トラックがさまざまな大きさのタイヤを装着しているのはなぜ?
働くクルマの代表格であり、物流の要として日本中に荷物を運ぶトラック。車体にはいろいろなサイズのタイヤ(車輪)を数多く装着していますが 、その理由は意外と知られていません。今回はトラックやバスをはじめとする商用自動車メーカー「日野自動車株式会社」、渉外広報部広報グループスタッフに、トラックが大きなタイヤを使う理由を伺いました。
タイヤのサイズを選ぶ基準とは?
トラックのタイヤは大きいというイメージがありますが、実は小さなタイヤを使うトラックもあるそうです。
「一概にすべてのトラックが大きなタイヤを使っているわけではありません。トラックの使い方によって、最適なタイヤサイズは異なります。乗用車の世界でいえば、車重の軽いコンパクトカーは小さなタイヤ、重たいワンボックスやSUVなどは大きなタイヤになるのと同じです。ただ商用車はスポーツ走行性能やファッション性でタイヤサイズを変えることはありません」(広報グループスタッフ)
最適なタイヤサイズを選ぶには「タイヤの輪荷重」と「車軸の軸重」、「トラックの総重量」の、3つの要素が関わってきます。
タイヤの性能をあらわす「輪荷重」
タイヤにおける輪荷重は「タイヤ1本にかけることのできる重さ」のことです。タイヤにはそれぞれ輪荷重が定められており、タイヤサイズが大きくて接地面積が広いほど、そして空気圧が高いほど(輪荷重を)大きくすることができます。道路を走行するタイヤの輪荷重は最大5トンまでと法律で定められています。
トラックに見られる、後輪に同サイズのタイヤを並列に繋げて装着する方法を「ダブルタイヤ」と呼びます。ひとつの車軸(左右の車輪を繋ぐ軸)に合計で4本のタイヤを装着しているため、2本のタイヤを装着している時と比べて倍近くの重量を支えることができます。
車軸の性能をあらわす「軸重」
軸重は「1本の車軸にかけることのできる重さ」のことです。エンジンの動力をタイヤに伝える駆動軸も車軸です。
大きなトラックは2本以上の車軸を有します。1軸のみを駆動軸にするか、他の車軸も駆動軸とするかは車種によります。軸重は1軸につき最大10トンまでと法律で定められていますが、一部、エアサスペンションを装備した2軸のトラクター(トレーラーを牽引する車両)は、緩和措置として最大11.5tまで認められています。
トラックの重さをあらわす「総重量」
総重量は車両の重量と積載物の重量、乗員の重量までを含めた重量のことです。どれくらいの積載物を積めるかはトラックにより異なります。総重量は最大25トンまでと定められています。
「輪荷重も軸重も限度が定められているため、トラックの使い方によってタイヤサイズや本数を設定しています。たとえばダンプなどの一般的なトラックは、全体の重量と荷台の高さのバランスで大きなサイズのタイヤを装着します。
一方で「荷台の容積を多くとりたい」とか、倉庫などの荷物の積み下ろしの関係で「荷台の高さを低くしたいが積載は欲しい」という場合などは、タイヤサイズを小さくし、そのぶん軸とタイヤの本数を増やすことで低床化をはかるパターンがあります」(広報グループスタッフ)
トラックのタイヤは乗用車のタイヤより丈夫なように見えますが、構造的な違いはあるのでしょうか?
「構造からみれば乗用車用と商用車用のタイヤに差はありません。トラックのタイヤはサイズが大きいぶん価格も高くなるので、リトレッド(※)というタイヤのトータル寿命を延ばせる方法もあります」(広報グループスタッフ)
※リトレッドは、走行で摩耗したタイヤのトレッド面(道路に接地するゴム層の面)を削り、新しいゴム層を貼りなおす再利用方法
トラックのタイヤは高価なためリトレッドに対応するなど、経済性を良くし、環境への負荷を低くするための工夫が施されているようです。
トラックは一概に大きいタイヤを装着するわけではなく、きびしい規制の中でトラック自身の大きさやどのくらいの重量のある貨物を乗せるか、荷台や荷室の位置から、最適な大きさのタイヤと本数を選択(その設定を持った車両を選択)することがわかりました。街なかでトラックを見かけた際、そのタイヤの大きさと本数から、どのような荷物を積むために設定された車両なのかを予想してみるのもおもしろそうですね。
<関連リンク>
日野自動車株式会社
(文:糸井賢一/写真:日野自動車株式会社/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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