なぜ？ 無料の洗車スペースが首都高の「時間貸し駐車場」にある理由

東京、特に都心部のマンションなどに住んでいるクルマ好きの中には、こんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか？　それは、「自分で洗車ができる場所がない！」ということ。

もちろん、ガソリンスタンドや専門店などに洗車を任せるのもいいし、洗車機でセルフ洗車ができるガソリンスタンドも増えています。でも、自分で手洗い洗車するスペースはなかなかありません。しかし、東京には都心部ながら、誰でも使える洗車スペースが存在するのです。しかも、時間貸し駐車場の中に！

洗車スペースがあるのは、首都高速道路株式会社のグループ会社である、首都高速道路サービス株式会社が管理・運営する時間貸し駐車場。「千駄ヶ谷駐車場」「日本橋兜町駐車場」、そして「汐留駐車場」です。

千駄ヶ谷駐車場は東京オリンピック／パラリンピックの開会式が行われた新国立競技場のすぐ近く、首都高速4号新宿線の高架下にあります。日本橋兜町駐車場は金融街として知られている兜町、そして汐留駐車場は、新橋近くの首都高都心環状線高架下。いずれも首都高速道路の下に時間貸し駐車場があり、その中に洗車スペースがある形です。

では、どうして高架下の駐車場に洗車スペースがあるのでしょうか？　首都高速道路の広報課に尋ねてみたところ、「都心に洗車スペースがあまりないので、駐車場を利用するお客様に向けたサービスの一環として用意した」との答えが返ってきました。

一般的なコイン洗車場のように高圧洗浄機が用意されているわけではなく、水道に接続されたホース（ホースリール＋シャワー）のみとシンプル。でも、簡単な洗車ならこれで十分です。

ホース以外に洗車道具などは備わっていないので、バケツやスポンジ、ふき取り用のウエス、そしてシャンプーといった洗車グッズは、自分で用意する必要があります。お気に入りを揃えておくといいでしょう。

こうした駐車場内にある洗車スペースを使うために必要なのは、時間貸し駐車場に入るための駐車場料金のみ。つまり、滞在する時間に応じた駐車料金相当分はかかりますが、それさえ払えば誰でも洗車スペースや水道を利用可能というわけ。水道を使うための料金はかかりません。ちなみに千駄ヶ谷駐車場、兜町駐車場、汐留駐車場とも、駐車料金は250円/30分です（2021年8月現在）。

利用に当たっての注意事項を先の首都高広報課に聞くと、「洗車に必要な道具などはお客様自身でご用意ください。そしてゴミは必ずお持ち帰りください」とのこと。さらに千駄ヶ谷に関しては、周囲に駐車車両がありフェンスの向こうは街路になっていることもあり「洗車時は街路や周囲のクルマに水などが飛ばないよう気を付けてください」といいます。また、洗車スペースの予約や空き状況に関する問い合わせは行っていないそう。

とはいえ、「日曜日、祝日、そして夜間は駐車場が比較的、空いているので狙い目」だそうです。利用は24時間いつでもOK！

洗車スペースの数は少ないので、洗車が終わったらすぐに移動して、拭き上げやワックスがけなどは別の場所で行うといいでしょう。

洗車スペースについて調べていてふと、「なぜ首都高が駐車場を運営しているのだろうか？」と疑問が湧きました。これについても首都高広報課に聞いてみたところ、「首都高が整備され始めたころに社会問題となりはじめた“あること”に関係がある」とのこと。

その”あること”とは、路上駐車です。

慢性的な駐車場不足が路上駐車の一因となっていた当時、1964年の東京オリンピックに向けた首都高速道路建設と並行して、都市計画のひとつとして高架下を利用した駐車場が作られたのでした。そういった背景もあって今も首都高は駐車場の運営を行っているわけです。ちなみに、公共駐車場としての意味合いもあるため、比較的抑えた駐車料金となっています。

なお、日比谷公園の地下には高速道路会社の「NEXCO東日本」が運営している「日比谷駐車場」があり、こちらの時間貸しスペースにも洗車スペースが用意されています。都心部の自動車ユーザーはもちろん、郊外のクルマ好きが夜の都心ドライブに出かけたついでに洗車をする。そんな使い方も良さそうですね！

＜関連リンク＞
首都高ドライバーズサイト　駐車場ページ

（取材・文・写真：工藤貴宏　編集：木谷宗義＋ノオト）

［ガズー編集部］