キャンピングカー「バンコン」を日本一販売するビルダー・トイファクトリーを取材!
TOYOTAのハイエースをベース車体としたキャンピングカー「バンコン」が人気を博しています。そのバンコンの国内総売上の30%以上を占めるのが、岐阜県可児市に本社を構えるトイファクトリー製の車体です。
使い勝手を重視したバンコンの先駆けであり、こだわり抜いたクオリティによって全国のキャンパーから支持を集めています。納車まで1年半待ちの状態が続くほど人気のキャンピングカー、そしてトイファクトリーの歩みとこだわりについて岐阜本社の店長・竹縄大樹さんに話を伺いました。
幼少期の家族旅行がルーツとなり、キャンピングカーを製造
コロナ禍を追い風に盛り上がりを見せるアウトドアブームで、キャンピングカーの人気が高まっています。
キャンピングカーには、トラックなどをベース車体としてキャビンを取り付けた「キャブコン」、
マイクロバスをベース車体にした「バスコン」、
軽のトラックやワゴンを改装した「軽キャンパー」、
ハイエースなどのバンをベースとして改装したキャンピングカー「バンコン」、
とさまざまな種類があります。
トイファクトリーは主にバンコンを取り扱っており、コロナ禍で売上が倍増。ハイエースのバンコンモデルの製造台数は、日本有数です。
(一般社団法人日本RV協会・キャンピングカー白書の新規登録台数から算出)
創業は、1995年。同社のルーツは、藤井昭文代表の幼少期の思い出にあります。キャンプブーム到来前で車中泊などキャンピングカーの文化が日本に浸透していない頃、内装業をしていた藤井代表の父親が自身で改装したクルマに家族を乗せて全国を旅していたそうです。
その旅の記憶こそ、27年間キャンピングカーを製造するトイファクトリーのルーツ。創業当初は小さな工房でバンコンを製造していたのだとか。
「創業時は、シャンデリアが施されるようなきらびやかな内装がキャンピングカーの主流でしたが、藤井の旅の経験から機能性のあるキャンピングカーの製造を始めました。地元で行われたキャンピングカーのイベント出店で、一人のお客様が気に入ってくれたことをきっかけに徐々に広まっていきました」(竹縄店長)
トイファクトリーは、質実剛健なものづくりをモットーに、自分たちの経験を機能に落とし込んで具現化しています。デザイン面を大切しつつも、見た目だけではなく使い勝手の良さを重要視しているのです。
創業当初はユーザーが社員になるケースが多く、現在もバンコンを使っているスタッフが多いのだとか。新型が出る際は藤井代表が実際に一週間ほど使ってチェックをし、フィードバックをしているそうです。
最大の特徴は「断熱」
トイファクトリー製のバンコン、最大の特徴は「断熱」です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した断熱技術を応用し、H-Ⅱロケットに使用されているセラミックの断熱材をボディー内部に塗装しています。
この素材は約0.8mmの塗膜で住宅用断熱材(グラスウール)100mm相当の断熱効果が得られます。
ボディーに施した特殊塗装に加えて、高断熱調湿ウールも断熱材として使用し、車内の呼吸による湿気を吸放湿できてカビを防ぐ効果もあります。
「藤井の幼少期の経験が、断熱のこだわりにも反映されています。始めたばかりの頃は、“ハイエースに断熱を施しても意味がない”と言われたこともありました。しかし、実際使っていただいたユーザーの口コミで広がり、今ではキャンピングカーに断熱はスタンダード。断熱しないのはありえない、という風潮になりました。
弊社は創業当初から取り組んでいるため、断熱のノウハウに自信があります。見えない所も妥協しないのでユーザーの満足度も高いです」(竹縄店長)
もう一つの特徴は、窓です。サイドやリヤなどのガラス窓をアクリル2重窓にして高い断熱効果と窓解放の操作性を向上させています。空気の層が入るペアガラスのため結露を防ぐ効果も。
トイファクトリーのハイエンドモデルで採用されており、出窓型の特徴的な形状の「エアロウィンドウ」はトイファクトリーの特許商品です。
また、発電機を使わずソーラーパネルなどの再生エネルギーを推奨しています。同社のバンコンで使用されている国産ソーラーパネルシステムは、シャープと共同開発した日本初の製品です。
