新車ディーラーが「旧車のレストア」に力を入れるワケとは?
初代スタウトと初代クラウンが並んでいる写真。まるでクラシックカー博物館やコレクターのガレージといった印象を受けますが、実はこれ、新車販売を主な事業としている「トヨタモビリティ神奈川」が所有する施設と車両。そして2台とも、同社がレストアしたものです。
「新車ディーラーがレストアをしているの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、新車ディーラーでのレストア事業が、近年盛んになりつつあります。
トヨタ系ディーラーでは、トヨタモビリティ神奈川のほか、ネッツトヨタ富山などが取り組んでいて、ほかの国産メーカー系のディーラーでも、下取りで入庫した絶版名車をレストアする様子をYouTubeでレポートするなど、新車ディーラーでのレストアが活発化してきています。
では一体なぜ、新車ディーラーが絶版車をレストアするのでしょうか?トヨタモビリティ神奈川に聞いてみました。
ベテランから若手へ技術の伝承を
新車ディーラーと聞くと、クルマの販売が主な仕事だと思われるかもしれません。しかし、納車後のメンテナンスや修理など、アフターフォローも大切な仕事です。
「お客様の中には、1台のクルマに長く乗る方もいらっしゃいますし、お子様へとクルマを引き継がれる方もいらっしゃいます。
そのようなお客様が、いつまでも安心して愛車とカーライフを歩めるようにしていくのが、私たちの務めのひとつです」(トヨタモビリティ神奈川)
そこで、トヨタモビリティ神奈川では、古いクルマをメンテナンスできる体制を維持していく一環として、絶版車のレストアに取り組むようになったそう。
「古いクルマを整備するには、現代のクルマとは異なるスキルが必要とされます。たとえば、部品や整備書をどうやって手配するか、部品を入手するネットワークの構築や維持はどうするかといったことも大切です。
そこで、古いクルマのメンテナンスに関する技術やノウハウの伝承を目的に、ベテランメカニックと若手がチームを組んで、レストアにあたっています。ときには部品が手に入らないときもありますが、そんなときにも臨機応変に対応できるようにしています」(トヨタモビリティ神奈川)
レストアのベースとなるクルマは、下取りで入ってきた車両や、お客様から「引き取ってもらえないか」とお声がけがあった車両が基本とのこと。
「ベース車両は、自分たちで探してくるのではなく、ご縁のあったクルマです。レストア事業を行うきっかけとなったのは、お客様が所有する初代クラウンでしたし、それをきっかけに長年お付き合いがあるお客様からのお申し出が増えました。
レストアを行う際には、そのクルマが“愛車としてどんな歩みをしてきたのか”をしっかりとヒアリングするところから始めます。オリジナルの状態にレストアするのではなく、歴代のオーナー様がこだわっていたポイントや直さなかったキズなどは、あえてそのまま残す場合もあります。それが愛車としての本来の姿だと考えているからです」(トヨタモビリティ神奈川)
こうしたレストアで得た経験やノウハウをもとに、現在では「プチレストア」と称し、ウェザーストリップの交換や錆の対応など、古いクルマにありがちなちょっとしたメンテナンスに対応するサービスも開始。
旧車オーナーには頼りになる、そして足を運びやすい新車ディーラーになりつつあります。
愛車との思い出に涙する人も
先の写真の初代クラウンが、実際にトヨタモビリティ神奈川で最初にレストアされ、レストア事業を始めるきっかけとなったクルマです。
このクラウンは、あるお客様がワンオーナーで所有されていた個体で、「転売しないこと、そして展示会や他ディーラーへの貸し出しなどでたくさんの人に見せること」の2つを条件にトヨタモビリティ神奈川に譲渡されました。
そして、2016年に「クラウン誕生70周年」を記念して行われた、愛知県の元町工場から東京都代官山までを歴代クラウンで走破するイベント「DISCOVER CROWN SPIRIT PROJECT」に参加するためにレストアされました。
レストア後は、パーテーションなしで車内に座ることも可能なスタイルで展示し、誰でも触れられるようになっています。
「クラウンのシートに座って亡きご家族を思い出し、涙を流す人もいました。そんな光景を見たスタッフは、自身たちからお客様にわたったクルマは、1台1台が“お客様の愛車”であることを改めて意識させられたと言っていました。
『お客様のクルマに触れるときは、心の中で白い手袋をするように』と、自身の中で新たに誓ったセールススタッフもいましたね。レストアで影響を受けたのは、メンテナンスや整備に関わるスタッフだけではありませんでした」(トヨタモビリティ神奈川)
お客様に新車を納車したそのときから“お客様の愛車”となる。1台のクルマは単なる販売商品ではなく、お客様にとって特別な1台になる。
このことは、メンテナンススタッフだけでなく、セールススタッフにとっても大きな意識の変化となったようです。
“愛車”に長く乗ってもらうために
トヨタモビリティ神奈川では、今後も下取りで入ってきた車体や、長年お付き合いのあるお客様からのお声がけといった形で、縁のあったクルマをレストアしていくとのこと。
現在は、6代目「チェイサー ツアラーV」や初代「プリウス」といった、ネオクラシックと呼ばれる2000年前後の比較的新しいクルマもレストアを行っているそう。
ネオクラシックは、コンピューターの劣化などの問題で維持が難しくなっていくだろうと言われていますが、こうしたクルマにも対応してくれる体制が築かれつつあるのは、オーナーにとってうれしいことでしょう。
クルマの販売やアフターフォローをしつつ、長年お客様が大切に乗られている愛車のメンテナンスやトラブルに対応できる体制を継続していくこと。これが、さまざまなカーライフに対応するこれからのディーラーの姿なのかもしれません。
(取材・文:西川昇吾/写真:西川昇吾、トヨタモビリティ神奈川/編集:木谷宗義 type-e+ノオト)
[GAZOO編集部]
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