クルマのリサイクルってどのくらい進んでいるの?

ユーザーはクルマを購入する時に「リサイクル料金」を支払うことが義務付けられています。では、使用済みとして廃車となったクルマはどのようにリサイクル処理が行われているのでしょうか? リサイクル方法やリサイクル後の素材の行方、リサイクル率などをお伝えします。

適正な処理をするために導入されたリサイクルのルール

どんな製品も永遠に使い続けることはできません。クルマも同様で、日本では2000年代前半には毎年約400万台ものクルマが使用済みとなっていました。
そうした使用済みのクルマは、有用な金属・部品を含み資源として価値が高いものであるため、解体事業者や破砕事業者における売買を通じて流通するなかでリサイクルが行われていました。

その一方で、金属などの素材や部品をリサイクルした後に残る“シュレッダーダスト(ASR)”を処理するための埋め立て処分場の逼迫、鉄スクラップ価格の低下の影響などにより、逆有償化(自動車ユーザーが処理費を負担し使用済自動車を引渡す状況)も起こっていました。
あまりの状況の悪さに使用済自動車の不法投棄や不適正処理の懸念が生じる状況だったのです。

また、かつての使用済自動車のリサイクルでは、地球温暖化などに影響を与えるカーエアコン冷媒(フロン類)の確実な破壊処理、専門技術を要する「エアバッグ類」の適正処理も、十分ではありませんでした。

そのような状況を正して、使用済みのクルマを適正に処理するために2005年よりスタートしたのが自動車リサイクル法です。
この法律によって、自動車メーカーや輸入事業者が、エアコンのフロン類/エアバッグ類/シュレッダーダスト(最後に残ったプラスチックやゴムなど)を引き取って適正な処理を施し、ユーザーは処理費用を「リサイクル料金」として前払いすることになりました。

こうしたルールの導入により、現在では、クルマを処理して、さまざまな方法でリサイクルし、最後の最後に埋め立てられるのは、クルマ1台に対して、わずか1%程度にまで減っています。

  • 廃車されたクルマが解体工場で最初に受ける作業が、「廃油・廃液の抜き取り」。燃料やオイルなどが抜かれます

最初に使用済みのクルマをバラバラに解体

中古車としての需要が無くなり、使用済みとして廃車されたクルマがやってくるのは解体工場です。ここでは、「廃油・廃液の抜き取り」、「フロン類の回収」、「エアバッグ類の処理」、「部品の取り外し」、「車体の解体」と進みます。

「廃油・廃液の抜き取り」は、ガソリンやオイル類の抜き取りです。抜き取られたガソリンは、工場などで再利用されることもあります。エアコンから「フロン類の回収」を行うのも重要な作業です。地球環境に悪影響を及ぼすフロン類は確実に回収し、自動車メーカーにより無害化されます。

「エアバッグ類の処理」は、リサイクル工程で作動しないように、専門の機械を使って通電させ作動済みにします。この「フロン類の処理」と「エアバッグ類の処理」には、ユーザーの支払ったリサイクル料金が使われます。

「部品の取り外し」では、まだ使える部品をリサイクル部品として再利用するために丁寧に取り外していきます。バンパーやヘッドライトなどの外装部品から、ハンドルやシートといった内装部品、エンジンやミッションといった、クルマを構成する様々な部品が再利用されるために取り外されます。残った車体はプレス機でつぶされ、破砕工場へと送られます。

  • エアコンに使われる冷媒のフロン類は解体前に抜き取られ、専門事業者により無害化されます。これにはリサイクル料金が使われます

  • クルマを解体する前に、エアバッグは通電して作動させ、安全に作業できるようにします。これにもリサイクル料金が使われます

資源として再利用するために細かく砕く

プレス機でつぶされた車体は、破砕工場の巨大なシュレッダーによって細かく砕かれます。そして細かく砕かれた車体は、磁選機という磁石を使った機械で鉄とそれ以外に分別。さらに金属の色や比重で分別できる選別機や人の手によって、より細かく分別を行い、鉄だけでなく、銅、アルミニウムなどの金属が回収されていきます。

それらの金属が回収された後に残ったものが、プラスチックやゴム類からなるシュレッダーダストです。これも別の工場に運ばれ、原材料や燃料として使われます。そして、最終的にクルマ1台に対して、わずか1%程度が埋め立てに回されます。

  • 部品を取り外して解体された車体は、シュレッダーによって、細かく砕かれていきます

  • 細かく砕かれた車体を、磁選機で鉄とそれ以外に分別。さらに様々な選別機で分別し、最後は手作業で素材別に分別していきます

自動車メーカーによるリサイクルへの努力

今回は、廃車後のリサイクルを紹介しましたが、自動車メーカーがクルマをつくるときも、リサイクルのことを想定されています。バンパーなどの部品は取り外しやすいように設計されていますし、プラスチック部品もリサイクルしやすいような製造方法が導入されています。また、新車を製造するための部品の原料にリサイクルされた素材を使うこともあります。

持続可能な社会のためには、クルマは作るだけでなく、使い終わった後のことを考えることも重要です。自動車リサイクル制度は、ユーザー、自動車メーカー・輸入事業者、引取事業者、解体事業者、破砕事業者などの自動車の産業界が一体となった取組みです。それぞれが役割をきちんと果たすことにより、使用済自動車のほとんどがリサイクルされています。

<関連リンク>
公益社団法人 自動車リサイクル促進センター

(文:鈴木ケンイチ/写真・取材協力・監修:公益社団法人 自動車リサイクル促進センター/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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