最大動作電力は259W。耐風圧強化、走行時のねじれや耐震、万が一事故をしたときの飛散防止など、住宅のソーラーパネルにない規格に合わせてテストを重ねて開発されました。
「僕らは地球の自然で遊ばせてもらっているので、環境に良い遊び方をしなければいけないと考えています。ソーラーパネルなどの再生可能エネルギーを使いながら、車内の居住空間をより快適に過ごせるように工夫しています。天井に貼られたソーラーパネルの台座のデザインも特徴で、出窓の形状と併せてトイファクトリーのアイコンのような存在になっています」(竹縄店長)
快適性にこだわりぬいた人気モデル「BADEN」
トイファクトリーで一番人気のモデルは、BADEN(バーデン)です。
車内は室内高1850mmで乗車定員は7人。大人4人まで就寝でき、収納力も抜群。エアコンに電子レンジ、ステンレスシンクや収納式のバタフライテーブルなど、クルマの中だと思えないほどに快適な空間が広がります。
汎用性が高く、さまざまなユーザーに合わせて使い勝手の良いレイアウトになっています。
現在は、カリモク家具とコラボレーションしたモデルも登場。スペイン語で家を表す「Casa」と名付けられた「Casa HOME STYLE EDITION」のモデルでは、岐阜県東濃地方で生産された美濃焼のタイルや天然ヒノキ、愛知県一宮市で織られた尾州織物など地元の素材にこだわって室内装飾が施されています。
こだわりは車内の空間や内装だけではありません。キャンピングカーは、家具や電装品、水のタンクなどを搭載して走行します。
安全性を高めるために、トイファクトリーでは自動車メーカーが走行や衝突、耐久テストなどさまざまな試験を重ね、安全基準をクリアしたメーカー指定の車両を使用しています。
自動車メーカー基準の安全と走行安定性が保証されており、メンテナンスしていれば10万~20万kmでも問題なく走れます。
BADENモデルの平均価格は800万円代で、年間販売台数は約700台。現在はコロナ禍の影響もあり売上が伸び、納車までは約1年半待ちの状態が続いています。
「あそび」を生み出し、モノより「コト」を届ける
ゴールデンウイークなどの連休には、岐阜本社を目的地にして全国からユーザーやお客様が訪れるそうです。トイファクトリーユーザー専用のキャンプ場「トイの森」を岐阜県内に保有しており、ユーザー同士のコミュニティの場としても活用されています。
「コロナ禍になり、家族での遊び方や個人の趣味が見直されています。今まで海外旅行をしていた方にとっても、国内旅行をする上で家族だけのプライベート空間で移動できるキャンピングカーの需要が高まりました。
今後もユーザーフレンドリーな立場で、本当に使えるキャンピングカーを作り続けていきたいです。我々はキャンピングカーを販売していますが、モノよりもコトを届けたい。“あそび=トイ”の部分を販売していきたいですね」(竹縄店長)
バンコンは外観がハイエースなので普段使いもでき、中にはバンコンで通勤する人や子どもの送り迎えをするお母さんもいるそうです。
現在は、室内家具が着脱可能で自由に車内をレイアウトできる新モデル「HACO×HACO」も誕生。キャンプ用の車中泊からリモートワークの個室、物販をするための移動販売車など利用手段もさまざま。新しい生活様式におけるキャンピングカーの親和性の高さを感じさせます。
また、キャンピングカーは災害時の非常用シェルターとして利用できます。被災地での経験談を聞き取り、クルマづくりに反映。災害時、避難時におけるトイファクトリーのキャンピングカーの活用方法について発信を続けています。
柔軟な発想で活動を広げながら、世界中に「トイ(あそび)」と安心を届けるトイファクトリー。直営店は、岐阜本社、東京(町田市)、湘南(藤沢市)、東北(宮城県大崎市)の4店舗。ぜひ一度、バンコンの「あそびの可能性」に触れてみてください。
<取材協力>
トイファクトリー
(取材・文・写真:笹田理恵/写真提供:トイファクトリー/編集:奥村みよ+ノオト)
[GAZOO編集部]
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