります。

  • 左:「羽根つきチーズとハムのガレット」(税込み540円)、右のガレットは試作品

一つ一つ熟考し、素直に丁寧に造られた「道草Hütte」。丁寧な作業はガレットや焼き菓子などにも表れています。主に東京の西エリアで出店していて、詳しい場所や日時はインスタグラムに掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。

<取材協力>
道草Hütte
https://www.michikusahutte.com/
https://www.instagram.com/michikusahutte/

(取材・文:別役ちひろ/写真:道草Hütte/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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