1台あたり約3分で完了! ベルトコンベヤで進むドライブスルーの洗車機

日本の洗車機といえば、ガソリンスタンドに設置されたものを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。群馬県前橋市にある『SPLASH ‘N’GO! (スプラッシュンゴー)前橋50号店』では、最新型としては日本国内ではめずらしい「トンネル洗車機」を導入し、注目を集めています。

トンネル洗車機とは、ベルトコンベヤに載ったクルマがトンネル型の洗車機内を進むもので、工程ごとに1台ずつ進めるため効率よく洗車が行える機械です。トンネル洗車機 導入のきっかけやその特徴について、株式会社Splash Brothers取締役の岡村昌輝さんにお話を伺いました。

成功のカギはサブスクリプション

――――この洗車機でビジネスを始めたきっかけを教えてください

新卒で株式会社リクルートに入社し、37歳のとき、なにか新規事業を始めたいと考え退職。中古車販売店を営む先輩が新たに洗車ビジネスを始めたので、まずはそこにジョインしました。その洗車ビジネスは、ショッピングモールの駐車場に止められたクルマを、お客さまが買い物している間に洗車するというもの。

そこで洗車を依頼してくださったお客さまからニーズを探っていくうち、従来の「輝き」や「徹底的にきれいになる」といった男性的な価値観ではなく、“手軽で、素早い“という現代のニーズにあったサービスが求められていることがわかってきました。

当時は手洗い洗車で、料金は1台につき2,000円。スタッフを増やし、作業効率を上げれば価格を下げられると考えたのですが、マンパワーの壁にぶつかりました。なんとかしてスピーディーに洗車ができないか打開策を模索していたとき、アメリカにある洗車機のYouTube動画を見つけ、それが今ここにある『トンネルカーウォッシュ』との出会いです。

――――動画をきっかけに、起業へつながったのですね

「市場が求めているのはこれだ!」と直感したものの、多額の初期投資が必要なビジネスモデルだったため、現在の共同代表である中田とふたりで会社を立ち上げることに。
すぐさまアメリカへ飛ぶと、全長約15~20mの洗車機が町のいたるところにあったり、最新型の全長約40mのものもあったりと、トンネルカーウォッシュが数多く導入されていることに衝撃を受けました。

日本の洗車機利用者は大半が男性なのですが、トンネルカーウォッシュの利用者は約半数が女性。ここも、大きな違いだと感じました。

現地で洗車場を運営するアメリカ人から「いかに女性のお客さまから気に入ってもらえるかが肝だよ」とアドバイスされた言葉と、ショッピングセンターで洗車を依頼してくれたお客さまの大半が仕事や家事、子育てに忙しい女性だった経験が重なり、「この光景は日本でも確実に実現できるはずだ」と胸を熱くしたのが開業のきっかけです。

――――オープン後、反響はいかがでしたか?

最初の3ヶ月は思い通りの盛況が叶わず、オープンが梅雨どきだったこともあり、閑散とした状況が続きました。オープンから半年でようやく月4,000台超えを達成。それでも1回500円の洗車なので、商いとしてはまだまだでした。

そこで、月額798円で洗車し放題のサブスクリプションを開始。これが口コミで広まり、直近では月間8,000台超えを達成。オープンから2年間で累計約11万台、サブスク会員が約1,000人にまで伸びてきている状況ですね。

  • 晴れた日は洗車機待ちの大行列ができることも。これだけ並んでいても回転率が高く、待ち時間のストレスが少ない

1台あたり約3分で完了! トンネルカーウォッシュの工程

一般的な洗車機を利用する際は、洗車機へ入る前に、一旦降車もしくは、窓を開けてタッチパネル操作を行い、コースやボディータイプをボタンで選択する場合がほとんどではないでしょうか。

こちらの洗車機ではクルマから降りることなく、まずウィンドウを下げてスタッフから説明を受けます。洗車機内ではクルマがベルトコンベヤに乗って進むため、ギアをニュートラルに入れ、ハンドルからは手を放し、ブレーキもかけない状態で待機します。

  • 右側前後輪がベルトコンベヤに乗り、洗車機が動くのではなくクルマが洗車機内を進んでいく

ベルトコンベヤが動きだして洗車が始まると、まず「下部洗浄」、「高圧洗浄」、「ホイール洗浄」が行われます。1台につき約140リットルという大量の水を使い、一気に汚れを落とす点が特徴です。

  • 大量の水を使ってあらかじめ汚れを落とすため、砂やほこりによるブラシとの摩擦が軽減され傷がつきにくくなる

水を使った洗浄工程の次は、「シャンプー洗車」、「撥水コート」の工程へ。
シャンプー洗車で使われるブラシはイタリアから取り寄せているスポンジ製のもので、ファイバー製に比べるとクルマのボディーに傷がつきにくい素材です。撥水コートはツヤのあるボディーに仕上がるだけでなく、水滴を素早くはじいてくれるので時短にも繋がるのだとか。

  • ボディーに優しい素材のブラシが、回転しながらきめ細やかに洗い上げる

洗車を終え、「ブロア乾燥」の工程を経て洗車機を出るころには、後続車がシャンプー洗車の工程に進んでいます。ベルトコンベヤを降りたら、スタッフの指示に従って拭き上げゾーンへ。

  • 工程ごとにクルマが前へ進むことで、スピーディーな洗車を実現

洗車機を出ると、待機していたスタッフが大まかな拭き上げを手作業でしてくれます。
拭き上げゾーンは道路に面した場所なので、クルマから一度も降りることなく洗車場を後にでき、利便性は抜群。

洗車待ちの行列ができている場合でも、約1分~40秒 に1台の速さで洗車を開始できるというトンネルカーウォッシュのスピード感を事前に知っていれば、「また今度でいいや」と先延ばしにする機会も減ることでしょう。

  • スタッフによる拭き上げ作業。サービスと立地のよさが、店名どおりの“SPLASH ‘N’GO!”を可能に

サブスクユーザーの声「大して汚れていなくても、洗車しに来たくなる」

SPLASH ‘N’GO! 前橋50号店のサブスク会員であり、靴磨き店『クツビガク』を前橋市内で営む木嶋友和さんにもお話を伺いました。

1年ほど前から通い始め、今では週1回くらいのペースで洗車しに来ています。
オープン当初から気になってはいたものの、見慣れない洗車機に戸惑い、利用を躊躇していました。たまたま友人がこちらのサブスク会員で、「サブスクは便利だよ」と紹介されたのが来店のきっかけでしたね。

私自身、靴を磨く仕事をしているので、クルマがいつも綺麗に洗車されているとお客さまの印象もよくなりますし、岡村さんと「こんなサービスってお客さまに喜んでもらえるよね」などと経営話をするのが楽しくて頻繁に利用しています。クルマをピカピカにするのはもちろんですが、気さくなスタッフの皆さんに会いたくて通っている面も大きいです。

  • 洗車後に会話を楽しむ岡村さん(写真左)と木嶋さん(写真右)

今年8月5日には2号店となる『伊勢崎韮塚店』がオープンし、サブスク会員はどちらの店舗にも通い放題というお得っぷり。「県内のネットワークをさらに拡大していきたい」と岡村さんは話します。
日本における洗車機の常識、あるいは洗車そのものの概念を変えるかもしれないトンネルカーウォッシュは、今後われわれの生活に浸透していくことでしょう。

<参考リンク>
SPLASH ‘N’GO! 前橋50号店

(文・写真:吉田奈苗 編集:奥村みよ+ノオト)

[GAZOO編集部]

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